 
令和7年10月30日(木)、石川県立金沢二水高等学校の2年生21名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第16回講座を開催しました。同校では、自然科学コースの2年生を対象に、先端の科学技術について学ぶことで科学への興味関心を高め、進路意識を育むことを目的とした研修旅行を実施しており、今回の訪問はその一環として行われました。
講座の冒頭では、JIRCASが取り組む研究活動や国際共同研究の概要を紹介しました。世界各国の研究機関と連携して進める農林水産分野の研究が、日本の食や暮らしにどのように貢献しているかを具体的に説明し、特に日本の食料生産の現状や国際的な食料流通の課題に焦点を当てました。さらに、開発途上国でのパートナーと連携した研究を実施する意義について、生徒が自ら考える機会を提供しました。
続いて、水産領域の筒井 功 主任研究員による講義が行われました。講義では、日本のエビ消費量が年間25.6万トンにのぼり、1人あたり253尾を食べている計算になること、そしてその94%が海外からの輸入に依存している現状が紹介されました。筒井研究員は、このような状況に対して、「みんながエビを食べて幸せになる」ことを目指して取り組む、新たな養殖技術の開発について語りました。
特に、飼料価格の高騰により課題を抱えていたタイのエビ養殖現場において、藻類などを活用した新たな飼料の導入により、収益性を1.5倍に向上させた実証研究の成果が紹介されました。この取り組みは、現地パートナーとの協力のもと、困難を乗り越えて実現されたものであり、現地に赴き、パートナーと連携して実施するJIRCASの活動の重要性を実感できる内容でした。
また、筒井研究員は、自身の進路選択や研究者としての歩みについても率直に語りました。大学受験での失敗、研究室選びの悩み、青年海外協力隊での経験、そしてその後の苦労や挑戦を通じて得た学びや出会いが、現在の研究活動につながっていることを、生徒たちに向けて熱く伝えました。
講義は写真や逸話を交えながら、生徒との対話を中心に進められました。生徒たちは、慣れないマイクに戸惑いながらも、自分の考えをしっかりと発言し、活発な意見交換が行われました。また、質疑応答では、海外での活動における苦労や、研究者としての働き方、現地の人々とのコミュニケーションの工夫など、多くの質問が寄せられ、筒井主任研究員は一つひとつ丁寧に答えていました。
引率の先生からの「探究を進める上でのコツは?」という問いに対しては、「答えが出ないことも一つの結果。それを継続することで、やがて求める答えにたどり着ける」とのメッセージが送られ、生徒たちにとって大きな励みとなりました。
生徒たちには、科学の可能性、研究の社会的意義、そして国際協力の重要性について理解を深め、自身の進路や将来の目標について考える貴重な機会となりました。今後も、未来の科学人材の育成に向けて、研究現場に直接触れる機会を提供し、科学技術への興味・関心をさらに高めていきたいと考えています。