食品中の血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシンの高感度定量法

要約

東アジア・東南アジアにおける伝統食品等に含まれ、食事後の血糖値の上昇を抑制する1-デオキシノジリマイシンは、高速陰イオン交換クロマトグラフィー・パルス電流検出法(HPAEC-PAD)を用いて、従来法より簡便に定量することができる。

背景・ねらい

1-デオキシノジリマイシン(1-deoxynojirimycin; DNJ)は、消化管において糖質分解酵素であるグルコシダーゼに対する阻害剤として働き、食事後の血糖値の上昇を抑制する。DNJは桑葉や中国伝統食品である発酵食品等にも含まれ、初期糖尿病の抑制に有効と推定されている。桑葉を用いた食品など、DNJを含む食品は東アジア・東南アジアにおいて伝統的に生産・消費されており、そのDNJ含量を明記することは、高付加価値化を図るうえで重要である。しかし、従来法の複雑なクロマトグラムからDNJピークの確認は困難である。そのため、より簡便な手法が求められている。

成果の内容・特徴

  1. DNJは、アルカリ性移動相において、高交換容量の陰イオン交換カラムにより、塩基性官能基を持つ弱酸として、他の糖質と効率よく分離される。また、パルス電流検出により、糖質のみを選択的かつ高感度で検出するので、共存する糖質が問題となる加工食品での分析においても、DNJが分離でき、妨害ピークが少ない(図1)。また、分析のための試料処理が水抽出のみで簡便である。
  2. DNJ量5 ngから検出・定量が可能で高感度であり、高濃度まで優れた定量性を示す(図2)。
  3. 原理的に他糖質類の共存の影響が少ないことから、桑葉に含まれるDNJだけではなく、他糖質類の共存が問題となる、伝統食品中のDNJ量を測定することができる。溶出されたDNJは質量分析によって確認することもできる。
  4. 中国、タイ及び日本の市販食品のDNJ量を本手法により測定したところ、表1の結果が得られた。

成果の活用面・留意点

  1. 試料に標準品を添加した試料を分析することで、DNJの溶出位置を確認できる。
  2. DNJは加熱処理に対して安定である。このため、DNJを含有する食品を製造する際、加熱がその機能性に影響しないことが示唆される。
  3. 発酵食品中に含まれるDNJ含有量も、分析が十分可能であると推定される。

具体的データ

  1.  

    図1 DNJ標品・タイ産桑茶ティーバックの HPAEC-PADクロマトグラム
    図1 DNJ標品・タイ産桑茶ティーバックのHPAEC-PADクロマトグラム
  2.  

    図2 DNJの検量線
    図2 DNJの検量線
  3. 表1 市販桑葉加工品における1-デオキシノジリマイシン含量の測定結果

    表1 市販桑葉加工品における1-デオキシノジリマイシン含量の測定結果
所属

国際農研 利用加工領域

分類

研究B

国名

タイ

中国

予算区分
交付金〔高付加価値化〕
研究課題

アジア農産物の高付加価値化

研究期間

2009年度(2006~2010年度)

研究担当者

吉橋 ( 利用加工領域 )

Huong Do Thi Thu ( カセサート大学食品研究所 )

TUNGTRAKUL Patcharee ( カセサート大学食品研究所 )

BOONBUMRUNG Sumitra ( カセサート大学食品研究所 )

八巻 幸二 ( 食品総合研究所 )

ほか
発表論文等

Yoshihashi et al. (2010) J. Food Sci.

https://doi.org/10.1111/j.1750-3841.2010.01528.x

日本語PDF

2009_seikajouhou_A4_ja_Part10.pdf89.48 KB