未来科学人材アカデミー第24回:埼玉県立熊谷高等学校の1年生が「国境を超える害虫たち」について学びました

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令和7年11月28日(金)、埼玉県立熊谷高等学校の1年生40名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第24回講座を開催しました。

未来科学人材アカデミー

令和7年11月28日(金)、埼玉県立熊谷高等学校の1年生40名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第24回講座を開催しました。同校では、生徒の探究心や想像力、コミュニケーション能力の涵養を図ることを目的に校外研修を実施しており、今回の訪問はその一環として行われました。

講座の前半では、世界各国のパートナーと協力して進める農林水産分野の研究が、日本に住む私たちの食や生活にどのように貢献しているかを紹介しました。特に、日本の食料生産の現状や国際的な食料生産・流通にも焦点を当て、日本が開発途上国での研究や技術開発への協力を進める意義について、生徒自身が考える機会を提供しました。また、現在強く求められるグローバル人材や科学技術イノベーション(STI)人材についても説明し、学校での学びとの関連を考えてもらいました。

続いて、生産環境・畜産領域の小堀陽一プロジェクトリーダーが「国境を超える害虫たち」について講義を行いました。講義の冒頭では、講師自身が昆虫研究者に聞き取りした結果も踏まえ、昆虫研究に惹かれる多様な理由や魅力を紹介しました。また、害虫防除の起源や長い研究の歴史を事例とともに紹介し、昆虫研究の面白さと難しさについて話しました。生徒の中には昆虫研究に興味を持った方もいたようで、小堀プロジェクトリーダーからの官民の研究所や試験機関の説明に熱心に耳を傾ける姿が印象的でした。

また、小堀プロジェクトリーダーが率いる越境性病害虫プロジェクトで進めている研究についても、写真や逸話を交えて紹介しました。東南アジアから毎年移動するイネウンカや、アフリカで問題となった後に瞬く間に日本を含むアジアまで生育地域を広げたツマジロクサヨトウなど、国境を越える害虫の事例には驚きの声が上がっていました。生徒たちは投影された写真や動画、実際のウンカと天敵のサンプルを見ながら熱心に耳を傾けていました。

講義の中では、害虫防除が難しい理由について仮説を立て、その検証法をグループで議論し、結果を発表する活動も行いました。各グループから発表された仮説と検証法が非常に的確であり、生徒たちの知識と考える力に小堀プロジェクトリーダーも驚いていました。また、質疑応答では、「ドローンと小型ヘリコプターでの薬剤散布の効果の違いはどこから来るのか」や「サンプルとして観察したウンカと天敵の活動量が異なる理由は?」など鋭い質問が寄せられ、小堀プロジェクトリーダーも丁寧に回答しつつ、理解力や観察眼に驚いていました。

今回の訪問を通じて、生徒たちは科学の可能性、研究の社会的意義、そして国際協力の重要性について理解を深め、自身の進路や将来の目標について考える貴重な機会となりました。今後も、未来の科学人材の育成に向けて、研究現場に直接触れる機会を提供し、科学技術への興味・関心をさらに高める取り組みを続けていきます。

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