東北タイ砂質畑地帯における不耕起栽培の適用性
東北タイ砂質畑地帯において、不耕起栽培は土壌浸食防止、雑草発生の抑制および土壌水分の保持に有効である。不耕起栽培における作物の出芽と生育は雨期、乾期ともに耕起栽培におけるより優れている。
背景・ねらい
熱帯モンスーン気象条件下での作物栽培における圃場準備作業には多くの問題が伴う。雨の合間をぬって行う雨期始めの耕起作業は忙しく、圃場が軟らかい条件では不可能になり、また耕起後の大量降雨で土壌浸食が起きやすくなる。乾期における耕起作業は土壌が固く困難であるとともに、耕起により土壌水分が失われて作物の生育に不利な影響を与える。本研究は、東北タイ砂質畑地帯において、省力かつ効率的な作物生産を実現するために、不耕起栽培技術を開発することを目的としている。
成果の内容・特徴
- 国際農林水産業研究センター圃場管理室において、逆転ロータリ耕機の爪を外して、円盤ディスクを取り付けた溝切り機に市販のドリルシーダを接続した乗用トラクタ装着型不耕起播種機を試作した。現地の砂質土壌では駆動ディスクによる溝切りの精度が高く、作物残さや雑草が多い条件下でも確実な播種・施肥が可能である(図1)。
- 不耕起播種は土壌が固い条件で行うので、降雨で土壌が軟らかく耕起作業が困難な場合にも播種作業が可能であり、作付促進に有効である。また、耕起後の降雨でしばしば起こる土壌流亡も認められない。雑草発生に関しては、土壌を攪乱しないこと、および播種前処理の除草剤で枯死した雑草による被覆効果で、新たな雑草の発生が抑制される(図2)。
- 土壌水分は不耕起区が耕起区より高く推移する。土壌硬度は不耕起区が高く、とくに土壌が乾燥する乾期で著しく高く、作物根の貫入を阻害する場合も認められる(表1)。
- スィートコーン、ソルガム等の作物の出芽性は不耕起区が高いが、その理由として雨期では耕起による土壌表面のクラスト形成が起きないこと、乾期では耕起区より土壌水分を高く維持することが考えられる。成熟期乾物重も出芽性を反映して、不耕起区が耕起区より高い傾向にある(表2)。
- 以上の結果より、東北タイの砂質畑地帯における不耕起栽培の適用性は高く、作物生産の省力大規模化の見地から有望と考えられる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は砂質土壌で行ったものであり、粘土質土壌等、土質が異なる場合は新たな検討が必要である。
- 乾期の土壌硬度増加を緩和する手段として、有機物投入、下層土破砕等の対策が考えられる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産利用部
- 予算区分
- 国際農業(東北タイ)
- 研究課題
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タイ東北部における土壌保全型ファーミングシステムの開発
- 研究期間
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平成12年度(7~12年度)
- 研究担当者
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椛木 信幸 ( 生産利用部 )
田村 治男 ( 生産利用部 )
小松 隆 ( 生産利用部 )
- ほか
- 発表論文等
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Kabaki, N. (2000) Technologies for efficient and labor saving cropping system in Northeast Thailand. Proceeding "Workshop on Linkage between Biological and Social Science 2000" edited by ITCAD-JIRCAS.
- 日本語PDF
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2000_13_A3_ja.pdf1.14 MB