ヒハツモドキの成分ピペリンによる貯蔵穀物害虫の発育阻害
ヒハツモドキ(Piper retrofractum)など多くのコショウ属植物に含まれるピペリンはコクゾウムシ、ココクゾウムシ及びコクヌストモドキの発育を阻害する。
背景・ねらい
一般に安全であると認知されている植物成分を利用した貯蔵穀物害虫の防除は、従来の合成薬剤を用いる方法の代替技術として有望である。熱帯の途上地域で入手が容易な材料を用いることにより、低コストかつ自然環境に調和した収穫後損耗低減技術を開発し食料利用率を高める。
成果の内容・特徴
- タイの農村地域で伝統的に利用されているコショウ科のヒハツモドキ(Piper retrofractum)(図2)は、コクゾウムシ、ココクゾウムシおよびコクヌストモドキなど現地における主要な貯蔵穀物害虫の生育を強く阻害する。(図1)
- ヒハツモドキの活性成分はヘキサンやクロロホルムなど非極性溶媒により抽出され、抽出液を濃縮することにより大量の結晶として析出する。NMRや質量分析により決定された構造から、活性物質はピペリン(図3中)と同定される。ヒハツモドキ乾物中の含量は8~12%にも達する。ピペリンは、コショウ(Piper nigrum)の辛み成分であり、殺蚊活性などが知られている。精製されたピペリンは50 ppm (0.05 mg/1g)の濃度でコクゾウムシ類の羽化率を概ね半減させる(図3)。
- ピペリンは室温で化学的に安定である。
成果の活用面・留意点
- ヒハツモドキは東南アジアから中国南部にかけて分布し、我が国では沖縄県等で島コショウ(ヒハチまたはビバーチ)として栽培・利用されている。
- 米倉庫・精米所あるいは家庭用米びつなど規模や温度条件にあわせて、適用方法(形態、濃度、時間等)の最適化を行う必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 食料利用部
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カセサート大学食品研究所
コンケン大学農学部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ〔収穫後損耗防止〕
- 研究課題
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天然物による貯穀害虫及び微生物の制御
- 研究期間
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2004年度(2000~2004年度)
- 研究担当者
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中原 和彦 ( 食料利用部 )
Trakoontivakorn Gassinee ( カセサート大学 )
Hanboonsong Yupa ( コンケン大学農学部 )
- ほか
- 発表論文等
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Trakoontivakorn, G., Juntarawimoon, R., Hanboonsong, Y., and Nakahara, K. (2005): Use of botanicals for inhibiting stored rice pests. JIRCAS Working Report.No. 45, 107 - 116.
Development of low-input technology for reducing postharvest losses of staples in Southeast Asia
- 日本語PDF
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2005_seikajouhou_A4_ja_Part13.pdf498.07 KB