2013年若手外国人農林水産研究者表彰報告

平成25年11月20日、国連大学ウ・タント国際会議場において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産技術会議主催)の表彰式典が挙行されました。式典は、まず表彰式において、三輪睿太郎農林水産技術会議会長の主賓挨拶に続き、来賓の皆様の挨拶、選考委員会の貝沼圭二座長より審査経緯の報告をいただきました。また、賞の授与では、三輪会長より表彰状が、岩永勝JIRCAS理事長より奨励金の目録が受賞者に授与されました。

平成25年11月20日、国連大学ウ・タント国際会議場において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産技術会議主催)の表彰式典が挙行されました。式典は、まず表彰式において、三輪睿太郎農林水産技術会議会長の主賓挨拶に続き、来賓の皆様の挨拶、選考委員会の貝沼圭二座長より審査経緯の報告をいただきました。また、賞の授与では、三輪会長より表彰状が、岩永勝JIRCAS理事長より奨励金の目録が受賞者に授与されました。

表彰式に引き続き受賞者講演が行われ、受賞者による研究成果の発表が行われ、つつがなく式典を終えることができました。

本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績をあげている、又はあげつつある若手外国人研究者を農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が7回目です。

受賞者と業績名は、次のとおりです。

受賞者と業績名(敬称略)

Dr. Lee Hong Tnah
リーホン ナ
国籍:マレーシア
所属:マレーシア森林研究所

業績:DNAアプローチによるマレーシアの重要木材種Neobalanocarpus heimii(フタバガキ科)の木材追跡システム

 

Dr. Lee Hong Tnah

[業績概要]
ある木材の原産地や切り株を鑑定する新しい方法は、違法伐採を規制するために盗難木材の流通経路を明らかにする際や、持続可能な経営が行われている森林から生産された木材の生産物流通認証を鑑定する際に、法科学的な重要な根拠となる。マレーシアにおいては、盗難の疑いのある木材の供給源を明らかにする際に、森林官は木材の解剖学的な証拠を用いている。しかし、この方法の識別能力は不十分で、樹木種のグループを識別できるが樹種や個体を識別することはできない。よって、生得の個々の特性である木材内のDNAを用いることは、林業における個体や生産地認証を支持する重要な法科学的な要素となり得る。受賞者らはフタバガキ科の一樹種Neobalanocarpus heimii(チェンガル)を例として、葉緑体DNA(cpDNA)と核DNAの単純反復配列(nSTR)を遺伝マーカーとして使用し、樹木個体群と個体の識別データベースからなる木材追跡システムを開発した。(1)森林認証とCoC認証を行う上で木材の由来を鑑定すること、(2)不法に伐採された疑いのある木材について可能性の高い原産地の個体群や切り株を鑑定すること、これらの2つの目的にこのデータベースを適用できる。

Dr. Nouhoun Belko
ノウマン ベルコ
国籍:ブルキナファソ
所属:セネガル農業研究所

業績:ササゲ(Vinga unguiculata L. (Walp))の耐乾性に関する効率的な評価と選抜

 

Dr. Nouhoun Belko

[業績概要]
ササゲは、半乾燥地帯において広く栽培される重要な豆科の作物であるが、この地域では、乾燥ストレスが作物の生産性を制限する主要な要素となっている。 この乾燥ストレス抵抗性に優れた改良品種の開発は、効果的なスクリーニング技術や選抜基準が整備されていないことから、十分に進んでいるとは言えない。乾燥ストレスに対して抵抗性を持ち、高収量の品種の開発を活性化させるためには、新たな総合的なアプローチが必要とされる。この点において、受賞者は、セネガルとインドで、試験場、雨よけ装置、温室や生育箱などを用い、異なる環境条件下において十分な研究活動を行っている。研究目的は(1)効率的な植物表現型の評価手法の開発、(2)乾燥ストレスに関連した形態生理的な形質の特定、また(3)開花後の乾燥ストレスに対して抵抗性をもつ高収量ササゲ品種の選抜、の三つであった。彼は、自身の広範囲にわたる活動により、(1) 開花後の乾燥ストレスに対して抵抗性をもつ数品種の高収量ササゲの選抜、(2)乾燥ストレス抵抗性に関連する主要な農業生理特性の確認、また(3)影響力の高い研究論文の発表などの重要な業績を挙げている。彼の研究活動により開発された技術は、現在アフリカとアメリカ合衆国における育種プログラムで使用されている。現在、彼は、作物の持つ特定の形質とそれらの形質の組み合わせが作物の収量に与える影響や、アフリカの異なる干ばつシナリオや多様な環境下での作物の成長と収量への寄与率の予測を可能にする豆科作物モデルについて、パラメータ化とその安定性の評価を実施している。

Dr. Panuwan Chantawannakul
パヌワン チャンタワンナクル
国籍:タイ王国
所属:チェンマイ大学

業績:ミツバチ病理学とアジアにおける養蜂の開発

 

Dr. Panuwan Chantawannakul

[業績概要]
受賞者は、ミツバチの最も致命的な病気であるアメリカ腐蛆病の研究からキャリアをスタートさせた。彼女の研究は、アメリカ腐蛆病に感染したミツバチの死体から得られたプロテアーゼはメタロプロテアーゼであることを明らかにし、それには、三つのパターンがあることを実験的に明らかにした。異なる分離株におけるこれらのプロテアーゼのバンドパターンは、系統を識別するための手段として利用できる可能性があり、またアメリカ腐蛆病の発生を追跡する際には動物疫学的な価値を持つ。その後、彼女はタイにおけるミツバチの病害虫と寄生虫を調査し、タイの養蜂産業が病原菌類並びにヘギイタダニやミツバチトゲダニの影響を受けてきたことを示した。彼女は観察を通じて、ウイルス、ヘギイタダニ及びミツバチの相互関係を明らかにした。この発見は、ミツバチに寄生するウイルスの遺伝物質がミツバチに寄生したヘギイタダニでも見つかったことによる。このことは、ヘギイタダニはウイルス感染の生物学的ベクターであり、ウイルス感染が、いわゆる「ミツバチ寄生ダニ症候群」による蜂群崩壊をもたらす原因である可能性が示唆するものである。さらにこの研究により、一つのダニに複数のミツバチウイルスが共存していることを初めて示した。またこの研究は、タイにおけるミツバチのウイルスについての最初の報告でもある。この発見は、養蜂場においてウイルス感染を阻止するために、養蜂家がダニ個体群を減らす努力をすることを促すだろう。近年、蜂蜜に残留する化学物質や病原微生物の抗生物質抵抗性についての懸念が広がっている。このことから、彼女の研究は、天然物を使ってミツバチの病害虫を除去することを目指し、またミツバチのゲノム分析についても焦点を当てている。経済的理由から東南アジアに導入されたセイヨウミツバチ以外に、彼女は他の東南アジア原産のミツバチの生態的役割の研究にも興味を持っている。最近、彼女は、タイと日本両方のミツバチに影響を与える病気や、蜂病と寄生ダニ類にするアジアのミツバチの抵抗性メカニズムについて研究している。

受賞者、審査員及び関係者

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