未来科学人材アカデミー第21回:埼玉県立伊奈学園総合高等学校の1・2年生が国際農研のBNI研究に触れる

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令和7年11月14日(金)、埼玉県立伊奈学園総合高等学校の1・2年生28名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第21回講座を開催しました。

未来科学人材アカデミー

令和7年11月14日(金)、埼玉県立伊奈学園総合高等学校の1・2年生28名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第21回講座を開催しました。同校では、生徒の科学に対する興味を深め、進路意識の高揚を図るための科学プログラムを実施しており、今回の訪問はその一環として行われました。

講座の冒頭では、JIRCASの研究活動や国際共同研究の概要を紹介し、世界各国のパートナーと協力して進める農林水産分野の研究が、日本に住む私たちの食や生活にどのように貢献しているかを具体的な例やデータを用いて説明しました。特に、日本の食料生産の現状や国際的な食料生産・流通にも焦点をあて、日本が開発途上国での研究や技術開発への協力を進める意義について、生徒自身と一緒に考えました。

続いて、生物資源・利用領域の大髙潤之介主任研究員による講義が行われました。講義では、JIRCASの研究成果の一つであり、世界で熱い注目を集めている「生物的硝化抑制(BNI)強化コムギ」について、実際のサンプルを用いながら紹介しました。また、大髙主任研究員は、BNI強化コムギなどの開発によって、大幅に窒素施肥量を減らせる可能性について説明するとともに、BNIという現象が長年謎とされてきた背景や、JIRCASの研究者がその存在を明らかにした経緯を写真とともに語りました。

さらに、世界で初めてトウモロコシのBNI物質を同定した自身の研究について、その挑戦の過程やデータを交えてわかりやすく紹介しました。また、現在進めている雑穀のBNI物質同定の試みについても触れ、BNIという作物の持つ機能を強化することで世界の食料生産にどのようなインパクトを与えられるかを解説しました。

講義の後半では、大髙主任研究員が自身のキャリアについて語り、研究を志したきっかけや、異なる専門分野の研究者と議論しながら進める国際共同研究の楽しさを熱く伝えました。生徒からは「BNI強化作物を利用することで生態系への影響はあるのか」など鋭い質問が寄せられ、大髙主任研究員が驚く場面もありました。こうした問いは、まさに研究や品種開発の実装において重要な論点であり、今後丁寧な検討が必要であることが説明されました。

今回の訪問を通じて、生徒たちは科学の可能性、研究の社会的意義、そして国際協力の重要性について理解を深め、自身の進路や将来の目標について考える貴重な機会となりました。今後も、未来の科学人材の育成に向けて、研究現場に直接触れる機会を提供し、科学技術への興味・関心をさらに高めていきたいと考えています。
 

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