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358. プロジェクト紹介:開発途上地域を対象とした農業分野の総合的気候変動対応技術の開発

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国名
アジア

 

先日公表されたIPCCの報告書は、気候変動がかつてないスピードで加速する中、各国・各地域が気候変動への適応・緩和策を講じていかなければならないことを訴えました。 

農業は温室効果ガス排出を通じて気候変動の原因となると同時に、多大な影響を受ける経済セクターでもあります。温室効果ガスを個別にみていくと、出荷前段階での作物・家畜生産は人為的なメタン(CH4)全排出量の50%以上と亜酸化窒素(N2O)全排出量の75%に及ぶとされています。化学肥料の生産、食料輸送、加工、小売り、廃棄物処理など生産前・生産後の活動(pre- and post-production activities)からの排出を合わせると、フードシステム全体としての温室効果ガス排出は、全人為的排出量の20-40%、あるいは3分の1程度と推計されてきました。 

農業由来の温室効果ガスの中でも、大きな割合を占める家畜・水田由来のメタンCH4と土壌・肥料・排泄物からの亜酸化窒素N2Oを削減する技術が必要とされています。また、気候変動に伴い頻発化する干ばつなど極端気象への適応技術の開発・普及が求められています。技術の深化と社会実装に向け、農家のコベネフィットを意識し、行動変容につながるエビデンスの提示、技術開発、政策提言への取り組みが必要です。

他方、農業はローカルな気候・土地・水に大きく依存しています。作物や家畜は、温度・水・日の出ている時間の長さや日差しの強さといった気候の変化に敏感に応答します。したがって、ある地域でどんな作物や家畜が育てやすいかは気候に大きく依存します。気候変動に強靭かつ持続可能な農業生産の構築のための技術には万能策はなく、各国・各地域の農業生産の特殊性に配慮することが極めて重要になります。日本が属するアジアモンスーン地域は高温多湿で水田稲作の適地でもあり、世界の水田から発生するメタンの約90%がこの地域から発生しています。GHG削減技術の開発・普及に向けて、地域間での協力も重要になります。

開発途上地域を対象とした農業分野の総合的気候変動対応技術の開発【気候変動総合】」では、アジアモンスーン地域の国々を対象に、農家の行動変容につながり、プロジェクト対象国のNDC(国が決定する貢献:パリ協定第4条に基づく、自国が決定するGHG削減目標と、目標達成の為の緩和努力)に貢献する気候変動緩和技術・適応技術を総合的に開発・実装します。また、これを通じて対象国間の研究ネットワークを構築します。そのために、次の研究課題を実施します。

  • 気候変動対応型の水稲作技術および灌漑水利用・管理技術の開発
  • 熱帯土壌における炭素貯留促進技術の開発
  • 気候変動対応型畜産体系の確立
  • 気候変動対応技術の社会実装・普及のための手法の検討と実践

(参考文献)

231. 田んぼから温室効果ガスを減らすhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20210211

337. 環境に優しくお米の収量も増える夢の技術
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210715

(文責:農村開発領域 泉太郎)