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710. 2月3日は『大豆の日』

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2月3日は『大豆の日』

2月3日は『大豆の日』です。節分の日に大豆をまいて邪気を払い、年齢の数だけ大豆を食べて無病息災を願うことから、節分になることが多い2月3日に設定されています。

大豆は、豆腐・味噌・醤油・納豆などとして食べられ、日本人にとって非常に身近な作物です。世界的にみても、加工食品に加えて食用油の原料のほかタンパク質が豊富なことから家畜飼料として利用されており、最も経済的に重要な作物の1つです。

今日のPick Upでは、国内外の大豆の事情および国際農研のダイズ研究について紹介します。

 

1.    世界の大豆事情

FAO統計にて2021年の大豆生産量をみると、ブラジルが13,493万トンで1位、2位はアメリカの12,071万トンでした。2018年まではアメリカが1位でしたが、2019年に逆転しました。輸出量に関してはブラジル圧倒的首位で8,612万トンです。

表1.世界のダイズ生産(2021年)
1位 ブラジル   13,493万トン
2位 アメリカ   12,071万トン
3位 アルゼンチン  4,622万トン
4位 中国      1,640万トン
5位 インド     1,261万トン
(FAOSTAT)

表2.世界のダイズ輸出量(2021年)
1位 ブラジル   8,611万トン
2位 アメリカ   5,305万トン
3位 パラグアイ   633万トン
4位 カナダ      450万トン
5位 アルゼンチン  428万トン
(FAOSTAT)

 


2.    日本の大豆事情

農林水産省によれば、2021年度の大豆の自給率(概算)は7%です。輸入大豆(93%)の多くは油や飼料として使われており、製油や飼料用などを除いた食品向けの自給率でみると24%になります*。これらのことから、海外で生産される油・飼料向け大豆の安定生産と、食用向け国産大豆の生産性・品質向上の両方が必要なことが分かります。

* 大豆をめぐる事情(令和4年12月農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/attach/pdf/index-13.pdf

 

国際農研は国内外の研究機関と研究開発を行っており、大豆の安定生産・生産性向上に向けた研究や、品質を向上させるための遺伝資源や品種改良に用いることが可能なマーカーの研究を行っています。
次章で、2021年研究成果情報から国際農研のダイズ研究について紹介します。

 


3.    国際農研のダイズ研究(2021年研究成果情報より)

ダイズを安定的に生産するには、環境ストレスに耐性のあるダイズの開発が重要です。干ばつが起きると生産性が著しく減少しますが、例えば、深く根を生やすダイズを活用することで、安定生産や生産性の向上が期待できます。

【研究成果1】ダイズ根系の改良に資する根長に関与する遺伝子座の特定

ダイズ品種「Fendou 16」は長い主根を持っています。発達した根系は環境適応力が向上するだけでなく、より栄養を獲得できます。今回明らかにした主根長に関与する遺伝子座の情報は、ダイズの根系の遺伝的改良に利用できます。
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b01

 

ダイズ種子のサイズは収量を決定する重要なファクターです。また、形状は外観品質的にも加工上でも重要です。

【研究成果2】ダイズの種子サイズと形状に関与する遺伝子座の特定

今回、ダイズ種子のサイズと形状の制御に特に効果の大きいDNAの領域(QTL;量的形質遺伝子座)を発見しました。今後のダイズの種子サイズや形状の改善が期待できます。
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b02

 

大豆生産に病気は大敵です。国際農研では、病気に強い大豆の開発に加えて、病気を引き起こす病原菌の解析も行っています。

【研究成果3】ダイズ紫斑病菌のゲノム情報

紫斑病は、葉や葉柄、種子等に発生して大豆の減収を引き起こします。今回、新たに取得したダイズ紫斑病菌のゲノム配列は完成度が高く、病原性関連遺伝子等の研究、分子生物学的情報に基づいた病害診断技術の開発などに利用できます。
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b04

 

【研究成果4】メキシコのダイズさび病菌の病原性は2つの傾向に大別される

メキシコの2州で2016年から2019年に採取したダイズさび病菌は、全く異なる病原性の特徴を示す2つのグループに分けられました。病原性の明瞭な地理的差異の情報は、さび病抵抗性品種の導入による病害防除に利用できます。
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b05

 


以下のダイズ研究に関する記事も併せてご覧ください
メキシコのダイズさび病菌に関する論文が米国植物病理学会誌PhytoFrontiersの2021年優秀学生論文賞で入賞
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20221108
パラグアイで開発したダイズさび病抵抗性新品種の特性
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220621
バングラデシュにおけるさび病菌の病原性の変化
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220510
生物資源・利用領域の山中主任研究員が世界のダイズさび病研究の主要著者トップ10入り 
https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2020/r20200806
ダイズさび病抵抗性大豆2品種をパラグアイ共和国で品種登録
https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2019/r20190822


(文責:情報広報室:金森紀仁 生物資源・利用領域:許東河、山中直樹、柏毅)
 

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