東南アジアの集約的養殖汽水エビから薬剤耐性菌を検出

要約

東南アジアで集約的養殖されたウシエビおよびバナメイエビに付着した薬剤耐性菌の分布実態を調査したところ、いずれにも薬剤耐性菌が検出され、多剤耐性菌もみられる。薬剤耐性菌の分布はエビへの抗生物質の投薬歴を反映していると考えられる。

背景・ねらい

東南アジア各国での汽水産エビ類の養殖は、高密度で効率的な飼育を行う集約的養殖が一般的である。現在、この集約的養殖法では様々な感染性疾病が頻発しており、一部では抗生物質の不適切使用も懸念されている。薬剤の不適切使用に伴う薬剤耐性菌の出現と蔓延は、薬剤の有効性を妨げるなど、養殖業における技術的・経済的な問題となっている。本研究では、汽水産エビ類の安定的な生産のために養殖場のエビ付着細菌群集の薬剤耐性実態を明らかにした。

成果の内容・特徴

  1. 水産養殖で汎用される薬剤であるオキシテトラサイクリン耐性菌の一般細菌数に対する各池の比率の範囲はバナメイエビが0.3~52.1%、ウシエビが0.008~22.3%である(図1)。
  2. オキシテトラサイクリン耐性菌比率は養殖池間で大きく異なる(図1)。これは飼育するエビへの投与薬剤量の差を表していると推定できる。
  3. オキシテトラサイクリン耐性菌株は魚類病原菌であるAeromonas spp.Lactocuccus garvieae等に近縁である。
  4. 代表的な菌株に対して抗生物質の最小発育阻害濃度を測定したところ、いずれの菌株もオキシテトラサイクリンに対して高い耐性を示す(表1)。
  5. 単離されたオキシテトラサイクリン耐性菌株の約8割が多剤耐性を持っている(表2)。
  6. 東南アジアのエビ養殖場ではフルオロキノロン系やキノロン系の抗菌剤を使用することが多いために、多剤耐性の中でナリジクス酸耐性株の比率が高くなった(表2)と推定される。

成果の活用面・留意点

薬剤耐性菌数が非常に低い集約養殖池も存在していることから、養殖法を変えることによって耐性菌を減らすことは可能である。

具体的データ

  1.  

    図1 集約養殖池のバナメイエビ(VA)およびウシエビ(BT)付着
    図1 集約養殖池のバナメイエビ(VA)およびウシエビ(BT)付着
    オキシテトラサイクリン耐性菌の総生菌数に対する割合
    黄色:バナメイエビ飼育池 青色:ウシエビ飼育池
  2. 表1 集約養殖池のエビ類から分離した菌株におけるオキシテトラサイクリン最小発育阻害濃度

     
    表1 集約養殖池のエビ類から分離した菌株におけるオキシテトラサイクリン最小発育阻害濃度
  3. 表2 集約養殖エビ類から分離したオキシテトラサイクリン耐性菌の多剤耐性の状況

     
    表2 集約養殖エビ類から分離したオキシテトラサイクリン耐性菌の多剤耐性の状況
所属

国際農研 水産領域

分類

技術B

国名

タイ

予算区分
交付金[水産養殖] 科研費
研究課題

水産養殖、タイ汽水産エビ養殖における疫学および池環境調査

研究期間

2006~2010 年度

研究担当者

矢野 ( 水産総合研究センター )

里見 正隆 ( 水産総合研究センター )

浜野 かおる ( 水産領域 )

筒井 ( 水産領域 )

科研費研究者番号: 80425529

Aue-umneoy Dusit ( キングモンクット工科大学ラカバン )

発表論文等

Yano et al. (2011) Journal of Applied Microbiology, 110(3):713-722.

日本語PDF

2010_seikajouhou_A4_ja_Part22.pdf37.15 KB