衛星データを用いたオブジェクト指向分類で農地の区画と栽培状況を把握

要約

高解像度衛星画像にオブジェクト指向分類を適用して圃場の区画や作物の生育ムラ等を把握するための適切なパラメータ設定方法を考案した。本手法により、パラメータ未調整時に比べて分類精度が向上し、効率的な圃場区画図の作成や生育診断が行える。

背景・ねらい

インドネシアでは多様な農業が営まれており、農地や栽培状況を的確に把握する手法として、衛星データを用いたリモートセンシングへの期待は大きい。オブジェクト指向分類は、均質な空間領域(オブジェクト)に分割した後、オブジェクトを単位として分類するため、従来の画素(ピクセル)単位の分類手法で問題となっていた誤分類画素の点在を解消し、目視判読に近い分類結果が得られる手法として注目されているが、領域分割のためのパラメータ設定やクラス特徴量の選択によって分類精度が大きく左右される。本研究では、オブジェクト指向分類に広く利用されているソフトウェアDefiniens Developer(DEFINIENS社)を用いて、インドネシアのサトウキビ・オイルパーム・パイナップル等を栽培するプランテーション地帯を撮影した高解像度衛星QuickBirdのパンシャープン画像から、1) 圃場区画、2) 作物の生育ムラ、3) 播種方法、を把握するための効果的なパラメータの設定方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. 領域分割のパラメータには、オブジェクトのサイズを規定する “scale parameter”及び オブジェクトの均質性を形状情報で規定する “shape”と不定型さで規定する “compactness”があり、探索的な試行によって適切な値を設定する。形状情報を意味する“shape”は色情報(color)と、”compactness”は滑らかさ(smoothness)とそれぞれ相補的な関係にあり、“shape” や”compactness”の値を大きくすれば他方の値は自動的に低下して荷重が調整される(図1)。
  2. ここでは”shape”と”compactness”にそれぞれ0.1、0.5、0.9を与え、これらを組み合わせた9通りの中から最適な組み合わせを決定した後、”scale parameter”を調整する手順を提案する。
  3. 道路が区画境界となっている画像に対しては”shape”の荷重を強めるとともに”compactness”を小さくし、“scale parameter” をやや低くすることで道路の形状と圃場の直線性が反映され、生育ムラの判別を目的とする場合は、”shape””compactness”とも中庸の値を設定することで、不定型なパッチ形状を捉えることができる(図2)。播種方法の違いは畝の有無で判定できるため、”shape”を強調し”compactness”もやや大きくすることで、畝方向を表す縞模様のパターンを含むオブジェクトが生成する。
  4. 上記の手順で決定したパラメータによる領域分割結果に対して、スペクトル特徴量、テクスチャ特徴量、形状特徴量の組み合わせの中から最小クラス間距離が最大となる特徴量を用いて分類すると、パラメータを調整しなかった場合(マルチスペクトルデータ用デフォルト”shape”=0.1, ”compactness”=0.5を採用)に比べて分類精度が3.6~31.9ポイント向上する(表1)。

成果の活用面・留意点

オブジェクト指向分類は対象によって最適なオブジェクトの形状やサイズが異なるため、画像毎に領域分割のパラメータ設定が必要である。本提案手法により、効率的・効果的なパラメータ設定がなされて分類精度が向上し、圃場区画図の作成や植被の違いに基づく生育診断に活用できる。

具体的データ

  1.  

    図1 領域分割用パラメータの模式的関係
    図1 領域分割用パラメータの模式的関係
  2. 表1 領域分割用のパラメータを調整し た場合の分類精度の向上効果※(%)

     
    表1 領域分割用のパラメータを調整し た場合の分類精度の向上効果※(%)
  3.  

    図2 対象画像(左)と選択したパラメータによる領域分割の結果(右)
    図2 対象画像(左)と選択したパラメータによる領域分割の結果(右)。
    (上段:区画が明瞭な圃場群、下段:生育ムラが発生している圃場群)
所属

国際開発領域

分類

研究B

国名

インドネシア

予算区分
交付金[GIS利用技術高度化]
研究課題

局所から地域レベルの農地ファクトデータ整備のための地理情報システム利用技術の高度化

研究期間

2008~2010年度

研究担当者

山本 由紀代 ( 国際開発領域 )

平野 ( 国際開発領域 )

内田 ( 国際開発領域 )

ABIDIN Zainal ( インドネシア農業土地資源研究開発センター )

ほか
発表論文等

山本由紀代・平野聡・内田諭(2009)日本写真測量学会平成21年度秋季学術講演会発表論文集:3-6.

山本由紀代・平野聡・内田諭(2010)システム農学26(別1):37-38.

山本由紀代・平野聡・内田諭(201x)システム農学(印刷中)

日本語PDF

2010_seikajouhou_A4_ja_Part28.pdf483.84 KB