日時:平成27年10月28日(水)
開催場所:国連大学ウ・タント国際会議場
主催: 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)
協賛: 国連大学サステイナビリティ高等研究所
後援:農林水産省農林水産技術会議事務局、国際協力機構(JICA)、日本国際地域開発学会、持続的開発    のための農林水産国際研究フォーラム(J-FARD)

会議概要:

 基調講演

 

M. Ann Tutwiler(Bioversity International所長)
畝(たんぼ) 伊智朗(JICA研究所所長)

 講演者

宝川 靖和(JIRCAS生産環境・畜産領域)
新野 有次(FAOアジア・太平洋事務所 土地資源管理担当官)
村中  聡(JIRCAS熱帯・島嶼研究拠点)
Rose Edwige Fiamohe (AfricaRice)
木村 健一郎 (JIRCAS農村開発領域)
Patcharee Tungtrakul(カセサート大学食品研究所所長)

 

議事概要:

主催者を代表し、岩永勝JIRCAS理事長より、近年、国際開発の分野では、「気候変動」、「食料安全保障」、「貧困削減」という従来のキーワードに加え、「栄養改善」、「フードバリューチェーンの構築」、「レジリアンス」、「包括的な開発」など、GDP成長率に代表される経済規模の拡大だけでなく、経済成長の「質」の充実に注目した新たなキーワードが注目されており、本シンポジウムでは、「質」の切り口で、JIRCASが今次中期計画(平成23~27年度)で実施している研究成果や、パートナーの取り組みを例示しながら、これから国際農林水産業研究の進むべき方向を示したい旨の挨拶がありました。

その後、来賓の農林水産技術会議事務局の西郷正道局長より、世界の貧困削減において農業の成長は不可欠であり、開発途上地域に対する農業投資の強化が必要だが、その中でも研究開発に対する投資は、新技術の創出を通じて生産性の改善に役立つことから特に重要であること、こうした中で、研究内容や研究アプローチの質を高め、研究投資の効果を最適化することが求められており、本シンポジウムで研究の「質」に注目することは、時宜を得たもの、とする挨拶が行われました。

同じく来賓の国連大学サステイナビリティ高等研究所の竹本和彦所長からは、本年9月、国連サミットで新たに策定された持続可能な開発目標(SDGs)では、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」とされており、本シンポジウムを契機に、国内外の研究者の連携の下に持続可能な農林水産技術開発が一層進展し、アジアをはじめとする世界の農林水産業、食品産業等の関連産業の持続的な発展にさらに貢献することを祈念する、との挨拶が行われました。

基調講演では、Tutwiler氏は、「栄養状態改善、効果的な気候変動対応、より良い農村生活のための生物多様性活用」と題して、土壌劣化、気候変動、経済的不平等といった問題に対処するには、緑の革命に代表される、限られた種類の作物を増産するという手法はもはや通用せず、SDGsでも言及された生物多様性の活用が鍵であるとして、限界地における伝統的コムギ品種の収量が、改良品種を上回った事例などを紹介しました。また、畝氏は、「今なぜ『質の高い成長』か?―JICAの経験から―」と題して、「質の高い成長」を構成する三つの要素(包摂性、持続性、強靱性)に加え、知識と技術に基づくイノベーションが重要性であることを、南米セラード農業開発などの事例を紹介しつつ、解説しました。

セッションAは、「気候変動に対して強靭で持続的な農業を目指して」のテーマで、宝川氏が、JIRCASの気候変動対応プロジェクトによる、ベトナム・メコンデルタ地域でのAlternate Wetting and Drying (AWD)による水田からの温室効果ガス排出削減などの取り組みが紹介されました。また、新野氏は、環境負荷の低減と収量増加を可能とする、保全的農業のFAOにおける取り組みについて、報告しました。

セッションBは、「アフリカにおける農産物の安定生産と消費促進に向けたアプローチ」のテーマで、村中氏が、西アフリカの重要な豆類であるササゲについて、JIRCASの熱帯作物開発プロジェクトによる、付加価値向上を視野に入れた、遺伝的多様性の利用に向けての取り組みを紹介しました。また、Fiamohe氏からは、消費者の嗜好を分析することにより、アフリカ産米の輸入米に対する競争力を向上させようとする、AfricaRiceの活動が報告されました。

セッションCでは、「アジアにおける地域資源の評価とその活用によるバリューチェーン構築」のテーマで、木村氏が、JIRCASのインドシナ農山村プロジェクトによる、ラオスにおける非木材林産物(NTFP)が、食料供給と農家経済に重要な役割を果たしていることを、NTFPの貨幣価値を含め報告しました。また、Tungtrakul氏からは、タイにおけるコメ、在来作物、発酵食品などのバリューチェーン構築の取組が紹介されました。

総括討議では、各セッション座長が、研究課題の多様性、質の高い課題設定、包括性の概念を研究に取り入れる試みなどについて、来場者とともに意見交換を行いました。最後に、岩永勝JIRCAS理事長より、生産者に加えて消費者や地域住民の視点を含む複眼的な思考が農業研究には必要であり、質の高い研究を実現するには、研究のアウトプットを具体的なインパクトにつなげることが重要、との閉会の辞が述べられました。