研究成果情報 - タイ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- マングローブ汽水域の浄化機能の解明(2003)
エビ養殖池とマングローブ植林池との間で水を循環させるシステムは、底泥中のリンの増加を抑え、環境負荷を低減する。
- 石垣島宮良川における懸濁物質および窒素とリンの推定流出量(2003)
石垣島宮良川から1年間に海洋に流出する懸濁物質、窒素、リンは、それぞれ、1882t、68t、7t と推定される。土壌浸食深は畑地当たり0.2mm、窒素とリンは施肥量と家畜排泄量合量のそれぞれ25%と6%である。
- 肥効調節型肥料の施用によりサトウキビの窒素施肥量を4割節減できる(2003)
サトウキビの春植え栽培において、慣行栽培の追肥窒素分を肥効調節型肥料で施用すると、窒素施肥量を4割節減しても可製糖量は減収しない。また、肥料の利用効率が高くなり、未利用分が慣行より著しく少なくなる。
- 衛星データ等の地理情報による西ジャワ州傾斜畑地域土壌侵食危険度図の作成(2002)
インドネシア西ジャワ州にある傾斜面上の畑では、降雨による土壌侵食の危険性があるが、危険度の高い地域の分布がリモートセンシングデータを用いて解析され、地理情報として示すことができる。ここでは、雨季前の9月に豪雨が降る年があるが、この時期に裸地状態としないことにより、土砂が大量に流出することを抑制することができる。
- 中国山東省における水資源変化が食糧需給へ及ぼす影響(2002)
中国山東省では水資源の変動が穀物生産変動の大きな要因となっており、地域の食糧需給への影響が大きい。水供給量の制約が将来の食糧需給に大きな供給制約を生じさせる可能性を示している。
- メコンデルタに適した小型籾乾燥機の開発(2002)
本機は、ベトナム・メコンデルタの雨期に適した個別農家向けの稲籾乾燥機である。構造が簡単なので取り扱いが容易で、2tの湿籾(水分25%)を約13時間で乾燥することができる。また、胴割れ率を低く抑え、乾燥開始約5時間後の混合・攪拌操作により水分ムラを少なくすることができる。
- 西ジャワ高原野菜地帯における1年3作の短期輪作によるキャベツ根こぶ病の抑制(2002)
西ジャワ高原野菜地帯の主要作物であるキャベツに多発する根こぶ病被害は、ニンジン、ジャガイモを組み込んだ1年3作の輪作により、初期生育が順調に保たれ、実用的に被害の無い程度の収量が得られるまで制御することができる。この効果は作付け順序を変えても変わらず、また1作期の休閑も有効である。
- 中国紅壌丘陵地帯水稲二期作地域におけるアンモニア揮散とその制御(2002)
中国湖南省祁陽県においては、水田からのアンモニア揮散ポテンシャルが極めて高い。肥効調節型肥料の適切な利用により、アンモニア揮散による肥料成分の損失と環境負荷を大幅に軽減し、収量の維持向上と減肥の両立が可能となる。
- ブラジルの亜熱帯サバンナ(セラード)に生育する熱帯イネ科牧草の窒素利用特性(2002)
ブラジル亜熱帯サバンナ(セラード)で主に栽培されているイネ科牧草のBrachiaria decumbens,B. brizanthaは窒素反応性が高い。またB. humidicolaは根の窒素吸収能力が高いため、低窒素環境での栽培に適している。
- ベトナム・カントー省における農業開発に伴う窒素フローの変動予測(2002)
メコンデルタのカントー省において作成された農業開発計画を基に、農業生産に関する窒素フローを推定すると、2010年には家畜糞尿として発生する窒素が59kgN/ha/yearと1999年の3倍以上に増加する。
- ブラジルダイズの干ばつ耐性特性(2002)
開花後1ヶ月間の雨よけ処理条件下で高い収量を示す干ばつ耐性の強いブラジルダイズ品種は、雨よけ処理期間における相対生長率を高く維持できる特性を有しており、それは葉面積比ではなく、純同化率を高く維持することによる。
- 熱帯対応型サイレージ乳酸菌を評価するための実験モデル(2002)
長さ約2cmに切断し、乾燥した後に高圧蒸気滅菌した熱帯牧草ネピアグラス(水分および糖含量を調整)の一定量をプラスチック袋に入れ、酵母およびコリ型細菌と評価すべき乳酸菌とを接種してから密封して培養する簡易なサイレージ醗酵実験モデル(改良パウチ法)は、タイでのサイレージ調製用乳酸菌を評価するための手法として有効である。
- 香り米における香り成分の生成と水ストレスによる変動(2002)
タイの香り米(Khao Dawk Mali 105)に含まれる香り成分である2-アセチル-1-ピロリンは、水分ストレス応答物質であるアミノ酸プロリンから生成している。圃場試験において、開花後の水ストレスにより香り成分を増加させることが可能である。
- タイ土着食用植物の抗変異原性と活性成分(2002)
タイ土着食用植物ミクロメラム・ミヌタム、モクコチョウ、ハマネナシカズラ、インドセンダン及びリステア・ペティオラータは強い抗変異原性を示す。ミクロメラム及びモクコチョウに含まれる抗変異原活性成分はそれぞれ,マハニン及びバイカレインである。両物質は他に抗菌活性、がん細胞増殖抑制効果等を示す。
- 熱帯降雨林はゴムプランテーションに比べて優れた水保全機能を持つ(2002)
半島マレイシア・ブキタレ水文試験地内の熱帯降雨林は隣接するゴムプランテーションより土層が厚く、土壌の孔隙率及び透水性が高いため、雨水を一時的に地中に貯留し、洪水流を軽減する機能(水保全機能)に優れている。
- ベトナム・メコンデルタにおけるオニテナガエビの稚エビ培養技術の確立と技術移転(2002)
グリーンウオータシステム(植物プランクトン餌料)はオニテナガエビの安定種苗生産技術を可能にする効率的な稚エビ培養技術であり、飼育水を交換する必要がないので、従来システムより生産コストを低く抑えることができる。このシステムの技術移転により、2002年のベトナムの稚エビ生産量は1990年の50倍の5,000万尾に拡大した。
- エビ類の成熟度判定技術の開発(2002)
エビ類を用い、卵黄タンパク質の全アミノ酸配列、プロセシング経路および成熟過程に伴う遺伝子発現変化にもとづいて開発したエビ類の成熟度判定法により、親エビを選定できる。
- フィリピンにおける養殖ハタ大量死はウイルス性神経壊死症に因る(2002)
原因不明であった養殖ハタの大量死は、フィリピンで初めてのウイルス性神経壊死症(VNN)の感染発病に因るものであり、本症の確定診断は病原病理学的に可能である。
- 自然立地的要因に基づく東北タイ・コンケン周辺地域の農業適地評価と土地利用現況の比較(2001)
東北タイ・コンケン周辺地域を対象に、土壌図・地形図等の主題図を用いて自然立地的要因に基づく農業適地評価を行い、衛星データから判別される土地利用と比較することによって、土地利用の実態や適合性を面的・定量的に把握できる。
- 東北タイ砂質土壌での硬盤層破壊による土壌保全と作物根域拡大(2001)
東北タイの砂質土壌畑作地帯における主要作物のサトウキビの圃場では、大型トラクタによる頻繁な耕起によって一般に硬盤層が形成される。この硬盤層の一部をサブソイル耕で破壊すると、雨期中の透水性が向上するため土壌流亡が軽減され、土壌深部への根系の発達が促される。