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231. 田んぼから温室効果ガスを減らす


皆さんがいつも食べるお米。実は、お米を作るのに地球温暖化の原因となる温室効果ガス(Greenhouse Gas、GHG)が排出されています。この量は、お米の作り方(肥料の量、田んぼに稲わらをいれるかどうかなど)によって変わりますが、半分以上が田んぼから発生するメタンガス(GHGの一つ)です。湛水(田んぼに水を張ること)して酸素が少なくなると、土の中の微生物がメタンガスを作ります。

大気中のメタン濃度は工業化以前の1750年から2011年の間に150%増加し、人間活動に由来する(人為起源)メタンの約11%が水田から発生しています(1年間のメタン発生量は33-40×1012グラムメタン、1012=Tg、Ciais et al.、2013)。アジアでは、世界で生産されるコメの90%が生産され (FAOSTAT、2018)、世界の水田から発生するメタンの約90%がこの地域から発生しています(Smith et al.、2014)。

メタンガスを削減するための一つの方法として、節水かんがい(Alternate Wetting and Drying、AWD)があります。AWDは、田んぼの土が乾くまで水を入れず、乾いたら水を入れる、これを繰り返すやり方です。乾燥すると土に酸素が行きわたり、メタンガスを作る微生物の働きが抑えられます。AWDは、従来の水管理(常時湛水とよばれ、栽培期間中ずっと田んぼに水を入れておく)に比べ出てくるメタンガスを減らせることは、国際農研などによって多くの事例が報告されてきました。さらに、米の収量が増えるなど、AWDは農家にとってのメリットがあることも報告されています。

このように国際農研では、AWDなど農業からのGHG排出量を減らすためのいろいろな栽培技術の開発と実証に取り組んでいます。私は、これらの栽培技術が農家の利潤(総収益から費用を差し引いたもの)を増やせるかや環境に与える影響について調べています。今回、ベトナムでの水田農家の調査の様子をご紹介します。


ベトナムは世界で第5番目の米の生産国。主な生産地は、南部のメコンデルタ地域です。暖かく雨が多いので、米は一年間に2~3回も作れます。しかし、海抜が低く平坦なので、気候変動によって海水面が上昇し、塩水がメコン川を遡上したり洪水、水不足など、農業への影響が心配されている地域です。このメコンデルタ地域にもAWDが導入され、普及が進んでいます。

メコンデルタでの農家調査は、英語で作成した質問票をもとに、ベトナムのカントー大学のスタッフにヒアリングをしていただきました。幹線道路までは大きな車で移動し、その先、道が狭く車が入れないところに来ると、現地のスタッフがバイクで調査員を一人ずつ農家まで運んでくれます。ちなみに私が見た限り、ベトナムではバイクは主要な移動手段で、バイクの大集団が道路を占領しています。皆、色とりどりのヘルメットとマスクをしています。信号が変わると一斉にバイクが大移動するのは日本と大きく異なる光景です。一台のバイクにお父さん、お母さんと小さな子供が乗っていたり、バイクいっぱいに荷物を運んでいる風景をよく目にします。


調査は現在も継続中ですが、農家調査を通して、GHGを削減する栽培方法が、農家の利潤を増やしているか調べるだけではありません。農家の栽培管理の現状を、技術開発を行う研究者にフィードバックして、現状を踏まえて研究者がさらに良い栽培技術を開発・提案することができるよう、農家と研究者をつなぐような研究を目指しています。

本文は、広報JIRCAS掲載記事を再掲しています。

 

(参考文献)

Ciais, P. et al., 2013: Carbon and Other Biogeochemical Cycles. In: Cli¬mate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA.

FAO (2018). “FAOSTAT statistical database”, http://www.fao.org/faostat/en/#home. 

Smith P. et al., 2014: Agriculture, Forestry and Other Land Use (AFOLU). In: Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change. Contribution of Working Group III to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Edenhofer, O., R. Pichs-Madruga, Y. Sokona, E. Farahani, S. Kadner, K. Seyboth, A. Adler, I. Baum, S. Brunner, P. Eickemeier, B. Kriemann, J.
Savolainen, S. Schlomer, C. von Stechow, T. Zwickel and J.C. Minx (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA.
 

(社会科学領域 レオン 愛)