中国における発酵型ビーフンの物理化学特性
原料インディカ米を乳酸発酵させると、調製されたビーフンの破断強度が減少し、破断変位が増加する。発酵過程において原料米の澱粉含量に顕著な変化は認められないが、タンパク質・脂質・灰分が減少する。また、発酵によって澱粉の糊化温度が低下し、ラピッドビスコアナライザーによる粘弾特性も変化する。
背景・ねらい
中国南部では様々な種類のビーフンが伝統的手法を用いて作られている。中でも、原料米を水に長時間浸漬すると発酵が起こりビーフンの物性が向上することが知られている。中国の発酵型ビーフン以外にも、澱粉性食品を発酵させて物性を改変する手法が世界各地の伝統食品に用いられている。しかし、これら加工方法の実体には不明な点が多く残されている。そこで原料米の発酵過程において原料米の物理化学特性がどのように変化するか明らかにする。
成果の内容・特徴
原料米(中国産インディカ米:中早1号、アミロース含量26.1%)を35°Cで27時間自然発酵させ、これを粉砕して得られる米粉及びビーフンの物理化学特性の変化は以下の通りである。
- 発酵終了時において浸漬水のpHは4に減少し(図1)、生成する主要有機酸は乳酸である。
- 発酵過程で増殖する主要微生物は乳酸菌類であるが、酵母類の増殖も観察される。
- 原料米の発酵により、ビーフンの破断応力は減少し、破断変位は大きく増加する(図2 )。
- 発酵により澱粉(アミロース)含量に顕著な差は認められないが、脂質・タンパク質・灰分が減少する。また、脂質の分解物である遊離脂肪酸含量は発酵中期で増加後、後期において減少する(図3)。遊離脂肪酸分解物が発酵型ビーフンの不快臭の原因物質(アルデヒド・ケトン類)になる可能性があり、その制御が重要である。
- 示差走査熱量測定装置(DSC)による発酵澱粉の糊化温度は低下する(図4)。ラピッドビスコアナライザー(RVA)分析の最高粘度、最低粘度、最終粘度が低くなり、発酵によって原料米の澱粉に特異的な糊化特性が与えられる。
成果の活用面・留意点
東南アジア地域には類似の発酵型ビーフンが伝統的に製造されている。また、小麦・キャッサバ・トウモロコシ等を用いた発酵性食材が世界各地で伝統的に製造されている。これら発酵性澱粉食品においても、本成果と類似の物理化学特性の変化が起こっていると考えられる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 食料利用部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 基盤/豆腐特性改善 国際プロ〔中国食料資源〕
- 研究課題
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成分間相互作用の制御による豆腐・ビーフン等の特性改善澱粉・動植物蛋白質を主成分とする食品素材化技術の開発
- 研究期間
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2003 年度(2001 ~ 2003 年度)
- 研究担当者
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辰巳 英三 ( 食料利用部 )
斎藤 昌義 ( 食料利用部 )
魯 戦会 ( 中国農業大学 )
李 里特 ( 中国農業大学 )
閔 偉紅 ( 中国農業大学 )
- ほか
- 発表論文等
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魯戦会, 李里特, 閔偉紅, 李再貴, 辰巳英三(2002): 自然発酵型ビーフンの粘弾特性,中国食品学報, 2(2), 8-11.
Zhan-Hui Lu, Li-Te Li, Wei Cao, Zai-Gui Li and Tatsumi, E.(2003): Influence of natural fermentation on physicochemical characteristics of rice noodles. International Journal of Food Science and Technology, 38, 505-510.
- 日本語PDF
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