ブラジルサバンナの低湿地に適した牧草と草地造成方法
ブラジルサバンナに広がる低湿地の牧草地造成には、湛水中の生存が可能な Brachiaria humidicola が最も適している。B. humidicola草地を播種造成する場合は雨季後半に低湿地の冠水が退いたのちトラクターによる作業が可能になる5月頃の播種が適している。
背景・ねらい
ブラジルサバンナ(総面積2 億ha)には約1,200 万ha の低湿地が分布しており、その農業利用が重要な課題である。サンパウロ市北西約300km のグアタパラ日系移住地内の低湿地 1,200ha を対象として、放牧草地用適草種の選定及びその造成法を明らかにした。
成果の内容・特徴
試験対象の低湿地に、Brachiaria decumbens(品種Basilisk)、B.brizantha(品種Marandu)、B.dictyoneura (市販系統)、B.humidicola(品種Humidicola)、Andropogon gayanus(品種Baite)、Setaria anceps(市販系統)、Paspalum atratum(品種BRA-9610)を供試し、1998 年から2001 年にかけて播種及び移植により適草種及び造成法の検討を行った。試験地があるサンパウロ州の気候は10 月から4 月が高温多雨となる亜熱帯性気候であり(図1)、低湿地の土壌は腐植質グライ土でpH が低く、有機物含有率が高い(表1)。
- 移植による造成では、全草種で定着が認められるものの翌年まで生存可能な草種はB.humidicola とP.atratum である。種子及び苗(栄養系)の入手のしやすさを考慮した場合、B.humidicola の導入が適している(表2)。
- 播種による造成では、農耕地の播種適期である雨季前半(10 ~ 1 月)に播種した場合、当初の発芽定着はA. gayanus で良好であるが、2 年後にはB.humidicola が高密度の群落を形成する。しかし、冠水期間が長い年には幼苗が湿害により枯死し、多くの草種で良好な発芽定着は得られない(表3)。
- B.humidicola は雨季終了時の5 月播種では、発芽、定着とも良好である。低湿地での播種は、雨季後半に冠水が終了し、トラクターが低湿地に入れるようになる5 月頃が適しており、引き続く乾季に土壌が乾燥する前に発芽個体の定着を図ることが必要である(表3)
成果の活用面・留意点
- サンパウロ州グアタパラ地域と条件が同じ地域の低湿地の草地化技術として適用できる。
- B.humidicola の種子には休眠を有するものがあり、種子の中には1 ~ 2 年遅れて発芽するものがある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 畜産草地部
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農研機構 畜産草地研究所
全国拓殖農業協同組合グアタパラ農業協同組合連合会グアタパラ農業等研修センター
農研機構 東北農業研究センター
- 予算区分
- 国際プロ〔農牧輪換〕
- 研究課題
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農牧輪換システムにおける熱帯牧草の特性
- 研究期間
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2001 年度(1997 ~ 2001 年度)
- 研究担当者
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菅野 勉 ( 農研機構 畜産草地研究所 )
川上 隆治 ( 全国拓殖農業協同組合グアタパラ農業協同組合連合会グアタパラ農業等研修センター )
吉村 義則 ( 農研機構 畜産草地研究所 )
魚住 順 ( 農研機構 東北農業研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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(準備中)
- 日本語PDF
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2001_14_A3_ja.pdf884.21 KB
- English PDF
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2001_11_A4_en.pdf106.74 KB