脂肪細胞への分化抑制効果を示す大豆発酵食品中の生理機能性成分
タイのタウジャオ(みそ様発酵食品)、醤油、腐乳、日本の味噌などの大豆発酵食品に含まれる物質1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-β-カルボリン-3-カルボン酸(MTCA)は、脂肪細胞への分化を抑制する。MTCAの含量を定量することにより脂肪細胞への分化抑制活性を推定することができる。
背景・ねらい
アジア各国では多様な伝統的大豆発酵食品が製造されている。それらは原料由来の成分あるいは発酵微生物の代謝産物、加工・熟成過程において生じる多様な化合物を含んでいるため、生理機能性等の有益な特性を有する成分が存在する可能性が高い。成分の生理機能性解明により、従来とは異なった視点での品質向上や高付加価値化も可能となり、大豆の利用拡大や地域経済活性化への効果が期待される。
成果の内容・特徴
- マウス脂肪前駆細胞3T3-L1は各種ホルモン処理により脂肪細胞へ分化する。この脂肪細胞分化に対する影響について、様々な食品抽出物を培地に添加して調べることにより、いくつかの大豆発酵食品の抽出物が抑制効果を示すことがわかる(表1)。
- みそに含まれている脂肪細胞分化抑制因子は1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-β-カルボリン-3-カルボン酸(MTCA)の2種の立体異性体である(図1、2)。
- 効果の見られる大豆発酵食品には共通してMTCAが含まれている(図3)。
- 図4に示す結果、及び、デキサメタゾン(DEX)及びメチルイソブチルキサンチン(MIX)非感受性変異株3T3-F442A細胞において抑制効果が著しく低いことから、MTCAの作用は、インスリンによる糖の取り込みを阻害するのではなく、DEX-MIXによる脂肪細胞分化のイニシエーションを阻害することにより脂肪細胞分化を抑制すると考えられる。
成果の活用面・留意点
生体における作用や過剰摂取による副作用の有無等について、動物実験を通じて確認することが必要である。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 生産利用部
-
食品総合研究所
- 分類
-
研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
-
東南アジアの大豆発酵食品に含まれる生理機能成分
- 研究期間
-
平成12年度(8~12年度)
- 研究担当者
-
中原 和彦 ( 食料利用部 )
新本 洋士 ( 食品総合研究所 )
小堀 真珠子 ( 食品総合研究所 )
亀山 眞由美 ( 食品総合研究所 )
科研費研究者番号: 80353994永田 忠博 ( 食品総合研究所 )
津志田 藤二郎 ( 食品総合研究所 )
- ほか
- 発表論文等
-
中原, 新本, 小堀, 津志田 (1997): 日本動物細胞工学会第7回大会要旨集, p.8.
中原, 新本, 小堀, 亀山, 永田, 津志田 (1998): 日本農芸化学会1998年度大会講演要旨集, p.111.
- 日本語PDF
-
2000_17_A3_ja.pdf848.41 KB