研究成果情報 - アジア
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路(2004)
良いめん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f のアジア地域における地理的分布から、日本への伝播経路は、中国からの直接伝播ルート(めんロード)と朝鮮半島経由の2つの伝播ルートが考えられた。
- シトロネラオイルによるコクゾウムシ及びカビの防除(2004)
熱帯のイネ科植物シトロネラグラス(Cymbopogon nardus)の精油に含まれるテルペン類はコクゾウムシ及びカビの発生を抑制し、穀物貯蔵に利用できる。
- 中国には強いアンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性を有する豆豉(トウチー、伝統的大豆発酵食品)がある(2004)
四川省の潼川豆豉(トンツァントウチー)は、糸引納豆の約10倍強いアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性(血圧上昇抑制作用の指標)を有する。
- アグロフォレストリーにおける上木間伐と土壌環境の変化(2004)
無降雨期間中の土壌水分の減少速度は無間伐林より間伐林で緩やかになった。間伐処理は林床 に植栽された作物等の苗木により良い光環境を提供することは良く知られているが、植栽苗を取りまく 土壌水分環境をも好転させる。上木の間伐はアグロフォレストリーシステムでの作物等の導入にプラス に働くことが判明した。
- 目的型踏査線調査法を用いてインドネシア西ジャワ州800m-1800m 標高地帯の作付け体系の多様性を把握(2003)
目的型踏査線調査法を用いて、稲作から温帯野菜への作付け移行と混作・単作の分布を標高毎に表示し、作付けの理由と制約を総合的に把握することができる。インドネシア西ジャワ州において、温帯野菜への移行は1100-1200mに認められ、混作は1100-1600mに集中する。単作栽培技術、および混作における作物間資源競合の緩和と経済効率に基づく栽培技術は農家の選択理由と一致する。
- ガーナの精米業の効率性分析:農家への無利子の融資により籾米を確保する精米業者(2003)
ガーナの大型精米機を所有する多くの精米業者が、籾米集荷のために無利子で農家へ融資を行い、その結果、融資のない場合に比べて精米機の稼働率(Capacity Utilization)が24%上昇することを経済モデルにより明らかにした。これは農家に資金需要がある限り望ましいことであるが、同時に金融市場の不完全性を意味する。市場の効率性確保のために籾米の貯蔵施設等の整備が望まれる。
- 赤かび病抵抗性コムギ品種・蘇麦3号の品種内変異(2003)
赤かび病抵抗性コムギ品種蘇麦3号には、形態的、生態的特性が異なる系統が存在する。全染色体領域にわたるSSR マーカーを用いて品種内の変異を見ると、CIMMYT 配布の3系統には変異は無く、オーストリア系統は13.2%、日本の2系統には19.4%と0.4%のマーカー変異が認められる。
- 中国東北部大豆遺伝資源の特性とその遺伝的多様性(2003)
中国吉林省農業科学院大豆研究所で保存している中国東北部の大豆遺伝資源のうち、調査した計3,012点の主要形質に関するデータベースを構築した。中国東北部大豆遺伝資源は、日本の大豆とDNAレベルでも大きく異なり、また遺伝的多様性に富んでいる。
- 中国太湖地域の農業集水域からの地表水による窒素の流出(2003)
江蘇省宜興市梅林集水域からの地表水移動にともなう窒素流出量は、域内施肥窒素量の8.5 %にあたる20.3 kg ha-1 y-1 であり、主要作物の施肥時期に増大するが、水稲生育の旺盛な7~9月に減少する。野菜畑・畑地では表面流去窒素量および土壌侵食量が大きい。
- 水稲の耐倒伏性関連形質のQTL 解析(2003)
