メコンデルタの水稲潤土直播栽培における収量性からみた最適播種量
メコンデルタの水稲潤土直播栽培において、慣行播種量(200~250kg/ha)より少ない播種量(50~100kg/ha)で最高収量が得られる。必要な苗立数確保と手播ムラを小さくするためには、播種量(80~100kg/ha)が奨励される。本播種量は慣行播種量の1/2~1/3に節減されるため新品種の普及および種子の更新が促進されると共に種子費用も節減できる利点がある。
背景・ねらい
メコンデルタ水稲2・3期作地帯においては、極早生(約90日)および早生(95-105日)の穂数型品種を用いて、移植作業の省力化、良好な苗立ちおよび雑草防除を兼ね潤土面に催芽籾を密播(200~250kg/ha)する潤土直播栽培の播種面積が250万ha以上に達している。近年、窒素施肥量の増加に伴い水稲の過繁茂、倒伏の増加、病害虫の多発による収量の停滞および新品種の普及に際し、多くの種子量を必要とすることが問題となっている。そこで収量向上と播種量の軽減を図るため適播種量を検討する。
成果の内容・特徴
- 潤土直播栽培水稲のm2当たり穂数は、慣行播種量(200kg/ha)より播種量が少なくなるに伴って減少するが、1穂籾数および登熟歩合は播種量が減少するに伴い増加し、1穂登熟籾数は播種量が減少するに伴って増加する(表1,図1)。
- 各播種量におけるm2当たり登熟籾数の慣行播種量に対する比率は、播種量が200kg/haから100kg/haへ低下するに伴って高くなる。播種量50~100kg/haの値が最も高く、25kg/haでは低下する(図1)。
- 雨期及び乾期作ともに、収量は播種量50~100kg/haで最も高く、この播種量より少ない場合または多い場合にも、収量が低下する(表1,表2)。
- 高い収量を得るために必要な苗立数と手播による苗立ちムラを少なくするための適播種量として80~100kg/ha播きが奨励される。本播種量は慣行播種量の1/2 ~ 1/3に軽減されるため新品種の普及および種子の更新が促進されると共に種子費用も節減できる利点がある。
成果の活用面・留意点
- 本奨励播種量は灌漑排水の良い地区および高い苗立ちを得ている農家を対象とする。
- 本奨励播種量は慣行播種量に比べて少ないため、均一な播種を行うためには数回に分けて播種する必要がある。また、播種量80および100kg/ha播きの雑草発生量は慣行播種量よりやや多くなるので、代かきおよび除草剤を適期処理して雑草防除を行う必要がある。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 生産利用部
- 予算区分
- 国際農業(メコンデルタ)
- 研究課題
-
メコンデルタファーミングシステムにおける水稲の生育診断に基づく高品質多収技術の開発
- 研究期間
-
平成12年(10~12年度)
- 研究担当者
-
平岡 博幸 ( 生産利用部 )
TAN Pham Sy ( クーロンデルタ稲研究所 )
KHUONG T. Quang ( クーロンデルタ稲研究所 )
HUAN Tran Ngoc ( クーロンデルタ稲研究所 )
- ほか
- 発表論文等
-
Hiraoka H. Tan, P.S., Chin D.V., Khuong T. Q, and Hach C. U. 2000. Effect of seed rates and seeding methods on wet-seeded rice culture in alluvial soil of the Mekong Delta. International Workshop on Direct Seeding in Asian Rice Systems: Strategic Research Issues and Opportunities. Rice Research Institute of Thailand. & IRRI, Bangkok, Thailand. in Jan. 24-27, 2000. Under editing.
- 日本語PDF
-
2000_15_A3_ja.pdf797.19 KB