令和7年10月23日(木)、群馬県立桐生高等学校の1年生20名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第14回講座を開催しました。
令和7年10月23日(木)、群馬県立桐生高等学校の1年生20名を国際農林水産業研究センター(JIRCAS)に迎え、「未来科学人材アカデミー」第14回講座を開催しました。同校では、科学研修を通じて最先端の科学技術に触れることで、生徒の科学への関心を高め、進路選択への意識を育むことを目的とした取り組みを行っており、今回の訪問はその一環として実施されました。
講座の冒頭では、JIRCASが取り組む研究活動や国際共同研究の概要について紹介しました。世界各国の研究機関と連携して進める農林水産分野の研究が、日本の食料供給や暮らしにどのように貢献しているかを具体的に説明しました。特に、日本国内の食料生産の課題や、国際的な食料流通の現状に触れ、開発途上国での活動を行う意義や研究の果たす役割について、生徒が自ら考える機会を提供しました。
続いて、社会科学領域の尾崎諒介研究員による講義が行われました。講義では、アフリカにおける貧困の現状と、農業を通じた解決策の可能性について説明しました。アジアとの比較も交えながら、アジアでは単位面積あたりの収量向上が食料生産の増加に寄与している一方、アフリカでは耕作面積の拡大が主な要因であることを、データを用いて解説しました。
そして、このような状況に対し、尾崎研究員は、農家の経済状況や栽培環境の理解を踏まえ、農業技術の受容や行動変容につなげる取り組みを実施していることを紹介し、単に技術を導入するだけではなく、農民との対話を通じて本当に必要とされる支援を見極めることの重要性に触れました。
また、尾崎研究員からは、日本の大学を卒業後、アメリカへ留学し、その後、青年海外協力隊としてウガンダで活動、さらに民間企業への就職を経験した自身のキャリアについてもアフリカでの生活がわかる写真や現地の農民との交流を通じて得た気づきなど、具体的な逸話などを交えて紹介しました。その後、再びアフリカへの思いが募り、大学院を経てJIRCASで研究者としての道を歩むことになった経緯を話してくれました。
講義の最後には、「研究者とは“分からない”ことを許される、そしてその疑問を追究できる稀有な職業である」と語り、科学的探究の魅力を力強く伝えました。生徒たちも真剣な表情で耳を傾けていました。
今回の訪問を通じて、生徒たちは科学の可能性、研究の社会的意義、そして国際協力の重要性について理解を深めることができました。今後も、未来の科学人材の育成に向けて、研究現場に触れる機会を提供し、科学技術への興味・関心をさらに高めてまいります。