研究成果情報 - ブラジル
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- ブラジルの草地およびダイズ畑における窒素収支(2000)
ブラジルのセラードにおける連続草地と連続ダイズ畑での窒素収支を定量化する。連続ダイズ畑では窒素肥料を施用しないにもかかわらず下層に硝酸態窒素が蓄積する。両農地において窒素収支はマイナスになり、その度合は連続ダイズ畑の方が連続草地より大きい。
- セジロウンカに対する中国ジャポニカ水稲‘春江-06’の品種抵抗性(2000)
中国ジャポニカ水稲‘春江-06’の高度なセジロウンカ抵抗性は、優性の吸汁抑制形質と、劣性の殺卵誘導形質の複合作用によって発現し、両抵抗性形質は、それぞれ中間母本‘秀水04’および‘祥湖24’、‘C81-40’に由来する。
- インドネシア産大豆の豆腐・テンペへの加工適性(2000)
インドネシア産大豆は、輸入米国産大豆と比べタンパク質含量が高く、豆腐加工適性に優れる。テンペ加工においては、粒の大きい大豆ほど収量および官能評価も高く、百粒重が15g程度の品種を用いれば、製品テンペの官能評価における輸入米国産大豆とインドネシア産大豆との明らかな差は認められない。
- インドネシアにおける大豆発酵調味液ケチャップ製造用麹菌の改良(2000)
インドネシアの醤油様大豆発酵調味液ケチャップの麹製造用に、Aspergillus 属の有用株から紫外線照射により白色変異株を作成した。同国常在のアフラトキシン生産菌との識別が容易なため、スターター(種菌)として使用できる。
- 東北タイ緩斜面畑地におけるアレイクロッピング技術(2000)
東北タイ緩斜面畑地においてアレイクロッピングに用いる樹種としては、ギンネムが適している。熱帯モンスーンの降雨に支配される樹木生育パターンからみて、緑肥として用いるための適正な刈込み間隔としては年3回、樹木間における作物の生育及び栽培管理上からみて、適正な並木間隔は20mである。
- 下層土破砕処理による畑地土壌水分の有効利用技術(2000)
東北タイ緩斜面畑地において、サブソイラにより深さ50~60cmの下層土破砕処理を行うことにより、雨期の斜面流去水を土壌深層に蓄えることができ、土壌水分を増加させるとともに、土壌硬度を減少させて、作物生育を促進することができる。
- 東北タイ砂質畑地帯における不耕起栽培の適用性(2000)
東北タイ砂質畑地帯において、不耕起栽培は土壌浸食防止、雑草発生の抑制および土壌水分の保持に有効である。不耕起栽培における作物の出芽と生育は雨期、乾期ともに耕起栽培におけるより優れている。
- 東北タイ畑地優占雑草に対する機械除草の効果(2000)
東北タイの畑地帯で優占している雑草、ハシカグサモドキの防除には、管理機により作物条間のロータリ耕を行う機械除草の効果が高い。雑草防除に必要な除草回数は、作物の種類により異なり、初期生育速度が大きい作物ほど少ない。
- メコンデルタの水稲潤土直播栽培における収量性からみた最適播種量(2000)
メコンデルタの水稲潤土直播栽培において、慣行播種量(200~250kg/ha)より少ない播種量(50~100kg/ha)で最高収量が得られる。必要な苗立数確保と手播ムラを小さくするためには、播種量(80~100kg/ha)が奨励される。本播種量は慣行播種量の1/2~1/3に節減されるため新品種の普及および種子の更新が促進されると共に種子費用も節減できる利点がある。
- パラグアイの有害線虫抑制に有効なダイズ品種、輪作作物及び対抗植物(2000)
ジャワネコブセンチュウの線虫密度低下にダイズ5品種、ミナミネグサレセンチュウではダイズ1品種、輪作作物1品種、対抗植物1品種、ニセフクロセンチュウではダイズ3品種、輪作作物1品種が利用できる。
- 脂肪細胞への分化抑制効果を示す大豆発酵食品中の生理機能性成分(2000)
タイのタウジャオ(みそ様発酵食品)、醤油、腐乳、日本の味噌などの大豆発酵食品に含まれる物質1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-β-カルボリン-3-カルボン酸(MTCA)は、脂肪細胞への分化を抑制する。MTCAの含量を定量することにより脂肪細胞への分化抑制活性を推定することができる。
- カザフスタン産マメ科牧草エスパルツェトの種子は、地域的変異があり、強いアレロパシーを示す(2000)
カザフスタン産エスパルツェト(Onobrychis spp.)は1個の果皮の中に1個の種子を有し、その形態には地域的変異がある。果皮付種子の発芽は、果皮を除去した裸種子よりも遅れる傾向がある。サンドイッチ法によりアレロパシーを検定すると、果皮を除去した種子が最も強い。
- 2種のアグロパストラルシステムにおけるPanicum maximum草地の乾物生産性と飼料価値の比較(2000)
4年間夏ダイズ単作跡地に造成されたPanicum maximum放牧草地では、高い乾物生産性及び飼料価値が示される。4年間夏ダイズ冬ミレット輪作跡地においてもP. maximumの高い乾物生産性、飼料価値を発揮させるには、窒素などの施肥管理が重要である。
- ブラジル東北セラードのダイズ栽培におけるイオウの栄養診断基準(2000)
ダイズにおけるイオウ(S)必要量を収量および子実蛋白質組成に着目して調査したところ、葉あるいは子実のS含有率が1 g/kg未満の場合は非常に不足、 1 g/kg~2 g/kgの場合は不足、 2 g/kg~2.3 g/kgの場合は低く、2.3 g/kg以上の場合は正常である。
- 環境インパクトの小さい熱帯天然林の伐採技術(2000)
天然林択伐作業技術として伐倒方向の制御およびタワーヤーダ集材方式を活用することにより、集材作業における環境インパクトを著しく減少できる。
- エビと二枚貝の混合養殖による有機汚濁物質の軽減(2000)
ウシエビ(ブラックタイガー)養殖によって排出される有機汚濁物質を減少させ、疾病の発生を抑制する方法としてウシエビとミドリイガイとの混合養殖は有効である。
- マングローブを利用した養殖排水の浄化(2000)
エビ養殖池からの排水をマングローブ植林地に導入すると、その高い窒素除去能により環境負荷を低減できる。
- 食料需給モデルを用いた食料安全保障のシミュレーション分析(1999)
経済協力開発機構(OECD)が開発した食料需給モデルを拡充・改良して実施したアジアの低所得食料輸入地域に関するシミュレーション分析によれば、輸出国での不作、輸入国での為替変動が起こった場合、自由貿易政策の選択が食料安全保障に悪影響を及ぼす可能性がある。
- ベトナムメコンデルタ在来稲における耐塩性品種選定のための遺伝的多様性の評価(1999)
水稲60品種と陸稲5品種を含むメコンデルタ在来稲は、43個のDNAマーカー(マイクロサテライトマーカー)を用いたクラスター分析により遺伝的多様性が明らかになり、それらメコンデルタ在来稲61品種から14の耐塩性品種を選抜した。
- 中国山東省陵県における地下水水質と農耕地の窒素循環(1999)
中国黄淮海平原の典型的な農業地域である山東省陵県においては、地下水の硝酸汚染の広域化は現時点では認められないが、農耕地土壌と環境への多量の窒素負荷があり、近い将来における環境悪化が予想される。