研究成果情報 - 東ティモール民主共和国
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 東ティモールにおける農村再構築ガイドライン(2010)
このガイドラインは、独立紛争により疲弊した農業農村の機能回復のための技術・手法に関する実証調査を行い、その成果を基に作成したものである。本ガイドラインは東ティモールの農業普及員研修テキストとして採用されており、今後の農業農村の再構築を効果的に実施することが期待できる。
- 効率的なエタノール生産を目的としたオイルパーム廃棄木からの柔組織分別調製装置(2010)
オイルパーム廃棄木から効率的にエタノールを生産するため、樹液搾汁後の残渣から柔組織を分別する装置を開発する。本システムは、パドルを有するスクリューコンベアとサイクロン方式の分別機により構成され、搾汁残渣より柔組織を純度85%以上、回収率80%以上で分別することができる。
- カビ酵素に代わり得るセルロース系バイオマス分解酵素の開発(2010)
好熱嫌気性細菌由来のセルロソームとβグルコシダーゼの組み合わせで、セルロース分解能を飛躍的に向上できる。本酵素の組み合わせによりアンモニア処理稲わらを91%の高効率で分解でき、世界のバイオマス分解の主流技術であるカビ酵素に代わり得る糖化技術となる。
- 西アフリカサヘル地域におけるMother-Baby手法を用いた肥沃度管理技術の普及可能性の評価(2010)
サヘル地域で普及確度の高い技術は、トウジンビエとササゲの間作、トウジンビエ脱穀残さ、家畜糞尿の利用や化学肥料との併用である。普及可能性は技術の有効性と投入資材の入手しやすさによって決定される。
- 東北タイ農民による節水野菜栽培技術指針(2010)
農民参加型手法により、土壌水分を活用した野菜の節水栽培法の技術指針を策定した。東北タイの乾期でも、土壌水分を活用することで多種野菜を栽培することができる。
- タイ国で収集したエリアンサス属植物遺伝資源の特性評価と分類(2010)
タイ国で収集したエリアンサス属植物の遺伝資源は、形態や開花期、乾物生産等の農業特性において多様な変異を示す。これらは、Erianthus procerusおよびE. arundinaceus の2種を含み、E. arundinaceus についてはさらに3つの類型に分類できる。
- 養殖対象として有望なラオス在来コイ科魚類Hypsibarbus malcolmi の種苗生産および成長(2010)
Hypsibarbus malcolmiは、孵化後2日目(2日令)には親由来の栄養である卵黄の吸収完了と同時に、人為的に培養した小型動物プランクトン(淡水産ワムシBrachionus angularis)を摂餌し、体長10 mm強となる孵化19日後には主な器官が完成し稚魚となる。共食いせず、活発に摂餌することから種苗生産期間の生残率も高く(>90%)、養殖対象種として有望である。
- 東南アジアの集約的養殖汽水エビから薬剤耐性菌を検出(2010)
東南アジアで集約的養殖されたウシエビおよびバナメイエビに付着した薬剤耐性菌の分布実態を調査したところ、いずれにも薬剤耐性菌が検出され、多剤耐性菌もみられる。薬剤耐性菌の分布はエビへの抗生物質の投薬歴を反映していると考えられる。
- 西アフリカサバンナ低湿地における雑草データベースの構築(2010)
アフリカ氾濫原低地のイネの収量向上に効果的な雑草防除体系を確立するための基盤情報として、低湿地に生育する雑草を同定・分類するとともに、さく葉標本と生植物の画像を作成し、データベース「Plants in lowland savanna of West Africa」を構築した。
- 早生樹林を郷土樹種の森へ転換するには小面積皆伐が有効(2010)
明瞭な乾期のある熱帯モンスーン地域において、早生樹林を郷土樹種の森林へと転換する造林手法を検討した。成熟した早生樹林で小面積皆伐を行い、郷土樹種を植える方法が郷土樹種の成長にとって最も有効である。
- 半島マレーシア丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisii の択伐指針(2010)
丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisii稚樹の密度は、母樹からの距離が近いほど、また周囲から突出した尾根的な場所ほど高いことが示され、稚樹の分布が母樹の周囲に限定されることから、択伐施業においては50 m程度の間隔で母樹を保残するべきである。
- 気候変動影響下におけるバングラデシュの長期的な食料安全保障の条件(2010)
コメを主食とするバングラデシュでは、21世紀中の気温上昇が2.5°C程度までならば、現在の単収(収量)成長率で食料供給が保たれるが、それ以上では減少する可能性がある。今後は長期的な視点から、高い収量成長を保つための品種改良や技術開発が重要になる。
- 衛星データを用いたオブジェクト指向分類で農地の区画と栽培状況を把握(2010)
高解像度衛星画像にオブジェクト指向分類を適用して圃場の区画や作物の生育ムラ等を把握するための適切なパラメータ設定方法を考案した。本手法により、パラメータ未調整時に比べて分類精度が向上し、効率的な圃場区画図の作成や生育診断が行える。
- ベトナムメコンデルタの生育不良グアバから分離された同国初記録のネコブセンチュウ(2010)
ベトナムメコンデルタで多発する生育不良から枯死にいたるグアバの根には、根こぶが形成される。そこから得られる卵嚢由来の線虫幼虫のDNA解析結果から、本種はベトナムでは初記録であるネコブセンチュウMeloidogyne enterolobiiと同定される。
- フィリピンでの節水灌漑技術普及における情報ネットワークの役割(2010)
フィリピンの深井戸灌漑水利組合を対象に、節水灌漑技術普及における情報ネットワークの役割を解明した。技術の早期採用者は、外部から技術情報を組合に伝える機能、組合内で情報を広める機能、外部に情報を発信する機能を役割分担をしている。
- 環礁島の貴重な水資源である淡水レンズは一度塩水化すると復元は困難である(2010)
太平洋諸島の環礁島では、淡水レンズ貯留量の約1.8倍の涵養があるにも拘わらず、1998年の干魃に発生した過剰揚水による淡水レンズ塩淡境界の部分上昇が2010年まで続いている。一度塩水化した淡水レンズを自然の涵養で復元することは困難である。
- 植林CDMを活用した農村開発を体系的に取りまとめたマニュアル集(2010)
本マニュアル集は、植林によるクリーン開発メカニズム(以下「植林CDM」)を活用して、所得向上及び環境改善に資する農村開発を実施するためものであり、土壌侵食及び地力劣化の進む南米の低所得地域において活用できる。
- バイオエタノール生産を目的としたオイルパーム廃棄木からの樹液搾汁システムの開発(2009)
オイルパーム廃棄木より効率的に樹液を搾汁するシステムを開発した。本システムは、かつら剥き機(既存機)、シュレッダー(新規開発)、圧搾機(新規開発)により構成され、搾汁率約80%の効率で、1時間に約500 kgのオイルパームトランクを処理することができる。
- モンゴル国の草原における牧民による自立的な井戸改修・維持管理手法の開発(2009)
モンゴル国の草原において、井戸を拠点とした牧民のグループ化を行い、井戸修理チームによる井戸修理・維持管理体制を確立した。あわせて、資金調達の手段として羊を拠出することによるファンドを設立し、これを運営することで、牧民による自立的な井戸改修・維持管理ができる仕組みを開発した。
- 食品中の血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシンの高感度定量法(2009)
東アジア・東南アジアにおける伝統食品等に含まれ、食事後の血糖値の上昇を抑制する1-デオキシノジリマイシンは、高速陰イオン交換クロマトグラフィー・パルス電流検出法(HPAEC-PAD)を用いて、従来法より簡便に定量することができる。