アーバスキュラー菌根菌がブラジルサバンナにおける暖地型イネ科牧草の乾物生産量とリン吸収量に及ぼす影響

要約

ブラジルサバンナに生育する暖地型イネ科牧草乾物生産リン吸収は、土着のアーバスキュラー菌根菌(AM菌)によって促進され、その効果は、土壌pHが低いほど大きい。また、牧草の中では、Brachiaria brizanthaB.decumbensのAM菌依存度が高い。

背景・ねらい

   ブラジルサバンナの土壌はラトソルや石英砂土壌であり、肥沃度がきわめて低い。このような低肥沃土壌での植物の栽培にはアーバスキュラー菌根菌(以下、AM 菌)の存在が重要であると言われている。
   しかし、ブラジルサバンナにおけるAM 菌に関する基礎的知見は少ない。そこで本研究では、ブラジルサバンナで主に利用されている4 種の暖地型イネ科牧草を供試し、その乾物生産及びリン吸収に及ぼす土着のAM 菌の役割と土壌pH の影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. ブラジル・マットグロッソドスル州のブラジル農牧研究公社・肉牛研究センターの草地土壌から土着AM 菌の胞子懸濁液を作成した。同時に、未耕地土壌(暗赤色ラトソル)をメチルブロミドで殺菌し、12.5mgP kg-1 の過リン酸石灰を加えるとともに、炭酸カルシウムと塩化カルシウムで土壌pH を4、5、6 に調整し、各ポット1.8kg の土壌を充填した。ポット土壌にAM 菌を接種し、Brachiaria brizanthaB.decumbensB.humidicola 及びPanicum maximum を移植し、70 日間のポット試験を行った(表1)。
  2. ポット当たりの乾物重とリン吸収量は、いずれの草種においてもAM 菌接種によって増加する(図1、表2)。
  3. 土壌pH 間で比較すると、AM 菌依存度(AM 菌依存度=(1 -(非接種区リン吸収量/ 接種区リン吸収量))× 100)は、pH4、5、6 の処理区でそれぞれ89%、68%、59%で、いずれの草種でもpH が低いほどAM 菌依存度が高い(表3)。
  4. AM 菌依存度は草種間に違いが認められる。AM 菌非接種のB.brizantha と、B.decumbens のリン吸収量は他の2 草種より低いものの、AM 菌接種により草種間にリン吸収量の有意な差が認められない。このことは、AM 菌依存度は、B.brizanthaB.decumbens では、他の2 草種よりも顕著であることを示している(表2、表3)。

成果の活用面・留意点

  1. ブラジルサバンナにおける牧草種の養分吸収を理解するための基礎的知見となる。
  2. AM 菌接種の影響は、異なる接種源を用いた場合、異なる反応が予想される。

具体的データ

  1.  

    表1 実験終了時のポット土壌中リン含有量
  2.  

    図1 供試草種の乾物生産量に及ぼすAM菌摂取ならびに土壌pHの影響
  3.  

    表2  AM菌接種が供試草種のリン吸収量に及ぼす影響
  4.  

    表3 各pH処理区におけるリン吸収のAM菌依存度
所属

国際農研 畜産草地部

ブラジル農牧研究公社

分類

研究

国名

ブラジル

予算区分
国際プロ〔農牧輪換〕
研究課題

農牧輪換システムにおける熱帯牧草の特性

研究期間

2001 年度(1997 ~ 2001 年度)

研究担当者

菅野 ( 農研機構 畜産草地研究所 )

斎藤 雅典 ( 農研機構 畜産草地研究所 )

安藤 康雄 ( 畜産草地部 )

中村 卓司 ( 生産環境部 )

MACEDO Manuel. C. M. ( ブラジル農牧研究公社 )

ほか
発表論文等

Kanno,T., Borges, M.J., Saito, M., Macedo, M.C.M., Ando, Y., Nakamura, T., and Miranda, C.B.H. (2001): Micorrizas arbusculares nativas: producao de material seca e absorcao de P em gramineas tropicais no cerrado. Proceedings of the 28th Congress of Brazilian Soil Science Society. p80, Londrina, Brazil.

日本語PDF

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English PDF

2001_10_A4_en.pdf90.78 KB