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230. 病気に強い大豆をつくる

 

世界の大豆の半分以上が南米3カ国ブラジル・アルゼンチン・パラグアイで生産され、現地ではダイズさび病が大きな問題となっています。国際農研は、国内外の研究機関とさび病菌に強い大豆の開発を行っており、パラグアイでは現地の機関とさび病に強い品種の開発に成功しました。

―大豆はどこから来るのかー
納豆、豆腐、味噌、醤油、えだまめ、多くの食品の原料となる大豆を毎日口にしない人はいないでしょう。「いや、私は和食あんまり食べないんで。」という人も、フライドチキンやお菓子は召し上がるのでは?大豆の用途で最も多いのは植物油です。国内消費の7割以上がサラダ油の原料として使われます。大豆は家畜の飼料や食品添加物にも使用されているので、本当に大豆無しの食生活はありえません。けれども、大豆の国内自給率は1割にも満たない状態です。そのため、海外の大豆生産国の安定生産は、自給率の向上や備蓄とともに国民生活に直結するとても重要なのです。そこで国際農研は、長きに渡り海外の大豆生産に関わる研究を続けています。では、それらの大豆はどこか来るのでしょうか?日本の大豆の輸入の7割はアメリカですが、世界の大豆の半分以上が南米3カ国ブラジル・アルゼンチン・パラグアイで生産され、国際市場で取引されています。私たちが大豆を安定して入手するためには、入手先を増やすことと、これら主要な生産国での生産性を良くすることが必要になります。

―ダイズさび病―
南米の大豆生産では、干ばつ、病気、害虫などさまざまな問題があります。大豆がかかる病気のうち、南米で最も問題になっているのが「ダイズさび病」です。この病気は、主に大豆の葉にカビの一種が感染して枯れてしまうものです。黄褐色の胞子がたくさん付くと、まるで植物がサビてしまった様に見えるのでこの名前が付きました。葉を落として枯れてしまうと当然豆は出来なくなりますから、農家は薬を撒いて防ぎます。この殺菌剤の散布に、ブラジルでは毎年数百億円の費用がかかっているといわれています。さび病の病原菌は100年以上前に日本で発見されましたが、現在ではアジア・アフリカ・アメリカ大陸と世界中に広がっており、特に熱帯・亜熱帯地域で最も恐ろしい大豆の病気になっています。

―さび病に強い大豆の開発―
殺菌剤は、大規模な作物栽培における病気の蔓延を防ぐために必要なものです。しかし、多くの殺菌剤を使用することは費用がかかり、環境にも好ましくはありません。たくさん使うことにより、殺菌剤が効かないさび病菌も増えてきました。そこで国際農研は、国内の研究機関や南米ブラジル・パラグアイ・アルゼンチン・ウルグアイや中米メキシコの研究機関とともに、さび病菌を大豆畑から収集して調べ、それら現地のさび病菌に強い大豆の開発を行っています。

パラグアイでは日系セタパール農業試験場と2011年に共同開発を始め、ダイズさび病に弱い品種を改良し、さび病に強い品種JFNC 1とJFNC 2の開発に成功しました(JFNCは両機関名に由来)。アルゼンチンやウルグアイでも、それぞれの国の機関と大豆品種の開発を行っており、近いうちにさび病に強い大豆品種がリリースされるでしょう。

本文は、広報JIRCAS掲載記事を再掲しています。今後も、広報JIRCASで取り上げられた国際農研研究者の活動を紹介していきます。 

(生物資源・利用領域 山中 直樹)