ブラジルの草地およびダイズ畑における窒素収支
ブラジルのセラードにおける連続草地と連続ダイズ畑での窒素収支を定量化する。連続ダイズ畑では窒素肥料を施用しないにもかかわらず下層に硝酸態窒素が蓄積する。両農地において窒素収支はマイナスになり、その度合は連続ダイズ畑の方が連続草地より大きい。
背景・ねらい
ブラジルの湿潤地域の草地では土壌の肥沃度が低いにもかかわらず肥料等の資材投入量が少ないために資源収奪型な土地利用の状態になっており、今後の安定持続的な生産力の維持に問題が生じている。土壌生産力を持続的に維持する土壌管理技術の確立が望まれており、ダイズによる空中窒素の固定を活用した農牧輪換システムの導入により土壌の肥沃度を維持させる技術を確立する必要性に迫られている。ここでは、連続草地および連続ダイズ畑の窒素収支を明らかにする。
成果の内容・特徴
- イネ科牧草による肉牛の放牧とダイズ作を組み合わせた農牧輪換システムの圃場試験がブラジルの肉牛研究センターで1993年から継続している。そこの連続ダイズ畑と連続草地における窒素収支を比較検討した(表1)。
- 連続草地では下層に硝酸態窒素の蓄積が認められないが、連続ダイズ畑では下層における硝酸態窒素の蓄積が認められる(図1)。
- 連続ダイズ畑では収穫による持ち出しが空中窒素固定量より多く、しかも溶脱による消失もあるので、窒素収支は大きな負の値となり、土壌窒素が収奪される(図2)。
- 連続草地では肉牛による持ち出し量は少ないが、家畜排泄物からのアンモニア揮散と脱窒による消失が主体で、多少の窒素固定量があるものの、全体の収支はやはり負の値となる(図2)。
- 窒素肥沃度を持続的に維持するためには、草地、ダイズ畑ともに窒素のインプットが必要となる。
成果の活用面・留意点
草地のみならずダイズ畑においても、窒素肥沃度を維持するためには窒素施肥が必要であることが、長期連用試験圃場の結果から示されたが、現象の一般化のためには異なる地域での調査研究を実施する必要がある。
具体的データ
- 所属
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国際農研 環境資源部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際研究〔農牧輪換システム〕
- 研究課題
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熱帯湿潤畑における物質循環機能を活用した土壌管理技術の確立
- 研究期間
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平成12年度(9~12年度)
- 研究担当者
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神田 健一 ( 環境資源部 )
高橋 幹 ( 農業研究センター )
MIRANDA Cesar. H. B. ( ブラジル農牧研究公社 )
- ほか
- 発表論文等
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Kanda, K. (2000) Nitrogen cycling in agropastoral system in the Cerrados. JIRCAS Newsletter No. 24:3.
Kanda, K., Takahashi, M. and C.H.B. Miranda. (2001) Nitrogen flow in agropastoral system, Brazil. JIRCAS Journal, 9: 23-31.
- 日本語PDF
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2000_05_A3_ja.pdf547.04 KB