サイレージ用乳酸菌PS1-3株の実用化とその発酵品質改善効果

要約

タイ国内のサイレージから分離・選抜した乳酸菌PS1-3株を実用化するため、安価な大量培養法を考案して乾燥菌体顆粒を調製した。また、適正添加量を安価に確保するため、この顆粒からの簡易な生菌数増殖法を考案した。この増殖菌体を添加して調製したサイレージの発酵品質は顕著に改善された。

背景・ねらい

タイ国では近年、新鮮牛乳および発酵乳の消費が急激に増大し、これは生活水準の向上に伴うものと考えられている。しかし、新鮮牛乳の生産は需要量に追いつかず、その早急な増産はタイ国畜産局の重要な課題と位置付けられ、良質サイレージの通年給与体系を中心とする飼養管理技術の改善が有効な対策の一つとして奨励されている。ところが、タイ国におけるサイレージ調製の歴史は浅く、容易に良質サイレージが調製されているとは言い難い。その原因の一つは良質発酵のための優良乳酸菌の欠落にある。そこで良質サイレージ調製のための優良乳酸菌を検索し、SP1-3株分離・選抜することに成功した。
このような背景から、SP1-3株を実用化するための安価な大量培養用培地を設定するとともに乾燥菌体顆粒を調製し、その安定性を確認する。また、農家現場で乾燥菌体顆粒から安価で安全に菌数増殖する簡便な手法を確立する。

成果の内容・特徴

  1. 乳酸菌SP1-3株の安価な増殖培地として廃糖蜜(2.0%)、米糠(0.5%)、酵母エキス(0.2%)、無機塩類、pH6.5を考案した。培地価格は、通常用いられる乳酸菌用市販培地(MRS培地では1500円/L)よりもはるかに安価で、約23円/Lと計算された。(35°C、24時間培養の菌体収量: 109 cfu/ml)。
  2. スプレードライ法で調製した乾燥菌体顆粒(生菌数:6.08 x 108 cfu/g)は、30°C下に非通気性袋中で28日間保存しても1.68 x 108 cfu/gを維持し、4°Cでは5.83 x 108 cfu/gと非常に安定した生菌数を維持した(表1)。
  3. 市販の5L容プラスチック容器入り飲料水(約120円/本; 内容4.5L)に上記1の培地成分と乾燥菌体顆粒の45mgを懸濁させると、24時間後にはpH3.72まで低下し、生菌数は3.85 x 109 cfu/mlに達した(表2)。この乳酸菌培養液は適正添加量(原物当たり105 cfu/g)を考慮すると4.5トンのサイレージ調製に適応できる。
  4. 上記3の乳酸菌培養液を添加(原物当たり106 cfu/g)して調製したサイレージは、pHが4あるいはそれ以下まで低下し、乳酸含量が増大して揮発性塩基態窒素含量が低下する、などの発酵品質改善効果(n=8)が認められ、特にエリアンサス・サイレージで顕著であった(表3)。
  5. 乳酸菌を添加しても酵母生菌数を抑制することはできず、バンクライフの延長は期待できなかった。特にパンゴラグラス・サイレージで顕著で、開封2日目にはpHが中性付近まで上昇し、好気的変敗が発生した。
  6. サイレージともに乳酸菌の添加による採食嗜好性の向上は認められなかった(ブラーマン去勢牛およびタイ在来去勢牛)。

成果の活用面・留意点

  1. 農家現場で乾燥菌体顆粒から増殖した乳酸菌を用いてサイレージを調製すると確実に良質発酵品が得られ、この手法による4.5トンの良質サイレージ調製のための投資は約225円(約50円/トン)であった。
  2. 本手法で調製されたサイレージの発酵品質は良好であるものの酵母生菌数が多いので、サイロ開封後は速やかに給餌するべきである。

具体的データ

  1.  

    表1
  2.  

    表2
  3.  

    表3
所属

国際農研 畜産草地部

国名

タイ

予算区分
基盤〔サイレージ乳酸菌〕
研究課題

タイ国における良質サイレージ調製のために検索した乳酸菌の実用化試験

研究期間

2005年度(2004~2005年度)

研究担当者

大桃 定洋 ( 畜産草地部 )

西田 武弘 ( 畜産草地部 )

鈴木 知之 ( 農研機構 畜産研究部門 )

科研費研究者番号: 70391175

田中 ( 農研機構 )

発表論文等

Sadahiro Ohmomo, Sunee Nitisinprasert, Damrussiri Kraykaw and Supanit Hiranpradit (2004): Modification of the pouch method to evaluate the ability of lactic acid bacteria strains for making good quality silage in Thailand. JARQ, 38:119-124.

Sadahiro Ohmomo, Masaharu Odai, Pimpaporn Pholsen, Sunee Nitisinprasert, Damrussiri Kraykaw and Supanit Hiranpradit (2004): Effect of a commercial inoculant on fermentation quality of ABP silage in Thailand. JARQ, 38:125-128.

Sadahiro Ohmomo, Sunee Nitisinprasert, Damrussiri Kraykaw, Panthipa Laemkorn, Somjit Tanomwong- wattana and Supanit Hiranpradit (2004): Evaluation of lactic acid bacteria isolates for silage fermentation inoculant in Thailand by using a modified pouch method. JARQ, 38:199-208.

日本語PDF

2005_seikajouhou_A4_ja_Part10.pdf483.56 KB