マレーシア・サバ州におけるアカシアマンギウムの材質
マレーシア・サバ州で育林されたアカシアマンギウムの木材の密度と繊維長を調べた結果、成育の良し悪しにかかわらず密度と繊維長は髄から外側に向けて高くまたは長くなり、髄から9cm以上離れた部分で安定することを明らかにした。これらの結果は、直径18cm以上のアカシアマンギウムをより速く、より多く育てることができれば、安定した質の良い木材をより多く得ることができることを示している。
背景・ねらい
アカシアマンギウム(Acacia mangium)等の早成樹は、これまでチップ化し主に紙パルプ用の原料として利用されてきているが、近年、このアカシアマンギウムを用材として利用する動きがある。しかしながら、建築等の用材として利用することを考えた材質研究はほとんどなされていない。経済的価値の高い用材利用により東南アジア地域の人工林の評価を高めるためにも、木材の材質特性の解明に早急に取り組む必要がある。
成果の内容・特徴
- マレーシア・サバ州において蓄積が多いアカシアマンギウムについて、用材の物理的性質の指標として密度と繊維長に着目し、成長と材質との関係を明らかにすることを主眼に置き、それらの樹幹内変動を解析した。
- アカシアマンギウム(13年生人工林)の密度と繊維長を地上高1.3m部位で調べた結果、材中心部の髄から放射方向に離れるに従い密度は高く、繊維長は長くなり、髄からの距離が9cm以上離れた部位では一定になり、それらの値は安定することが分かった(図1、2)。
- 異なる地上高で密度と繊維長の変動を同様に調べた結果、いずれの地上高においても髄から9cm以上離れた部位ではそれらの値が安定しており、均質な木材となっていることが分かった(図3、4)。
- これは、アカシアマンギウムの細胞径や繊維長などの繊維形態と密度が、共に成長速度に関わりなく一定の樹幹の太さに達した時に安定することを示している。換言すれば、肥大成長が速いほど(アカシアマンギウムの成長に適した土地に植えるほど)、物理的性質が安定した均質な木材が一定期間内に、より多く得られることを示している(図5)。
成果の活用面・留意点
熱帯雨林地域であるマレーシア・サバ州において認められたアカシアマンギウムの材質(密度・繊維長)の樹幹内変動が、熱帯モンスーン地域など異なる気候下に植栽された同樹種についても同様に認められるのか確認する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 林業部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 基盤〔木材利用特性〕
- 研究課題
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東南アジア産木材を有効利用するための利用特性解明
- 研究期間
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2005年度(2003~2005年度)
- 研究担当者
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安部 久 ( 林業部 )
JOSUE James ( サバ森林研究センター )
IMIYABIR Zamrie ( サバ森林研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Abe, H., Itoh, S., Shibata, M., Ogata, K., Kitin, P. B. P., and Fujii, T. (2005): Tree species of timber imported to Japan from Southeast Asia. JIRCAS Working Report Lignocellulose: Materials for the Future from the Tropics 39, 251-253.
安部久・早川雅納・加茂皓一・James Josue・ Zamrie Imiyabirほか(2005):マレーシア・サバ州に植林された13年生Acacia mangiumの材質指標の樹幹垂直方向の変動.第55回日本木材学会大会要旨集,46
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2005_seikajouhou_A4_ja_Part14.pdf578.36 KB