ベトナムメコンデルタにおける低利用飼料資源を用いた豚の購入飼料代替と肉質の改善効果
養豚用飼料として米糠、破砕米が多給される地域において、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)、ウォータースピナッチ(Ipomoea aquatica)等の低利用飼料資源を給与することにより、増体、飼料要求率には悪影響を与えず、背脂肪厚、背脂肪ヨウ素価等の肉質も改善され、農家の収入増加に役立つ。
背景・ねらい
メコンデルタはベトナム国内有数の稲作地域であり、ここでは稲作を中心としたファーミングシステム(FS)が発達している。養豚はFSを構成する一要素であり、多くは小規模の農家によって営まれ、農家の現金収入源として重要な役割を担っている。しかしながら、農家では養豚用飼料として脂肪を多く含む米糠が多給され、こうした飼料構成は栄養のインバランスと過肥を招きやすい。これらを補うために濃厚飼料等が給与されているが、購入費用が嵩み経営を圧迫していると思われる。そこで、濃厚飼料の一部を低利用飼料資源によって代替して肥育コストを低減する必要がある。さらに脂肪が少なく赤肉の多い食肉ほど消費者に好まれ、高価格で取引される市場へ対応するため、食肉の品質向上も急務とされている。
そこで、低利用飼料資源を用いて購入飼料を代替するとともに、豚肉の品質向上を合わせて行える飼養管理法の開発を行う。
成果の内容・特徴
- 濃厚飼料を低利用飼料資源(ホテイアオイ等)により代替する際には飼料中粗タンパク質(CP)含量が低下し、日増体量が低下し、飼料要求率が上昇する傾向が見られるが、有意な違いはなかった(表1、2)。
- 乾物(DM)、CP、粗脂肪(EE)、可消化エネルギー(DE)の消化率は低利用飼料資源の給与量が増加するに従い低下する傾向が見られた。ホテイアオイを4-6%給与した際のDM、ウォータースピナッチを3-9%給与した際のCP 等は有意に低下した(P<0.05)(表1、2)。
- ホテイアオイを給与した豚では、背脂肪厚、枝肉性状ともに改善され(表3)、ウォータースピナッチを給与したブタでは背脂肪ヨウ素価が改善された(表4)。
- 低利用飼料資源を給与された豚の庭先価格は農家飼料を給与された豚のものより高く、飼料費も低い。よって農家の収益向上に役立つ(表3、4)。
成果の活用面・留意点
- 検討された低利用飼料資源は、いずれもメコンデルタ内で容易に採集できるものであり、生のまま細断せずに給与するため、利用法も簡便である。
- 当該地域の農家が簡便に採集できる飼料資源を用いることで、購入飼料を低減しながら増収が期待できる点で有効である。
- 飼料資源(生草)の給与量が過剰となれば消化率が低下して増体も阻害されるため、その適切な配合割合は、飼料中乾物当り6%が目安となろう。
- サツマイモ茎葉を給与した場合にも、背脂肪厚の改善効果が得られる。
具体的データ
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表1 ホテイアオイの給与が平均日増体重、飼料要求率と消化率に及ぼす影響1,2)
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表2 ウォータースピナッチの給与が平均日増体重、飼料要求率と消化率に及ぼす影響1,2)
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表3 ホテイアオイ級よが背脂肪厚、枝肉性状及び収益性に及ぼす影響1,2)
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表4 ウォータースピナッチ給与が枝肉性状及び収益性に及ぼす影響1,2)
- Affiliation
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国際農研 畜産草地部
- 予算区分
- 国際プロ〔メコンデルタⅡ〕
- 研究課題
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ベトナムメコンデルタ地域における地域飼料資源を用いた豚の飼養管理法の評価と改善
- 研究期間
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2003 年度(2001 ~ 2003 年度)
- 研究担当者
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山崎 正史 ( 畜産草地部 )
MEN Le Thi ( カントー大学 )
高田 良三 ( 農研機構 畜産草地研究所 )
MANH Luu Huu ( カントー大学 )
SON Vo Van ( カントー大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Manh L. H., Dung N. N. X., Men L. T., Takada, R. and Yamasaki, S. (2002): Replacement of Concentrate Protein by Water Spinach(Ipomoea aquatica) on Digestibility, Feed Intake and Live Weight Gain in Growing Pigs. JIRCAS Working Report, 26, 17-20.
- 日本語PDF
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