東北タイ農民による節水野菜栽培技術指針
農民参加型手法により、土壌水分を活用した野菜の節水栽培法の技術指針を策定した。東北タイの乾期でも、土壌水分を活用することで多種野菜を栽培することができる。
背景・ねらい
東北タイの天水農業地域は、サトウキビ・キャッサバの生産に依存した農業経営となっている。これらの価格変動に伴う経営の不安定性を緩和するために、野菜作の導入など経営の複合化が望まれていることから、その実現に向けた野菜の節水栽培技術を農民参加型手法により確立する。
成果の内容・特徴
- 東北タイでは雨季に蓄えられた土壌水分が、乾砂層の効果により乾期中もかなり保持されており、この水分を利用した野菜の節水栽培技術を確立した。
- 技術指針(図1)は2004~2005年の乾期のコンケン県ノンセン村におけるローカル資材活用によるトマトの節水栽培技術開発、同技術に関する2006~2007年のコンケン県、マハサラカム県の2県22村58農家による広域適用性確認と地元篤農家技術である植物残渣すき込みによる収量性の向上、2009~2010年のコンケン県、マハサラカム県、ムクダハン県、サコンナコン県の4県15農家による多種作目の適用性確認と、長年にわたる農民試験の上に作成されている(図2)。
- 2006年以降の農民試験は、JIRCAS天水プロが協力し、タイ農地改革局(ALRO)の円借款事業「タイ農地改革地区総合農業開発事業(Pro-IAD)」で実施された。
- 技術指針策定の手順は次の通りである。まず天水プロとPro-IADで協議し、水稲作後の無灌水栽培と、その他圃場における節水栽培の2つの栽培法に関して葉菜、果菜、豆類の技術指針を確立する方針を決定した。次いでPro-IAD対象の4県から参画農民を募り、具体的作物を農民が選定し、適用性確認試験を行い、試験後農民が一堂に会し試験結果を検討して策定した。
- 節水栽培は、通常1日2回の灌水を10分の1の5日に1度程度とするもので、有機栽培から化学肥料を使用する慣行型栽培まで広く適用できる。灌水は表面散布した化学肥料に如雨露で水をかけるなど、肥料を溶出して効かせるためのものである。無灌水栽培はラッカセイ、スイカ、メロン、ナス等が推奨されている。
- 確立された節水栽培法は自然環境を活かしたもので、特別な資材を必要としない。
成果の活用面・留意点
- 2010年12月より15農家が技術指針の講師となり、各県で研修会を開催し、いわゆる農民対農民普及が始まっている。
- 技術指針は、節水栽培の経験のある農民が講師となり研修方式で普及する。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境領域
- 分類
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技術B
- 予算区分
- 運営費交付金[天水農業]
- 研究課題
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インドシナ天水農業地帯における農民参加型手法による水利用高度化と経営複合化
- 研究期間
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2006~2010年度
- 研究担当者
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小田 正人 ( 生産環境領域 )
CHONGPRADITNUN Praphasri ( タイ農業局 )
- ほか
- 発表論文等
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Oda et al. (2006) JIRCAS Working Report No.47:115-120.
小田・諸泉 (2007) システム農学23(3):245-250.
Oda and Ogura (2008) システム農学24(1):57-64.
小田 (2009) 熱帯農業研究 2(1):1-7.
小田 (2011) インドシナ-天水農業- 養賢堂p.46-53.
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