ブラジルダイズの干ばつ耐性特性
開花後1ヶ月間の雨よけ処理条件下で高い収量を示す干ばつ耐性の強いブラジルダイズ品種は、雨よけ処理期間における相対生長率を高く維持できる特性を有しており、それは葉面積比ではなく、純同化率を高く維持することによる。
背景・ねらい
干ばつは南米での大豆生産の最も大きな制限要因のひとつであり、とくに生殖生長期の干ばつによる収量低下が著しい。ブラジル南部で主に栽培されるダイズ品種を用いて、生殖生長期の干ばつを、雨よけ処理によって人工的に作り、品種の干ばつ耐性を収量を指標として評価する。さらに、干ばつ耐性に関わる生理・形態学的特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 開花後1ヶ月間、雨よけ装置(rain out shelter)を用いて人工的に干ばつ条件を作ることによって、収量を指標としたブラジルダイズ10品種の干ばつ耐性を2年間にわたり評価したところ、収量の品種間順位は年次間変動が小さく、安定していた(相関係数r=0.78、1%有意、図1)。また、品種間順位は、ポテンシャル収量を表すと考えられる潅漑区での順位と異なることから、干ばつ耐性の強さそのものを検出できる。
- 収量から見て、供試したブラジルダイズ10品種のうち、BRS183は干ばつ耐性の強い品種、BR-16、Embrapa59、BRS134は干ばつ耐性の弱い品種である(表1)。
- 収量を指標とした干ばつ耐性は、開花後1ヶ月間の干ばつ期間の相対生長率とよく対応している(表1、表2)。
- 干ばつ期間の葉面積比に品種間差は見られず、相対生長率の違いは純同化率の違いを反映している(表2)。
- 干ばつ耐性の強い品種BRS183は、干ばつ期間における根重が他の品種と比べて大きい傾向があり、干ばつ耐性の弱い品種BR-16、Embrapa59、BRS134は、他の品種と比べて小さい傾向があった(図2)。
成果の活用面・留意点
- 干ばつ耐性の強い品種の選抜に、開花後1ヶ月間の干ばつ条件下での相対生長率を指標として用いることができる。
- 収量を指標とした干ばつ耐性は、他の時期に起こる干ばつ時の相対生長率とは必ずしも関係しない可能性があることに留意する。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ 〔南米大豆〕
- 研究課題
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大豆の干ばつ耐性検定法の開発
- 研究期間
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2002年度 (1999~2002年度)
- 研究担当者
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大矢 徹治 ( 生産環境部 )
Nepomuceno Alexandre ( EMBRAPA大豆研 )
NEUMAIER Norman ( EMBRAPA大豆研 )
FARIAS José Renato Bouças ( EMBRAPA大豆研 )
- ほか
- 発表論文等
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Oya, T., Nepomuceno, A. L., Neumaier, N. and Farias, J. R. B. (2002): Agronomic and physiological responses of Brazilian soybean cultivars to drought stress during the period of early reproductive stage. Jpn. J. Crop Sci., 71 (Extra issue 2), 234-235.
- 日本語PDF
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