再生稲の水分消費は、移植稲と比較して生育初期で大きく生育後期で小さい

要約
これまでに報告事例のない水稲再生二期作の用水計画の策定に必要な再生稲の水分消費割合を明らかにする。再生稲の生育に応じた水分消費割合はその旺盛な分げつ特性により生育初期から放物線的増加を示すことから、移植稲と異なる用水計画の策定が必要となる。

背景・ねらい

再生稲による水稲二期作は育苗、代かき・田植えを必要とせず、また、再生作は本作に比べて生育期間が短縮することから、灌漑水量を削減できる作付け体系であることが報告されている。しかし、用水計画の策定に必要な再生稲の生育に応じた水分消費割合(基準蒸発量に対する蒸発散量の割合)はこれまで報告されていない。さらに、蒸発散量計測はライシメータ等の高額な機材が必要なため、特に途上国ではその水分消費割合の決定が難しい。そこで本研究では、連続計測はできないが簡易かつ高精度の水田減水深計測とその欠損データを内挿補間する統計モデリングの手法を組み合せて、再生稲の生育に応じた水分消費割合を算定する。

 

成果の内容・特徴

  1. ミャンマーの熱帯地域における再生稲の水分消費割合の算定手順は、コンクリートタンク(幅 0.9 m × 長 1.8 m × 深 0.4 m)を用いて常時湛水下で再生稲による水稲二期作(本作+再生作)を年2作行い、イネ有・無しタンクにおける非降水時の日減水深(湛水深の日差)をそれぞれ蒸発散量と基準蒸発量とする。欠損値は実測値と気象データ、統計モデリングを用いてモデル推定し内挿補間する。そして、決定した蒸発散量と基準蒸発量から水分消費割合を算定する(図1)。
  2. 本作に対する再生作の蒸発散量と基準蒸発量のそれぞれの割合は雨期作が59%と55%、冷涼乾期作が74%と82%であり、蒸発散量と基準蒸発量の割合はほぼ同等である(図2)。このことは、本作と再生作の蒸発散量の違いは主に作付期間の気候条件の違いに起因しており、ミャンマーの熱帯地域においては再生稲と同時期に栽培される移植稲の積算蒸発散量は大きく変わらないことを示唆している。
  3. 移植稲(1本/株)の株当たり茎数は移植後から積算気温の上昇に応じて徐々に増加し、約1,600℃で最高分げつ期に達する。一方、残株から発芽する再生稲は生育初期からバラつきの大きい旺盛な分げつを示し、移植稲より株当たり茎数は2倍程度多い(図3)。
  4. 移植稲と再生稲の分げつ形態の違いから、生育に応じた水分消費割合は移植稲がS字型、再生稲が放物線の増加曲線を示す。再生稲による水稲二期作では本作と再生作の水分消費特性の違いに留意して用水計画を策定する必要がある(図4)。

 

成果の活用面・留意点

  1. 水田用水量の決定にあたっては、水分消費割合から推定した蒸発散量に加えて、水田の環境条件に応じた土壌浸透量、栽培管理用水量、有効雨量を考慮する。
  2. イネの再生能は遺伝と環境要因の両方の影響を受けることが報告されていることから、様々な用水計画に対応するため、再生作の水分消費特性に関する研究の蓄積が期待される。

 

具体的データ

  1. Fig1

    図1 水分消費割合の算定手順
    イネ有無しタンク内の日減水深を蒸発散量、基準蒸発量とする。気象データは正味放射量、気温、湿度、風速。

     

  2. Fig2

    図2 蒸発散量と基準蒸発量の観測値と推定値
    再生稲による水稲二期作の栽培期間は2019/2~8と2019/9~2020/4の2作である。点は観測値、帯は95%信用区間、線は推定値(予測分布の平均値)、RMSPEは二乗平均平方根誤差率。

     

  3. Fig3

    図3 移植稲と再生稲の茎数と移植後・本作刈取り後からの積算気温の関係 
    点は平均値、縦バーは標準偏差(n = 4~8)、線は二次回帰曲線、R2は決定係数、***は有意水準0.001%。

     

  4. Fig4

    図4 移植稲と再生稲の生育に応じた水分消費割合
    移植稲 n = 138、再生稲 n = 135、帯は95%信用区間、線は予測分布の平均値。数値%は移植稲に対する再生稲の水分消費割合の差(増減率)。

    図はShiraki et al. (2021)より改変(転載・改変許諾済)

     

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

資源・環境管理

予算区分

交付金 » 気候変動対応

科研費

研究期間

2019~2020年度

研究担当者

白木 秀太郎 ( 農村開発領域 )

Thin Mar Cho ( ミャンマー国農業研究局 )

ほか
発表論文等

Shiraki et al. (2021) Agronomy 11(8): 1573
https://doi.org/10.3390/agronomy11081573

日本語PDF

2021_A02_ja.pdf600.12 KB

English PDF

2021_A02_en.pdf459.44 KB

ポスターPDF

2021_A02_poster.pdf382.39 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。