早生樹林を郷土樹種の森へ転換するには小面積皆伐が有効

要約

明瞭な乾期のある熱帯モンスーン地域において、早生樹林を郷土樹種の森林へと転換する造林手法を検討した。成熟した早生樹林で小面積皆伐を行い、郷土樹種を植える方法が郷土樹種の成長にとって最も有効である。

背景・ねらい

人間の活動によって荒廃した土地を森林に復元する試みが各地で行われている。しかし、熱帯地域では元々その土地に生えている樹種(郷土樹種)をいきなり植えても、強光、高温や乾燥によってうまく成長せず失敗することが多い。そこで、最初に早生樹人工林を造成し、その後郷土樹種を植える方法をタイ森林局とともに、東北タイのサケラートで実践している。郷土樹種の成長を促すためには早生樹を伐採して林内を明るくする必要があるが、いつ、どのように早生樹を伐採したらよいのかが課題であった。本研究は明瞭な乾期のある熱帯モンスーン地域において、郷土樹種の成長に最適な光環境を明らかにし、早生樹林を郷土樹種の森林に転換するのに最も有効な施業方法(早生樹の伐採方法)を提示することを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. 成熟したAcacia mangium林(23年生)にランダムに伐採木を選ぶ間伐(胸高断面積あたり1/3および2/3の立木を除去)と小面積皆伐(50 m×60 m)を実施し、タイの郷土樹種3種(Hopea odorata, H. ferrea, Xylia xylocarpa var. kerrii)を2 m×3 mの間隔で植え、生存率と成長を2007年7月から30ヶ月調査した。
  2. 林内の光環境は小面積皆伐区が最も明るく(裸地の60~65%の明るさ)、2/3間伐区(30~38%)、1/3間伐区(26~33%)、無間伐区(23~35%)の順で暗かった(図1)。間伐区では枝葉が伸びて林内が再び暗くなったが、小面積皆伐区と無間伐区では光環境の変化は小さかった(図1)。
  3. 郷土樹種は3種とも90%以上の高い生存率を示した(図2)。裸地では生存率が低くなる(60~80%)ので、高い生存率はA. mangiumの被陰効果によるものと考えられた。
  4. どの樹種も乾期(12月~翌年3月)に成長が停滞し、雨期に伸びる季節的な成長パターンを示した(図3)。どの樹種も小面積皆伐区で最大の成長量を示した。
  5. 様々な光環境での成長調査から、X. xylocarpa var. kerrii は光要求性が高く、H. ferreaは比較的暗い場所でも成長できることがわかった(図4)。これらは各樹種が本来生育している森林での更新特性と深い関わりがあることがわかった。
  6. 早生樹林に小面積皆伐を行い、裸地の60~65%程度の光量にしてから郷土樹種を植える方法が有効である。伐採区の大きさ(一辺の長さ)は早生樹の樹高の2倍程度が適当である。

成果の活用面・留意点

  1. 若いA. mangium(2~5年生)は成長が旺盛なので、間伐をしてもすぐに枝葉が伸び、林内が暗くなる。したがって若いうちに林内に郷土樹種を植えるのは避けるべきである。
  2. H. odorataDipterocarpus alatusは裸地でも成長することが知られている。イネ科の草本(ヤーカ、ヤーポン)がなく、火災の危険性がなければ、これらの樹種を直接植えてもよい。
  3. 小面積皆伐を行うと雑草木やつるが旺盛に繁茂してくるので、年3回程度の下刈りおよびつる切りは必須である。
  4. 成熟した早生樹を効率的に伐採して搬出できる点でも小面積皆伐法は優れている。

具体的データ

  1.  

    図1 各処理区の林内の光環境
    図1 各処理区の林内の光環境
    Sky factorは0から100の値をとり、裸地に対する相対的な明るさを示す。
  2.  

    図2 各処理区における郷土樹種の生存率 (植栽から30ヵ月後)
    図2 各処理区における郷土樹種の生存率(植栽から30ヵ月後)
  3.  

    図3 郷土樹種の樹高成長プロファイル

    図3 郷土樹種の樹高成長プロファイル

     

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  4.  

    図4 光環境と樹高成長量の関係
    図4 光環境と樹高成長量の関係
    X. xylocarpaは暗い場所では伸びないが明るくなると一気に伸びる。H. ferreaは暗い場所でも成長量を維持している。
所属

国際農研 林業領域

分類

研究B

国名

タイ

予算区分
交付金〔郷土樹種育成〕
研究課題

熱帯モンスーン地域における有用郷土樹種育成技術と農林複合経営技術の開発

研究期間

2006~2010年度

研究担当者

酒井 ( 林業領域 )

VISARATANA Thiti ( タイ王国天然資源環境省王室森林局 )

ほか
発表論文等

Sakai et al. (2011) JARQ 45:317-326.

日本語PDF

2010_seikajouhou_A4_ja_Part25.pdf85.56 KB