研究成果情報 - タイ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環の1990年から2000年への変化(2005)
東北タイのコンケン県における窒素循環の1990年と2000年の比較を行ったところ、農地における窒素収支は-23 kgN/haの収奪から+10 kgN/haの蓄積に変化した。これは、化学肥料施用量と作物残渣還元量の増加によるものである。一方、家畜糞尿投入量が減少しており、有機物よりも化学肥料により、農業生産が支えられる変化が起きている。
- サイレージ用乳酸菌PS1-3株の実用化とその発酵品質改善効果(2005)
タイ国内のサイレージから分離・選抜した乳酸菌PS1-3株を実用化するため、安価な大量培養法を考案して乾燥菌体顆粒を調製した。また、適正添加量を安価に確保するため、この顆粒からの簡易な生菌数増殖法を考案した。この増殖菌体を添加して調製したサイレージの発酵品質は顕著に改善された。
- アルゼンチンチャコ・フォーモサ地域における冬季の農業副産物給与による育成雌肉牛の増体重改善のための推奨給与法(2005)
各種農業副産物の経済的推奨給与量と1kgの増体重に要する費用は次のようであった。
綿実:1kg/頭/日、US$0.26~0.33。小麦糠:体重の0.4%、US$0.36。 米糠:0.4%、US$0.52。綿実粕:体重の0.8%、US$0.39。生大豆:体重の0.5%、US$0.27~0.54。 - タイ東北部におけるサトウキビサイレージの肉牛用飼料としての利用(2005)
タイ東北部においてサトウキビ(株出し6ヵ月)サイレージの可消化養分総量は49.6%(乾物あたり)であり、本サイレージと本地域の飼料資源を用いることにより、肉牛生産ができる。一般的な暖地型牧草に比べ生産性が高くサイレージ適性に優れることから、肉牛飼養規模の拡大ができる。
- ヒハツモドキの成分ピペリンによる貯蔵穀物害虫の発育阻害(2005)
ヒハツモドキ(Piper retrofractum)など多くのコショウ属植物に含まれるピペリンはコクゾウムシ、ココクゾウムシ及びコクヌストモドキの発育を阻害する。
- マレーシア・サバ州におけるアカシアマンギウムの材質(2005)
マレーシア・サバ州で育林されたアカシアマンギウムの木材の密度と繊維長を調べた結果、成育の良し悪しにかかわらず密度と繊維長は髄から外側に向けて高くまたは長くなり、髄から9cm以上離れた部分で安定することを明らかにした。これらの結果は、直径18cm以上のアカシアマンギウムをより速く、より多く育てることができれば、安定した質の良い木材をより多く得ることができることを示している。
- 生態系機能を利用した持続可能な循環型養殖システムモデル(2005)
持続可能なエビ養殖に果たす底生生物の役割を明らかにするとともに、生態系の生産機能と浄化機能を利用した環境にやさしい循環型養殖システムのモデルを開発した。
- ウシエビと海ぶどうの複合養殖(2005)
汽水産エビ類の低投資で持続的な複合養殖技術の開発を目指し、ウシエビ(Penaeus monodon)と食用緑藻類のひとつである海ぶどう(クビレズタ:Caulerpa lentillifera)の混合飼育を行った。海ぶどうは高い水質浄化能力(溶存栄養塩吸収能力および物理ろ過能力)を持つばかりでなく、エビ鰓への付着生菌数を減少させ、飼育水中の生菌数を安定させ、エビ類に隠れ家を提供した。加えて、海ぶどうは高い成長率を示し、施肥を必要としなかった。
- 隣接カンキツ園への距離20m以内にあるカンキツ新植園での定植直後のミカンキジラミ防除の必要性(2005)
カンキツグリーニング病媒介虫ミカンキジラミ(Diaphorina citri)は、既存カンキツ園との距離が20m以内にある新植園には、定植後半月内で多数侵入し、1ヶ月内に第一世代を出現させ、その後個体群を維持する。既存カンキツ園までの距離が20m以内にある新植園は、定植直後より侵入個体の防除が必要である。
- グリーニング病激発地での無病苗の植付と薬剤施用によるカンキツ栽培延長・増収効果(2005)
