東南アジアのマイコプラズマ様病原体のDNA検出法の開発
東南アジアに発生しているゴマフィロディー、サトウキビ白葉病、イネ黄萎病の病原体であるマイコプラズマ様微生物(MLO)のDNAプローブを作成した。これらを用いることにより、迅速・確実にMLOを検出することが可能になった。
背景・ねらい
タイ、ミャンマーで発生しているゴマフィロディー(図1)やタイ東北部のサトウキビ白葉病(図2)は、地域の農業に壊滅的な被害を与えている。イネ黄萎病(図3)はアジア各地に発生している。これらの病気は、マイコプラズマ様微生物(MLO)により引き起こされている。従来、これらの病原体を検出することは非常に困難であった。本研究では、MLOを迅速・確実に検出するため、DNAプローブを用いた検出法を開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
- イネ黄萎病罹病植物から全DNAを抽出後、Bisbenzimide-CsCl 平衡密度勾配遠心にかけ、病原MLOのDNAを宿主植物のDNAから分離した。それを制限酵素 Hind Ⅲで分解後、プラスミド Bluescript に挿入し、大腸菌 NM522に導入した。得られたクローンのうち、罹病植物のDNAと反応し、健全植物のDNAとは反応しないものを選抜した。それらの挿入断片にパーオキシダーゼを標識して、DNAプローブとした。
- MLOの染色体に由来するDNAプローブと染色体外DNAに由来するDNAプローブがとれた。作成したDNAプローブを用いることにより、MLO感染イネから、迅速・確実・高感度にMLOを検出できた(図4)。また、MLO媒介昆虫(ツマグロヨコバイ)1匹からでも、MLOを検出する感度を有していた。
- サトウキビ白葉病MLOとゴマフィロディーMLOにおいても、染色体由来・染色体外DNA由来のDNAプローブを作成することができた。
成果の活用面・留意点
これらのDNAプローブを用い、タイにおいても各病原MLOを検出することができた。本方法の適用により、ゴマフィロディー、サトウキビ白葉病、イネ黄萎病の病原MLOの媒介昆虫や中間宿主植物の解明、抵抗性品種の選抜等が容易になると思われる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源部
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コンケン大学
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ(マイコプラズマ)
- 研究課題
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東南アジアにおけるマイコプラズマ様病原体による病害の実態の解明と防除法の確立
- 研究期間
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1993年度(1991~1993年度)
- 研究担当者
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中島 一雄 ( 生物資源部 )
林 隆治 ( 生物資源部 )
CHALEEPROM Witcha ( コンケン大学 )
SIRITHORN Pisan ( コンケン大学 )
WONGKAEW Porntip ( コンケン大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Nakashima, K. and N. Murata (1993) Destructive plant diseases caused by mycoplasmalike organisms in Asia. Outlook on Agri-culture, 22, 53-58.
- 日本語PDF
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1993_03_A3_ja.pdf891.63 KB