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512. IPCC - 地球温暖化抑制のためのシステム変革の必要性

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512. IPCC - 地球温暖化抑制のためのシステム変革の必要性

気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は、1988年に設立された政府間組織で、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与える役割を担っています。世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しています。 

昨年から今年にかけ、第6次評価報告書(AR6)の作業部会による報告書が公表されています。昨年8月に公表された第1作業部会(WG1)報告書は、「気候変動における人為的な影響は疑いの余地がない」と強い論調で主張したことが話題となりました。 今年2月には、第2作業部会(WG2)が、気候変動に強靭な開発の必要性を強調しました。 

そしてこのたび、2022年4月4日、3部作の最後の一つである、第3作業部会報告書「温室効果ガスの排出削減など気候変動の緩和のオプションについての評価」が公表されました。 

政策策定者向けサマリーは、持続可能な開発・公平性・貧困削減・社会の開発ニーズに根差した気候変動緩和策ほど効果的である可能性について指摘し、温暖化抑制のためのシステム転換の必要性を訴えます。近年、とりわけ2010年来、幾つかの低排出イノベーションの単位コストが低下することで、世界的な普及・採択の条件が整いつつある一方、分配・環境・社会的インパクトに配慮した政策の重要性を指摘し、イノベーションで遅れがちな途上国への配慮を求めました。例えばデジタル化は温室効果ガス排出削減・脱炭素化に大きな可能性を秘めていますが、その活用には、過剰な電力消費、労働市場への負のインパクト、既に深刻化しているデジタル格差の拡大など、持続可能な開発目標間でのトレードオフにも配慮する必要があります。

以下、農業分野に言及している箇所をまとめます。2019年、人為的な温室効果ガス排出のおよそ22%が農業・森林・土地利用(agriculture, forestry and other land use :AFOLU)由来でした(ほか、エネルギー供給部門:34%、産業部門:22%、輸送部門:15%、建物:6%)。2010-2019年の期間の排出量の増加率は多くの部門でその前の10年間に比べて若干抑制されましたが、AFOLU部門の排出推計には不確実性が伴い、その原因として森林破壊からの二酸化炭素排出に関する不確実性が大きく影響しました。

AFOLU緩和策は、もし持続的に実施されれば大規模な温室効果ガス排出削減をもたらす可能性がある一方、その実施には、食料安全保障や生活との関係、土地保有・管理システムの複雑さや文化的要因によって、障壁やトレードオフがつきもので、国ごとの事情に配慮したシステム的な対応が求められます。生物多様性や生業とのコ・ベネフィットを追求しつつ、気候変動による適応などのリスクを回避するには、国ごとにオプションを追求していく必要があります。2020⁻2050年の間に、AFOLUオプションによる緩和の潜在性は相当程度( 1トンあたり100 ドルの仮定の下で8-14 ギガトン相当 )期待されますが、多くの地域でより安いコストで普及の可能性があります。とりわけ、大きな機会を占めるのが、熱帯地域における森林破壊の回避や保全、自然資源管理の向上、森林やエコシステムの回復によるものです。作物・家畜管理の改善、農業における炭素貯留(農地や草地における土壌炭素管理、アグロフォレストリーやバイオチャーを含む)は1.8-4.1 ギガトン相当の 削減に貢献が期待されます。持続的で健康な食生活へのシフトやフードロス削減などの需要側の対応も2.1ギガトン前後の削減が見込まれます。さらに、持続的農業集約化は、エコシステムの転換を回避し、メタンや亜酸化窒素を削減し、森林回復のための土地を確保することが可能です。ただし、AFOLU緩和策は、その他のセクターでの緩和策の遅れを補完できる訳ではありません。AFOLU緩和策実施を経済・政治的に阻む地域固有の障壁について評価し、それらを克服することが緩和目標の達成に貢献するはずです。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)