カンキツグリーニング病激発地のベトナムのメコンデルタ地帯でのカンキツ品種キングマンダリンの栽培において、本病の媒介虫であるミカンキジラミ(Diaphorina citri)に対する浸透性薬剤と無病苗を利用した果樹園では、これらを利用しなかった果樹園に比べて栽培期間が1~2年間長く、所得も高い。
- 雨の少ないマリ共和国南部の浸透速度の低い圃場では、雨が肥料成分を地表面流出させ、収量低下をまねく(2005)
マリ共和国南部の水の浸透速度の低い圃場での作物の低収量の原因は、少雨でなく、雨による肥料成分の地表面流出である。この低収量は、緩効的施肥で改善される。
- 東北タイ農村における所得増加に対する農民意識と情報入手手段(2004)
家族内を中心とする限定的な情報入手手段への依存が強い農村では、自家内での個別的経営努力に対する評価が高いのに対し、農民グループによる主体的情報収集手段を持つ農村では、技術に対する評価・期待が高い。
- 農家圃場レベルの降雨栽培暦を用いた年次・年内降雨変動の把握と農家の作付け選択の支援(2004)
農家圃場に気象観測装置を設置し、日降雨量と作付け選択を農家レベルと村落レベルの栽培暦に表示し、農家の播種と雨期の開始を把握することができる。西アフリカ・マリの年間雨量800mm 半乾燥地帯では10mm以上の降雨イベントが 7日間以内に2回ある前に播種すると苗立ちが悪くなり、再播種の必要性が高まる。年間雨量1200mm半湿潤地帯では農家は栽培暦を利用して播種を早めることができた。
- 農業社会化服務体系の整備における農民合作組織(2004)
農民合作組織(専業協会、新型合作社)の組織化は、農業産業化経営を補完するものとして取り組まれるようになったものであるが、農業社会化服務体系の中で経済的・技術的において中心的な役割を果たしつつあり、政府収入の乏しい地域で農業技術普及組織が変容する中で、従来の中国の農業の生産流通を大きく変える可能性を有している。
- 東北タイ・天水農業地域における水文立地解析モデルの開発(2004)
東北タイ・コンケン周辺地域を対象に、日雨量を入力データとして小流域の水文過程を再現するシミュレーションモデルを構築した。このモデルに米収量推定モデルを結合することによって、流域内における面的な米収量の推定が可能である。
- インドネシア西ジャワ熱帯高原におけるキャベツ根こぶ病被害抑制のための好適輪作作物(2004)
インドネシア西ジャワのキャベツ根こぶ病激発圃場に8ヶ月間各種作物を導入した場合、レタス、ダイコン、ニンニクは休閑を上回る根こぶ病被害軽減効果を示し、ジャガイモおよびネギは休閑とほぼ同等である。一方、ニンジン、ラッカセイおよびインゲンマメ、トウガラシは休閑の効果を下回る。休閑でも、2作期間により大幅に被害軽減を出来るので、根こぶ病抑制のための自由度の高い短期輪作が構成出来る。
- 東北タイにおける臭素を用いた不飽和帯での土壌水の追跡(2004)
地表に散布した臭素を100mLコアと遠心分離器を用いて回収し、その濃度分布から土壌水を 追跡する方法を東北タイの試験地に適用し、土壌面蒸発量や降水の浸透量を解析した。
- 地表水のラドン濃度測定のための簡便な濃縮装置の開発と応用(2004)
途上国でも設置可能な濃縮装置により、地表水のラドン濃度を容易に測定することができ、地下水の湧出地点の特定などに応用できる。
- ケニア産オオタバコガに対する有用天敵2種の寄生特性(2004)
ケニアのオオタバコガHelicoverpa armigera幼虫に対して、捕食寄生性昆虫であるヤドリバエ2種(Drino zonata, Linnaemya longirostris)が天敵として有望であり、2種共存下で共倒れしないのでこの2種を併用する事が可能である。
- メコンデルタにおける米ヌカ主体豚飼料へのサトウキビ・シロップ添加効果(2004)
米ヌカを主体とした飼料中にサトウキビ・シロップを4%添加することにより、豚の増体、飼料要求率が改善される。また、米ヌカを主体としながらサツマイモ茎葉を乾物当り10%配合した飼料中にサトウキビ・シロップを3%添加することにより、増体、飼料要求率及び粗タンパク質、粗脂肪等の消化率が改善される。