マレーシア半島地区における林業種苗配布区域の設定手法

要約

東南アジア熱帯雨林において林業用種苗の地域間移動に制限が設けられていない。そこで、マレー半島に分布する林業樹種の遺伝的変異のパターンを明らかにし、科学的根拠に基づいた地域間の遺伝的な違いを考慮した林業種苗配布区域を設定する手法を提示する。

背景・ねらい

数年に一度、不定期に一斉開花が生じる東南アジアの湿潤熱帯地域では、一斉開花の起こった地域で大量に種苗が生産される。そのため、通例、開花規模が小さいか開花しなかった地域へ種苗輸送が行われる。しかし、環境の異なる地域間の移動は植栽した種苗の定着や成長に影響を与え、生産性を低下させる恐れがあると共に、地域環境に適応した遺伝変異を攪乱する。そこで、マレーシア半島地区の林業樹種の遺伝的変異データを例示し、地域間で検出した遺伝的な違いに基づいて林業種苗配布区域を設定する必要性を現地研究機関と行政機関に示すと共に、現地研究機関に林業種苗配布区の設定手法を普及する。

成果の内容・特徴

  1. 林業種苗の地域間移動を制限する種苗配布区域を設定する手法を紹介しており、現地研究機関が独自に他の重要な林業樹種について本手法を活用できる(図1)。
  2. マレーシア半島地区において主要な林業樹種である異なるフタバガキ科樹種の地域間の遺伝的な違いから、樹種毎に種苗配布区域を設定することの重要性を示している(図2;文献2, 5)。
  3. 種苗配布区域の必要性を利害関係者が理解し易い構成内容のパンフレットにしている(表1)。そこではマレーシア国内での研究結果を紹介すると共に、先進国で既に設定された種苗配布区域の実例を織り交ぜ重要性が理解されるよう工夫されている。

成果の活用面・留意点

  1. 移動した種苗の環境への不適合がある場合、配布区域の設定によって未然に環境への不適合を防止できる。また、移動された地域に生育する同種への遺伝的な撹乱を防ぐことができる。
  2. カウンターパート機関では本手法を活用し今後種数を増やす予定であり、既に遺伝マーカーの開発に着手している(文献1, 3, 4)。また、行政機関に配布区域を提案する計画を持っている。
  3. 遺伝的多様性の地理的構造は空間内を連続的に変化する。よって州境などを区域の境界に指定するのは利便性の為である。今後、利害関係者間での調整が必要であるため、本例では大まかな領域しか明示していない。
  4. 地域適応を観察するためには、異なる地域への移植試験による長期モニタリングを行うか、多数の遺伝子を網羅的に解析し、自然選択に対して非中立な遺伝子座を検出する必要がある。これらの手法は時間及びコストを膨大に費やすため、本成果では中立的な遺伝マーカーを利用している。
  5. 自然選択に中立的な遺伝マーカーを用いているので、地域適応を反映していない場合がある。地域適応に関わる遺伝的変異データが得られた場合には、種苗配布区域を改善する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 種苗配布区域を提案するための解析の流れ(1〜5)

    図1 種苗配布区域を提案するための解析の流れ(1〜5)

  2. 図2 遺伝構造のパターンが異なる主要樹種の例

    図2 遺伝構造のパターンが異なる主要樹種の例

  3. 表1 普及を促すパンフレットの構成(左)及びその表紙(右)

    表1 普及を促すパンフレットの構成(左)及びその表紙(右)

所属

国際農研 林業領域

分類

行政A

研究プロジェクト

[持続的林業] 東南アジアにおける持続的利用を通じた森林管理・保全技術開発

プログラム名

農村活性化

予算区分

交付金 » 持続的林業

研究期間

2014年度(2011〜2015年度)

研究担当者

尚樹 ( 林業領域 )

科研費研究者番号: 90343798

Muhammad Norwati ( マレーシア森林研究所 )

Lee Soon Leong ( マレーシア森林研究所 )

Hong Ng Chin ( マレーシア森林研究所 )

Lee Hong Tnah ( マレーシア森林研究所 )

Ng Kevin Kit Siong ( マレーシア森林研究所 )

Lee Chai Ting ( マレーシア森林研究所 )

Zakaria Nurul Farhanah ( マレーシア森林研究所 )

津村 義彦 ( 森林総合研究所 )

科研費研究者番号: 20353774

ほか
発表論文等

1.Lee CT et al. (2014) Cons Genet Res 6:389-391.

https://doi.org/10.1007/s12686-013-0100-9

Ohtani M et al. (2013) Mol Ecol 22:2264-2279.

https://doi.org/10.1111/mec.12243

Ohtani M et al. (2012) Cons Genet Res 4:351-354.

https://doi.org/10.1007/s12686-011-9546-9

Ng KKS et al. (2009) Cons Genet Res 1:153-157.

https://doi.org/10.1007/s12686-009-9037-4

Tnah LH et al. (2009) Forest Ecol Manag 258:1918-1923.

https://doi.org/10.1016/j.foreco.2009.07.029

日本語PDF

2014_C07_A3_ja.pdf456.67 KB

2014_C07_A4_ja.pdf368.25 KB

English PDF

2014_C07_A3_en.pdf420.67 KB

2014_C07_A4_en.pdf449.27 KB

ポスターPDF

2014_C07_poster.pdf420.15 KB