西ジャワ高原野菜地帯における1年3作の短期輪作によるキャベツ根こぶ病の抑制
西ジャワ高原野菜地帯の主要作物であるキャベツに多発する根こぶ病被害は、ニンジン、ジャガイモを組み込んだ1年3作の輪作により、初期生育が順調に保たれ、実用的に被害の無い程度の収量が得られるまで制御することができる。この効果は作付け順序を変えても変わらず、また1作期の休閑も有効である。
背景・ねらい
インドネシアでは、農村所得向上を求め、相対的優位性のある高原地帯で野菜生産が集中的に行われている。なかでも根こぶ病の寄主となるアブラナ科野菜が集中的に作付けられ、キャベツ、ハクサイ、チンゲンサイ、カイラン等多くのアブラナ科野菜で根こぶ病が激発している。また、日本で効果の上がっているフルスルファミド粉剤はコスト面で利用が困難であり、また雨が多く急斜面畑が多い熱帯高原では、農薬に頼らない環境保全的な方法が必要である。そこで、農薬を使わない場合の最も基本的方法である輪作をとりあげ、根こぶ病抑制の効果はもちろん、出来るだけ現状に即した作物組み合わせと、短い輪作年限により、実際の農業に取り込みやすい輪作を明らかにする。
成果の内容・特徴
- キャベツの根こぶ病被害は2作目より明確に生じた。西ジャワ高原地帯で根こぶ病が広く発生し、根こぶ病菌が広範に分布している現状から、2作目から被害が発生する状況は多いと考えられる(図1、表1)。
- インドネシアの高原野菜として作付面積の多いキャベツ、ニンジン、ジャガイモを組み込んだ1年3作の輪作により、著しくキャベツの根こぶ病を抑制できる。また、この輪作はどの順序でも根こぶ病を抑制できる(表2)。
- 1作期をプラスティクマルチフィルムで覆って休閑した場合も根こぶ病被害を抑制できる(表1)。
- 輪作、休閑で根こぶ病被害を抑制した場合でも、収穫期には根部に根こぶ病被害が見られ、連作と大差の無い場合も見られた。しかし、生育の前半の生育の程度を示す最大外葉の大きさは、常に大きく、初期生育が根こぶ病被害から回避されたこと、また、後半の生育においても、根こぶ病被害が緩やかに進行して、ほぼ実用的に被害のない収量が得られたと考えられる(表1、2)。
- この輪作体系では、ニンジンに対し、ネコブセンチュウ被害、ジャガイモに対し青がれ病などの被害が見られるが、それぞれの連作よりは被害が少なく、収量も多い傾向にあり、組み合わせ全作物でも、概ね良好な組み合わせといえる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 輪作区にも根こぶ病が残存しており、長期に安定な効果は更に検討を必要とする。また、輪作効果は初期の被害回避が重要であり、効果を安定させるためには、初期生育を良好に経過させるよう注意する。
- 雑草放任後で根こぶ病が著しい例が有ること、本研究結果は除草を十分に行った条件で行っていることから、雑草管理には注意をする。また、雑草管理と輪作効果は今後検討を要する。
- 1年間の休閑によっても著しい根こぶ病被害がでる強酸性土壌が確認されているので、酸度矯正等、激発条件を回避する条件を整えた上で輪作を行う。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境部
- 予算区分
- 国際プロ〔地域農業〕
- 研究課題
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高原地帯における現行野菜生産技術の評価と環境保全的生産技術の開発
- 研究期間
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2002年度(2000~2002年度)
- 研究担当者
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山田 盾 ( 生産環境部 )
AZIRIN Aziz ( インドネシア野菜研究所 )
- ほか
- 日本語PDF
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2002_08_A3_ja.pdf1018.51 KB
- English PDF
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2002_08_A4_en.pdf71.83 KB