研究成果情報 - ガーナ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 貯水灌漑技術と確率計画モデルを用いた小規模農家の所得変動リスク管理手法(2022)
アフリカの小規模農家の多くは、不安定な天水作物生産に生計を依存しており、所得が変動しやすいが、ため池等を活用した灌漑の導入によって、生産性、収益性の安定化が期待できる。ガーナ北部を対象として構築した、ため池の利用条件、農家の経営条件、各種作物の収量、価格、費用の変動などを反映した確率的営農計画モデルを用いることで、農家が所得変動リスクに対処するための最適な貯水灌漑・作付を計画できる。
- 根圏土壌を加えたリン鉱石添加堆肥は化学肥料と同等にソルガム収量を増加させる(2022)
サブサハラアフリカの農業生産性を制限している土壌の低いリン肥沃度の改善に向けた新規有機肥料として、ソルガム残渣にリン鉱石と根圏土壌を加えて堆肥化するとリン鉱石土壌添加堆肥が得られる。このリン鉱石土壌添加堆肥は、ソルガム栽培土壌の生物性を高め、既存の化学肥料と同等の増収効果をもたらす。
- 根圏土壌を加えたリン鉱石添加堆肥は化学肥料と同等にソルガム収量を増加させる(2022)
サブサハラアフリカの農業生産性を制限している土壌の低いリン肥沃度の改善に向けた新規有機肥料として、ソルガム残渣にリン鉱石と根圏土壌を加えて堆肥化するとリン鉱石土壌添加堆肥が得られる。このリン鉱石土壌添加堆肥は、ソルガム栽培土壌の生物性を高め、既存の化学肥料と同等の増収効果をもたらす。
- ため池への流入量を精緻に算出できるカーブナンバー推定モデル(2022)
ため池からの越流水をかんがいに利用するには、降雨によりため池に流入する水量(流出量)を推計する必要がある。流域性状等から選択されるカーブナンバー(CN)の値に基づいて流出量を推計するカーブナンバー法において、回帰分析を用いてCN値を推定するモデルを適用することにより、流出量の精緻な算出が可能になる。
- 高いさび病抵抗性を有するダイズ新品種「Doncella INTA-JIRCAS」を開発(2022)
アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)と国際農研が共同開発し、アルゼンチンで登録したダイズ新品種「Doncella INTA-JIRCAS」は、ダイズさび病に対する3つの抵抗性遺伝子の導入により、高いさび病抵抗性を有する。
- 水田でのメタン発酵消化液の施用によるメタン排出促進は間断灌漑で相殺できる(2021)ベトナム・メコンデルタの水稲三期作において、メタン発酵消化液の肥料利用と間断灌漑の組み合わせは、現地慣行である化学肥料と常時湛水の組み合わせと比較して、水稲収量を減らすことなくメタン排出量を11~13%削減できる。
- 再生稲の水分消費は、移植稲と比較して生育初期で大きく生育後期で小さい(2021)これまでに報告事例のない水稲再生二期作の用水計画の策定に必要な再生稲の水分消費割合を明らかにする。再生稲の生育に応じた水分消費割合はその旺盛な分げつ特性により生育初期から放物線的増加を示すことから、移植稲と異なる用水計画の策定が必要となる。
- オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす(2021)オイルパーム古木の慣例的農地還元による影響を確認するために、パーム古木繊維を混合した土壌で植物栽培を行った結果、生育不良や土壌に糸状菌Trichocladium属菌が有意に増殖する。パーム古木繊維の直接的な農地還元は土壌環境に負の影響を与える。
- フタバガキ科熱帯林業樹種Shorea leprosulaの茎の成長と新葉の関係(2021)フタバガキ科樹木のS. leprosulaでは、茎は葉と同調して断続的に成長し、葉の切除により茎の伸長が顕著に抑制される。葉の成長は茎の伸長の制御要因となっており、その制御機構の解明は、木材生産や適切なサイズの苗木の安定供給に役立つことが期待される。
- ラオス山地では植栽密度と立地選択によりチーク成長が倍増する(2021)ラオス山間部では植栽密度のコントロールと植栽する斜面の形状や傾斜の選択によって人工林チークは肥大成長および伸長成長に倍程度の差異を持つことから、適地判定が重要である。凹形緩傾斜面の下部が適地として最も推奨され、密植は避けた方が成長がよい。
