前作にクロタラリア類を栽培すると東南アジアのトウガラシのネコブセンチュウ被害は大きく軽減できる
タイなどの熱帯地域において香辛料の原料として重要なトウガラシ(英名chili)で広がっているサツマイモネコブセンチュウの被害は、クロタラリアとの輪作により軽減できる。
背景・ねらい
タイなどの熱帯地域では、青果用および加工用として辛味の強いタイプのトウガラシ(学名Capsicum spp.、英名chili、hot pepper)の生産が盛んであり、タイの栽培面積は、2007年時点で23,840ヘクタールに及んでいる。しかし、タイ東北部ではサツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)等の被害により著しく減収し(図1)、農民は、ほ場の変更や作付中止を余儀なくされている。そこで、熱帯地域で実践可能な被害軽減策を確立するために、温帯地域でセンチュウ抑制効果が認められているものの熱帯地域での知見が乏しいクロタラリア類の有効性を検討する。
成果の内容・特徴
- サツマイモネコブセンチュウ汚染土壌で、クロタラリア3種(Crotalaria juncea、C. breviflora、C. spectabilis)を前作として播種・育成し、開花後鋤き込み、1か月齢のトウガラシ苗を移植すると、いずれのクロタラリアの場合でも、トウガラシに対するセンチュウの感染を良く抑える。ただし、クロタラリアとトウガラシとの混作ではセンチュウの感染を抑えることはできないので、前作としてクロタラリアを開花期(播種後50~60日程度)まで生育させることが必要である(図2)。
- ゴマ、落花生、マリーゴールド、クロタラリア(C. juncea)を、1と同様に、前作として用いた場合でも、クロタラリアがセンチュウの感染を最も抑える(図3)。
- ほ場試験(Ubon Ratchathani)でも、クロタラリア(C. juncea)による顕著なセンチュウ抑制効果が認められ、鞘数等に大きな違いが観察される(図4)。
成果の活用面・留意点
- タイではC. junceaが緑肥作物として一般に用いられているが、開花期の虫害により採種が困難となる場合がある。C. brevifloraやC. spectabilisの栽培特性も十分確認した上で、利用することが必要である。
- クロタラリアは、緑肥の効果も高く、化学肥料の削減とそれによるセンチュウ感染の軽減も期待できる。
- クロタラリアは十分な栽植密度となるよう播種するとともに、開花期(播種後50~60日程度)まで生育させ、十分な生育量を確保することが必要である。
具体的データ
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コンクリート枠にセンチュウ汚染土壌を入れ、トマト苗を移植して2か月後、1ヶ月齢のトウガラシ苗を移植した。クロタラリア、トウガラシとも4本移植、3反復で行った。センチュウ根こぶ発生指数:根こぶなし(0)、一株当り数個の根こぶ(1)、根系の1/4以下に根こぶ着生(2)、根系の1/4~1/2に根こぶ着生(3)、根系の1/2~3/4に根こぶ着生(4)、根系の3/4以上に根こぶ着生(5)。
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試験方法、根こぶ発生指数は図2と同様。 -
- Affiliation
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国際農研 企画調整部
- 予算区分
- 交付金 [熱帯土壌管理]
- 研究課題
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熱帯地域における適正土壌管理規範確立のための技術開発
- 研究期間
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2006~2008年度
- 研究担当者
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宮田 悟 ( 国際開発領域 )
TANGCHITSOMKID Nuchanart ( タイ農業局 )
MANECKAO Sorasak ( タイ農業局 )
- ほか
- 日本語PDF
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2008_seikajouhou_A4_ja_Part11.pdf656.66 KB