インディカ・ジャポニカ交配後代の半数体倍加(DH)系統の押し倒し抵抗値、地上部形態形質、根系形態形質など耐倒伏性に関係する形質の量的形質遺伝子座(QTL)はそれぞれ複数の染色体上に散在し、押し倒し抵抗値ではQTLは第7,8染色体上に存在する。
- シロアリのアリ塚周辺では牧草の生産力と栄養価、及び放牧牛の採食頻度が高まる(2003)
草地上の有機物が集積・分解されるアリ塚周囲では、土壌は窒素含有率が高く、牧草も高栄養・高生産力を示す。放牧牛はそれらの牧草を多頻度に採食する。このことは一般的にタンパク供給力が低い熱帯草地において、アリ塚の分布が放牧牛の採食行動、特にタンパク質等の栄養摂取に重要な役割を果たすことを示唆する。
- 熱帯のサイレージ醗酵に適した優良乳酸菌(2003)
タイ国で良質サイレージを調製するための乳酸菌を熱帯対応型改良パウチ法を用いて検索し、高温(45 °C)下に速やかに増殖して多量の乳酸を生成する優良乳酸菌株を分離した。分離株は少ない菌接種量でも共存する酵母やコリ型細菌の影響をあまり受けず、接種量を増やすと乳酸量が増大し、共存他種微生物の生菌数を低下させた。
- ベトナムメコンデルタにおける低利用飼料資源を用いた豚の購入飼料代替と肉質の改善効果(2003)
養豚用飼料として米糠、破砕米が多給される地域において、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)、ウォータースピナッチ(Ipomoea aquatica)等の低利用飼料資源を給与することにより、増体、飼料要求率には悪影響を与えず、背脂肪厚、背脂肪ヨウ素価等の肉質も改善され、農家の収入増加に役立つ。
- ベトナム・メコンデルタの養豚農家における豚コレラの診断と損耗対策(2003)
ベトナム・メコンデルタでは子豚の致命的疾病として豚コレラが重要な原因であることが明らかとなった。予納接種を効果的に行うためには、市販ワクチンの一本化と接種時期の適正化、普及ワクチンでは母豚は6カ月毎に種付け前の接種、子豚へは生後1月目の接種が必要である。
- 中国における発酵型ビーフンの物理化学特性(2003)
原料インディカ米を乳酸発酵させると、調製されたビーフンの破断強度が減少し、破断変位が増加する。発酵過程において原料米の澱粉含量に顕著な変化は認められないが、タンパク質・脂質・灰分が減少する。また、発酵によって澱粉の糊化温度が低下し、ラピッドビスコアナライザーによる粘弾特性も変化する。
- 貯蔵食品害虫の天敵、ホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)の捕食生態(2003)
捕食性カメムシの一種であるホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)は、コクヌストモドキ等の貯穀害虫の捕食量が大きく、貯穀害虫の天敵として有望である。
- フタバガキ科Shorea 属6樹種の更新は傾斜のある尾根で優れている(2003)
半島マレイシアのセラヤ(Shorea curitisii)が優占する丘陵フタバガキ林択伐施業地内で、かく乱を一番大きく受ける作業道では、人工植栽したフタバガキ科Shorea 属6樹種の成長は、水平な尾根や斜面中腹に比べ、尾根より少し下の斜面上部で優れている。
- 適度の被陰は熱帯植物の定着を促し、初期保育作業を軽減させる(2003)
適度に被陰された森林内では、皆伐地よりも、フタバガキ科樹種を含む多くの植物の活着率、初期成長量が大きくなり、さらに下刈り作業にともなう疲労が軽減し、作業時間も減少する。
- 熱帯性・亜熱帯性魚類の必須脂肪酸組成の特性(2003)
熱帯性・亜熱帯性海産魚の卵稚仔は、冷水性・温水性魚類と異なる必須脂肪酸組成特性を有し、アラキドン酸が重要であることが示唆された。
- 熱帯性・亜熱帯性魚類の必須脂肪酸組成の特性(2003)
熱帯性・亜熱帯性海産魚の卵稚仔は、冷水性・温水性魚類と異なる必須脂肪酸組成特性を有し、アラキドン酸が重要であることが示唆された。