ブラジル東北セラードのダイズ栽培におけるイオウの栄養診断基準

国名
ブラジル
要約

ダイズにおけるイオウ(S)必要量を収量および子実蛋白質組成に着目して調査したところ、葉あるいは子実のS含有率が1 g/kg未満の場合は非常に不足、 1 g/kg~2 g/kgの場合は不足、 2 g/kg~2.3 g/kgの場合は低く、2.3 g/kg以上の場合は正常である。

背景・ねらい

  ブラジルの大半を占める酸性土壌では元来イオウ(S)が不足していると見られるが、リン酸石灰や硫安の施用により顕在化することが少なかった。近年保証成分含有率の高い肥料への移行によりS欠乏が起こりやすくなっているにもかかわらず、これに着目した解析的試験は少ない。特にブラジル東北セラードの新興畑作地帯ではSの土壌集積も少なく、微量要素も不足気味である。こうした条件下で作期ごとに過不足なくSを施用する技術が求められている。

成果の内容・特徴

  1. ブラジル東北セラードの2種の土壌においてS,マンガン,亜鉛, ホウ素あるいは銅のいずれかを欠く養分液を適宜灌水してダイズを栽培し完全養分液灌水区の生育と比較したところ、着目元素の中で最初の生育阻害要因となるのはいずれの土壌においてもS欠乏である(図11)。
  2. ダイズ葉における可視的なS欠乏症発現限界含有率は葉位によらず1g/kgである(図2)。
  3. 開花期第3葉および収穫期子実中のS含有率は、ほぼ1:1で変動する(y = 0.94x + 0.13, R2= 0.65)。
  4. 開花期第3葉あるいは子実のS含有率が2g/kg以下になると相対粒重が最大値の80%以下となる(図3)。しかし、同含有率近辺ではそれ以上の場合と比べ開花期の作物体乾物重および葉色に差は生じない。
  5. 蛋白組成が標準栽培された子実と同様になるには子実中S含有率として2.3g/kg以上が必要である(図4)。
  6. 以上の結果により、開花期第3葉あるいは子実のS含有率が1g/kg未満の場合は非常に不足、1g/kg~2g/kgの場合は不足、2g/kg~2.3g/kgの場合は低く、 2.3g/kg以上の場合は正常と分類できる。
  7. 良好な収量および子実品質を期するためには開花期第3葉あるいは子実中のS含有率が2.3g/kgを下回る以前に次の作付に向けてS資材の施用を行う。

成果の活用面・留意点

  1. 土壌中でのS集積状況と作物に対する可給性を調査し、S資材とその施用量を併せて検討する必要がある。
  2. 輪作において支障を来さないために、ダイズに必要充分なS施用量がそれ以外の作物にとっても適当であるかを検討する必要がある。

具体的データ

  1. 図1
  2. 図2
  3. 図3
  4. 図4
Affiliation

国際農研 海外情報部

ブラジル農牧研究公社

分類

研究

予算区分
国際研究[南米大豆]
研究課題

南米諸国における大豆の高位生産・利用技術の総合的開発研究 -大豆の持続的生産のための土壌肥管理技術の開発-

研究期間

平成12年度(10~12~13年度)

研究担当者

櫃田 木世子 ( 海外情報部 )

ほか
発表論文等

櫃田木世子, Sfredo, G. J., Lantmann, A. F. (2000) ブラジル東北部の2種のセラード土壌におけるイオウおよび微量要素の可給度. 第1報 ダイズの生育阻害要因としてのイオウ, 日本土壌肥料学会講演要旨集,  46: 151.

日本語PDF

2000_21_A3_ja.pdf798.19 KB

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