未来科学人材アカデミー第25回:福島県立相馬農業高等学校の1年生が日本と世界のイネ育種について学びました

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令和7年12月10日(水)、福島県立相馬農業高等学校の1年生39名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第25回講座を開催しました。

未来科学人材アカデミー

令和7年12月10日(水)、福島県立相馬農業高等学校の1年生39名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第25回講座を開催しました。同校では、最先端の科学技術に触れることで、生徒の科学に対する興味を深め、進路意識の高揚を図るための科学研修を実施しており、今回の訪問はその一環として行われました。

講座の冒頭では、JIRCASの研究活動や国際共同研究の概要を紹介し、世界各国のパートナーと協力して進める農林水産分野の研究が、日本に住む私たちの食や生活にどのように貢献しているかを説明しました。

続いて、企画管理室の小林伸哉室員が、日本と海外のイネの育種について講義を行いました。小林室員は、自身が国際稲研究所(IRRI)やJIRCASで実施した世界に向けたイネ育種と、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の職員として行った国内向けイネ育種の両方の経験を踏まえ、比較しながらイネ育種に関する技術やその重要性について解説しました。また、実際にイネのサンプルを用いて品種の違いを観察する体験も行い、生徒たちは「同じイネでも品種によって大きな違いがある」ことに驚きながら熱心に観察していました。

講義では、日本のイネ育種を支える各県の機関と農研機構の役割分担についても説明しました。ブランド米の育成は各県が担う一方で、各県では取り扱わない外食や加工用米の育成は農研機構が担当していることに、生徒たちは興味深く耳を傾けていました。一方、世界のイネ育種では、IRRIのジーンバンクの重要性や、日本の支援と日本人研究者の国際的な貢献についても紹介しました。

生徒たちからは、「イネの育種には、同じイネ科の作物も利用されているのか」など、鋭い質問もありました。これに対しては、展示ブースにあったNERICA(アジアのイネ (Oryza sativa) とアフリカ在来のイネ (Oryza glaberrima)を交配して作られた品種群)のサンプルを示しながら、アフリカの環境に適した品種が育成された事例を紹介しました。実際のサンプルを見ながらの説明は説得力があったようで、生徒たちは「なるほど」と言いながらNERICA品種と親品種の違いを熱心に見比べていました。

今回の訪問を通じて、生徒たちは科学の可能性、研究の社会的意義、そして国際協力の重要性について理解を深め、自身の進路や将来の目標について考える貴重な機会となりました。今後も、未来の科学人材の育成に向けて、研究現場に直接触れる機会を提供し、科学技術への興味・関心をさらに高めていきたいと考えています。

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