貯蔵食品害虫の天敵、ホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)の捕食生態
捕食性カメムシの一種であるホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)は、コクヌストモドキ等の貯穀害虫の捕食量が大きく、貯穀害虫の天敵として有望である。
背景・ねらい
貯蔵食品害虫の防除には、主にくん蒸剤(臭化メチルとリン化水素)や接触殺虫剤(マラチオン、フェニトロチオン等)が長年使用されてきた。しかし、臭化メチルには地球のオゾン層破壊作用があることが判明し、先進国では2005年には検疫用等一部を除き使用禁止になる。さらに、リン化水素や接触殺虫剤にはそれに抵抗性を持つ貯蔵食品害虫が出現し、害虫防除が困難になりつつある。現在、くん蒸剤に代わる食品の安全性を重視した害虫防除方法の開発が求められており、化学農薬を使用しない天敵を用いる害虫防除技術の開発は重要である。
成果の内容・特徴
- 日本やタイの穀物や飼料など食品が貯蔵されている施設(精米所、貯蔵倉庫など)で天敵を調査した結果、タイから捕食性カメムシであるホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)が発見された。
- ホウネンカメムシ成虫は貯蔵食品害虫の卵や幼虫に対する捕食範囲が広い(表1)。
- ホウネンカメムシの雄、雌成虫について、48時間絶食させたのち、各タッパーに1個体ずつ投入し温度30°C、湿度70%の条件に24時間放置してその捕食数を数えると、餌密度が高いと、コクヌストモドキ終齢幼虫は5-6匹以上、ノシメマダラメイガ2齢幼虫は10匹以上捕食する(図1 、2)。すでにアメリカで天敵として販売されているミナミアシブトハナカメムシXylocoris flavipes は、ほぼ同じ条件で平均2頭/ 日、最高3頭/ 日しか食べていない。この点ではホウネンカメムシは天敵として有望である。
- 温度条件25, 28, 30, 32, 34, 35°Cで、ヒラタコクヌストモドキの卵を餌に用いてホウネンカメムシを飼育した場合、1齢幼虫から成虫羽化までの発育日数は、32°Cで最も発育日数が短く60.2日となる。
成果の活用面・留意点
- 米倉庫、精米所での放飼試験を行い、ホウネンカメムシの有用性を証明する必要がある。
- 他の天敵、特に寄生蜂との併用の効果について検討し、ホウネンカメムシを用いた貯穀害虫制御システムを確立する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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食品総合研究所
タイ農業局
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ〔収穫後損耗防止〕
- 研究課題
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貯穀害虫における生物的防除技術の開発
- 研究期間
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2003 年度(2002 ~ 2004 年度)
- 研究担当者
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宮ノ下 明大 ( 食品総合研究所 )
今村 太郎 ( 食品総合研究所 )
VISARATHANONTH Porntip ( タイ農業局 )
SUKPRAKARN Chuwit ( タイ農業局 )
- ほか
- 発表論文等
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貯穀食品害虫防除用生物農薬およびその防除方法, 特許出願中(特願20048882)
- 日本語PDF
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2003_22_A3_ja.pdf1.88 MB
- English PDF
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2003_22_A4_en.pdf60.47 KB