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1553. 食料システムの変革と気候変動対策により、地球の限界超過リスクを低減できる可能性

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1553. 食料システムの変革と気候変動対策により、地球の限界超過リスクを低減できる可能性

「The Lancet Planetary Health」 に掲載された研究では、食料システムが地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)の超過に及ぼす将来影響を、全球スケールと地域・局所スケールをつなぐマルチスケール評価によって分析しています。その結果、食生活の転換、農業生産性の向上、食品ロス・廃棄の半減などの食料システム変革に、気候変動対策を組み合わせることで、複数の環境領域における限界超過を同時に抑制できる可能性が示されました。

人類活動が地球環境に与える影響を評価するための「プラネタリー・バウンダリー」は、気候変動、生物圏の健全性、土地利用変化、淡水利用、生物地球化学的循環(窒素・リン循環)などの領域から構成されます。食料システムはこれらの限界超過を引き起こす主要な要因の一つとされており、持続可能な食料供給を実現するためには、食料生産・消費の双方を含む食料システム全体の変革が重要な課題とされています。

研究では、統合評価モデルIMAGE(Integrated Model to Assess the Global Environment)を用いて、2050年までの将来シナリオを分析しました。比較対象としたのは、①現状延長シナリオ、②食料システム変革シナリオ、③食料システム変革に気候変動緩和策を組み合わせたシナリオの3つです。

食料システム変革シナリオでは、EAT-Lancet Commission が提唱する 「Planetary Health Diet」への移行、農業生産性と肥料利用効率の向上、食品ロス・廃棄の半減などが想定されています。研究チームは、これらの対策により、農地拡大や家畜生産に伴う環境負荷、窒素・リンの流出、農業由来の温室効果ガス排出の抑制が期待できるとしています。
研究結果によると、食生活の転換は土地利用変化の領域において70%、生物圏の健全性の領域において69%の改善に寄与すると推定されました。また、農業生産性の向上は、生物地球化学的循環のうちリンに関する領域の改善に大きく貢献し、その寄与率は92%と推定されています。

さらに、気候変動緩和策を組み合わせたシナリオでは、淡水利用に関する領域にも大きな改善がみられました。具体的には、河川や湖沼、地下水などの「ブルーウォーター(Blue water)」で62%、土壌中に保持され植物が利用する「グリーンウォーター(Green water)」で82%の改善が推定されました。また、気候変動の領域では67%、エアロゾル負荷の領域では75%の改善が見込まれました。

一方、現状延長シナリオでは、2050年に向けて多くの地球の限界超過が悪化すると予測されました。しかし、食料システム変革と気候変動対策を組み合わせたシナリオでは、それらの超過リスクを複数の領域で同時に低減できる可能性が示されました。

ただし、研究チームは、全球スケールでは食料システム変革と気候変動対策の間に明確なトレードオフは見られなかったものの、地域・局所スケールでは土地利用やバイオエネルギー生産の拡大などに伴い、地域ごとに異なる影響やトレードオフが生じる可能性があると指摘しています。

本研究は、持続可能な食料システムへの移行が、土地利用、生物多様性、栄養塩循環などに関わる環境負荷の軽減に有効である可能性を示しています。また、気候変動対策と組み合わせることで、より広範な地球環境リスクの低減につながる可能性も示唆しています。さらに、全球平均だけでは捉えにくい地域差やトレードオフを把握する上で、全球スケールと地域・局所スケールを統合したマルチスケール評価の重要性を示した研究といえます。

(参考文献)
Luchtenbelt, H., Doelman, J. C., Biemans, H., Bos, A., Beusen, A., Daioglou, V., Marques, A., Scherrenberg, M., Schulte-Uebbing, L., te Wierik, S., van Zeist, W.-J., Stehfest, E., & van Vuuren, D. (2026). Food system contributions to future planetary boundary transgressions: a multiscale modelling assessment of scenarios. The Lancet Planetary Health. Published online. https://doi.org/10.1016/j.lanplh.2026.101492

 

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)
 

 

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