オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす

国名
アジア
要約
オイルパーム古木の慣例的農地還元による影響を確認するために、パーム古木繊維を混合した土壌で植物栽培を行った結果、生育不良や土壌に糸状菌Trichocladium属菌が有意に増殖する。パーム古木繊維の直接的な農地還元は土壌環境に負の影響を与える。

背景・ねらい

世界で最も消費される植物油脂「パーム油」の原料である果房は、マレーシアやインドネシアのパーム農園で栽培されるヤシ科の植物であるオイルパームから収穫される。オイルパームは、栽培年数と共に、その果房の生産量が低下することから、25年周期で伐採され、植替えられる。伐採されたオイルパーム古木(OPT)は、農園への肥沃度向上に効果があるとされ、細かく裁断し放置した後、新しいパーム苗木の再植時に慣例的に農園に施肥することで農地還元している。しかし、OPT繊維は分解されず、長期間土壌に残り続けることから、果たしてその慣例的農地還元が土壌の肥沃度向上に繋がるのか科学的知見は少ない。そこで本研究では、植替え前に、OPT繊維が施肥されたと想定した土壌をモデルとして作出し、苗木の生長期間中(3年間)に間作作物として栽培されるトウモロコシ、トマト、ダイズ栽培を例に、OPT繊維が直接農地還元された際の植物生長や土壌環境にどういった影響を与えるかについてモデル的に検証を行った。

 

成果の内容・特徴

  1. OPT繊維を混在させた土壌(OPT区: 5 g/100 g土壌)で栽培したトウモロコシ、トマト、ダイズはすべて生育不良となる。OPTを含まない土壌(標準区)で生育したトウモロコシ、トマト、ダイズと比較すると、それぞれの植物体の高さは、27.6%、35.9%、54.9%、葉緑素量(SPAD値)は、58.8%、35.5%、48.9%、乾物重量は、52.5%、53.3%、42.8%の減少を示す(図1)。
  2. OPT区で栽培したすべての植物体では、窒素欠乏症状である黄化や、マグネシウム欠乏症状である葉脈透過が認められる。植物体地上部の元素分析から、OPT区で栽培したすべての植物体で、窒素及びマグネシウムの欠乏が生じる(表1)。
  3. 窒素及びマグネシウム欠乏の原因を検討するため、栽培後の標準区とOPT区の微生物叢を比較したところ、根圏糸状菌であるTrichocladium属菌が有意に増殖する(図2)。
  4. OPT繊維の主成分であるセルロースの混在土壌(セルロース区)の場合、OPT区と比較しTrichocladium属菌の検出量は低く、目立った増殖は認められない(図2)。このことは、OPT繊維の土壌還元により、特異的なTrichocladium属菌の増殖を引き起こすことを示唆している。Trichocladium属菌は、根腐病を引き起こすとされるFusarium oxysporumと同症状を誘発するとの報告があることから、土壌環境に負の影響を与える可能性がある。

 

成果の活用面・留意点

  1. OPT繊維によるTrichocladium属菌の特異的増殖を示した初めての報告であり、Trichocladium属菌の植物病理学的知見を明らかにすることで、パーム農園管理改善への知見となる。
  2. OPTの農地還元の仕方により土壌に与える影響は異なる可能性がある。

 

具体的データ

  1. 表1 植物体元素分析結果

     

  2. 図1 栽培試験における植物体の様子
    A: トウモロコシ、B:トマト、C:ダイズ。左側:OPT繊維を混合させた土壌(OPT区) 右側:OPT繊維を混合しない土壌(標準区)。

     

  3. 図2 土壌中に存在する各糸状菌量の比較
    菌叢解析で検出されたTrichocladium属菌及びその他糸状菌類(Trichoderma 属等)のITS1領域配列量を示す。対照としてセルロース(Sigma-Aldrich社製)を混在させた土壌(セルロース区)の菌叢解析を示す。

     

    図表はUke et al. (2021) より改変(転載・改変許諾済)

分類

研究

プログラム名

環境

予算区分

受託 » JST/JICA SATREPS

研究課題

JST/JICA・地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

研究期間

2019~2021年度

研究担当者

鵜家 綾香 ( 生物資源・利用領域 )

小杉 昭彦 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 70425544
見える化ID: 001772

Chuah Jo-Ann ( マレーシア理科大学 )

Sudesh Kumar ( マレーシア理科大学 )

Abidin Nur Zuhaili Harris Abidin Zainal ( マレーシアパームオイル庁 )

Hashim Zulkifli ( マレーシアパームオイル庁 )

ほか
発表論文等

Uke et al. (2021) Journal of Environmental Management, 295:113050
https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2021.113050

日本語PDF

2021_A03_ja.pdf460.39 KB

English PDF

2021_A03_en.pdf332.76 KB

ポスターPDF

2021_A03_poster.pdf252.58 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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