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562. パラグアイで開発したダイズさび病抵抗性新品種の特性

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562. パラグアイで開発したダイズさび病抵抗性新品種の特性

国際市場の大豆の半分以上を生産する南米諸国では、2001年に発生が確認されたダイズさび病が最も重要な大豆病害となっています。特に熱帯・亜熱帯地域であるブラジル、パラグアイ、ボリビアでの被害は深刻です。近年はさび病菌の殺菌剤耐性が増大したことにより更なる生産コストや環境負荷の増大が懸念されています。そこで国際農研とパラグアイのNikkei-Cetapar農業試験場は、パラグアイに適応した大豆品種に国際農研の遺伝子集積系統をドナー系統としてさび病高度抵抗性を付与する形で、ダイズさび病抵抗性大豆品種JFNC 1とJFNC 2を共同で開発・リリースしました。本研究では、これら新品種が改良前の品種と比較してさび病抵抗性が向上しているのかを実験室レベルおよび実際のパラグアイの圃場レベルで調べました。また圃場試験においては殺菌剤によるさび病防除の有無の試験区を設置して収量レベルでの抵抗性を調べました。

実験室ではJFNC 1、JFNC 2とそれぞれ改良前の元品種Aurora、YG203に対してブラジルの強病原性さび病菌BRP-2を人工接種し、胞子生産量等4つの抵抗性形質を比較しました。その結果、いずれの形質でもJFNC品種は抵抗性ドナー系統と同程度の高度抵抗性を示しました(図1)。圃場における2か年の試験でも殺菌剤不使用の試験区で、JFNC 1、JFNC 2は平均して元の品種の3.1%と4.1%までさび病の病斑面積が減少していました。新品種が付与されたこの高度なさび抵抗性と品種育成における系統選抜の効果により、殺菌剤を使用しなかった場合のJFNC 1とJFNC 2の収量性は、2か年平均で改良前の品種から1.7倍と1.4倍にそれぞれ向上しました。また、この殺菌剤を使用しない条件のJFNC 1とJFNC 2は、改良前の品種で殺菌剤を使用した場合と比較しても、それぞれ平均1.0倍、1.1倍でした。現地では殺菌剤耐性のさび病菌により生産コストや環境負荷が増大しているので、これら新品種の高度なさび病抵抗性は非常に有効です。新品種は高度なさび病抵抗性を有する一方、生育期間や粒重などの農業形質については、新品種は元の品種と同等の特性を維持しているため(図2)、これら新品種はパラグアイに適応した優良な栽培品種となることが期待できます。

本成果は、植物病理学の国際誌Tropical Plant PathologyにResistance to Asian soybean rust and yield of new soybean cultivars, JFNC 1 and JFNC 2, harboring three resistance genes と題して発表されました。


(関連するページ)
532. バングラデシュにおけるさび病菌の病原性の変化https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220510

ダイズさび病抵抗性大豆 2品種をパラグアイ共和国で品種登録https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2019/r20190822

生物資源・利用領域の山中主任研究員が世界のダイズさび病研究の主要著者トップ10入り https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2020/r20200806

471. 世界への大豆生産の広まりと研究https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220203

230. 病気に強い大豆をつくるhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20210210


(文責:生物資源・利用領域 山中直樹、企画連携部 加藤雅康)
 

図1.新品種JFNC 1、JFNC 2とそれらの改良前の元品種であるAurora、YG203、そして高度さび病抵抗性のドナー系統であるNo6-12-1のダイズさび病斑

図2.新品種JFNC 1、JFNC 2とそれらの改良前の元品種であるAurora、YG203、そして高度さび病抵抗性のドナー系統であるNo6-12-1の種子外観