- 洪水インデックス保険に対して稲作農家が支払う保険料の算出(2021)
気象災害の多いミャンマー国の沿岸域の稲作農家の経営安定化のためには、農家が受け取る最適なインデックス保険の保険金と保険会社の保険料を求める必要がある。降水量、リスク回避度、コメ販売価格変化にしたがって保険金と保険料を算出する手法を開発する。
- アフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は天水稲作で輸入肥料を代替できる(2021)未利用のアフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は、ブルキナファソの天水稲作において、高価な輸入リン肥料である過リン酸石灰と同等の施肥効果を示すことから、代替となり得る。収量に寄与する肥料中のリン成分は場所で異なり、地下水位の高い河床では水溶性リンと可溶性リンの両者が、地下水位の低い河岸斜面では水溶性リンが寄与する。
- ダイズ根系の改良に資する根長に関与する遺伝子座の特定(2021)ダイズ品種「Fendou 16」は長い主根を持つ。QTL解析の結果、主根長に関与する遺伝子座は第16番染色体のDNAマーカーSat_165とSatt621間のゲノム領域に存在する。同定されたダイズの長根型品種ならびにその遺伝的な情報はダイズの根系の遺伝的改良に利用できる。
- メキシコのダイズさび病菌の病原性は2つの傾向に大別される(2021)
メキシコの2州で2016年から2019年に採取されたダイズさび病菌は、全く異なる病原性の特徴を示す2つのグループに分けられる。病原性の明瞭な地理的差異の情報は、さび病抵抗性品種の導入による病害防除に利用できる。
- 西アフリカの群生相化したサバクトビバッタは産卵直前に雌雄が合流(2021)アフリカで大発生するサバクトビバッタの群生相化した成虫は、雌雄がそれぞれの性に偏った集団を形成しているが、日中、産卵直前のメスがオスの集団に飛来、交尾し、夜間に集団で産卵している。この行動特性を応用することで、集団形成の時間と場所を特定でき、使用する農薬の量の軽減が期待できる。
- フィリピンにおける養殖ミルクフィッシュの成長と肥満度は水温で予測できる(2021)フィリピンにおいて、ミルクフィッシュの成長と肥満度、水温のデータを解析することで、魚の成長予測が可能になる。水温を把握することによって、肥満度予測の可能性を示すことができ、適切な給餌にも役立つ。
- 生殖細胞凍結保存技術によりクルマエビ類の遺伝的多様性保全を図る(2021)卵の凍結保存技術が確立されていない魚介類において、生殖細胞の凍結保存は、全遺伝情報を保存できる唯一の手法となっている。開発した水産重要種クルマエビ類2種における生殖細胞凍結保存技術は、水生無脊椎動物で初の生殖細胞凍結保存技術である。
- リン欠乏水田でのリン施肥による水稲増収量は土壌リン吸着能から推定できる(2021)マダガスカルに広く分布するリン欠乏水田において、リン肥料を施用した際のイネの増収量は、近接する圃場間でも大きく異なり、土壌のリン吸着能が高いほど低下する。
- 深層学習で熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を推定するモデル(2021)土壌の分光データを使用した深層学習により、農耕地および自然植生を含む熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を迅速かつ高精度に推定できる汎用性の高いモデルを開発できる。
- イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法(2021)リン欠乏土壌ではイネの出穂が遅延するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では低温不稔が助長される。低温不稔のリスクが高い圃場にリンを施用することで、リン欠乏と低温不稔の双方の改善につながり、増収効果を高めることができる。