東北タイ天水田における畦畔漏水防止技術

要約

東北タイ天水田地帯において土壌保水力を向上させるためには、止水シートの挿入、または土壌固化剤(マグネシア系固化材)による畦畔造成が有効であり、土壌浸食防止漏水抑制の効果が高い。

背景・ねらい

   東北タイの水田面積の約9 割は灌漑施設がなく、降雨に依存する天水田である。水不足による干ばつが頻発しており、これを緩和するためには降雨を蓄積する必要がある。しかし、当地で支配的な砂質土壌は透水性が高く、また、土壌浸食を受けやすいという特徴をもち、畦畔の漏水と崩壊は稲作における大きな問題点となっている。天水田地帯の土壌の保水力を高めるために、現地に適用できる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  1. 東北タイ、コンケン県カオソンクワンの国際農業研修センター試験地において、2000 年7 月に小規模水田(440m2、外周延長)の畦畔に硬質塩化ビニル製止水シートの埋設を行った。作業手順は,①現畦畔の田面からの高さを整える,②敷設断面にあわせた掘削,③シート敷設,④埋め戻し・完成断面 への成型,である(図1)。
  2. 隣接の水田(380m2、外周延長80m)で、マグネシウム系土壌固化材による畦畔改良を行った。作業手順は、①現畦畔の田面からの高さを整える、②畦畔表面を10cm 削り、これに固化材を重量比で20%及びP2O5 とクエン酸を適量混和、③水分調整、④転圧成型の手順で行った(図2)。
  3. 施工後における山中式硬度計の読みは、全調査地点で30 以上を示し、十分な固化状態と判断された。 深さ15cm まで湛水し、水位の推移を調査した結果、施工前は24 時間で水位が0 になる漏水田であったが、施工により湛水を長く維持することができる(図3)。1 年後(2001 年7 月)でも、一部でネズ ミあるいは雑草発生によるクラックが見られたものの、施工時の畦畔形状を維持しており、部分的な補修で漏水が防止できる。

成果の活用面・留意点

  1. 止水シートは材質および土壌特性により漏水防止効果および耐久性が異なるので、条件に応じた選択が必要である。
  2. 地盤強化等でしばしば用いられるセメント系固化剤は強アルカリであり、また破壊後は大きな塊となり産業廃棄物として問題となるが、本固化剤は弱アルカリ、廃棄時は粉状となるので土壌改良資材として農地に戻すことができることなどから、環境にやさしい工法として活用できる。

具体的データ

  1.  

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  2.  

    図1 硬質塩ビシートによる改良断面
  3.  

    図2 マグネシウム系凝固剤による改良断面
  4.  

    図3 土壌固化剤混和による畦畔造成が湛水深の推移に及ぼす影響
所属

国際農研 生産環境部

農業工学研究所

国名

タイ

予算区分
国際プロ〔東北タイ〕
研究課題

タイ東北部における高収益水田輪作システムの開発

研究期間

2001 年度(1998 ~ 2001 年度)

研究担当者

藤森 新作 ( 農業工学研究所 )

小倉 ( 生産環境部 )

椛木 信幸 ( 生産環境部 )

発表論文等

藤森新作 (2000): 東北タイの天水田における基盤整備・水管理技術の検討. 平成12 年度農業土木学会講演会要旨集, pp. 354-355, 2000 年8 月.

日本語PDF

2001_10_A3_ja.pdf1.28 MB