シトロネラオイルによるコクゾウムシ及びカビの防除
熱帯のイネ科植物シトロネラグラス(Cymbopogon nardus)の精油に含まれるテルペン類はコクゾウムシ及びカビの発生を抑制し、穀物貯蔵に利用できる。
背景・ねらい
一般に安全であると認知されている植物成分を利用した貯蔵穀物害虫・微生物の防除は、従来の合成薬剤を用いる方法の代替技術として有望である。熱帯の途上地域において入手が容易な材料を直接あるいは簡単な加工を施して用いることにより、低コストかつ環境に調和した収穫後損耗低減技術を開発する。
成果の内容・特徴
- シトロネラグラス(図1)植物体乾燥粉末から揮発する物質および水蒸気蒸留により得られるシトロネラグラスの精油(シトロネラオイル)は、コクゾウムシの発生を強く抑制する(表1)。
- シトロネラオイルは主にテルペン類から構成され(90%以上)、主成分はゲラニオール、シトロネラール、シトラール、酢酸ゲラニル、リナロール、シトロネロール等である(図2)。各成分の含量は産地・品種等により変動するが、ゲラニオール及びシトロネラールの含量は概ね10~30%程度である。
- シトロネラオイルの主要構成成分のうちシトロネラール、ゲラニオール及びシトラールがコクゾウムシに対し強い発生抑制効果を示す(表1)。シトロネラールとゲラニオールのコクゾウムシに対する有効濃度(ED50値)は、各々6.2及び8.9mg/Lair程度である。
- シトロネラオイルは、タイ産米から検出される9種のかびの生育を阻害する(表2)。
- シトロネラオイルの主要構成成分のうちシトロネラール及びリナロールが強い抗かび作用を示す。各供試菌株に対する両物質の最小完全作用濃度(MID)は、14-56mg/Lairである(表2)。
- シトロネラールは米粒(籾)に吸着するが、脱穀・精米により簡単に除去することができる(図3)。
成果の活用面・留意点
- シトロネラール、リナロール及びゲラニオールについては既に食品等の製造に使用されており、FAO/WHOにより通常の用量範囲内でのヒトに対する安全性が保証されている。
- 米倉庫・精米所あるいは家庭用米びつなど規模や温度条件にあわせて、適用方法(形態、濃度、時間等)の最適化を行う必要がある。
- 天敵昆虫と共用する場合、天敵に対する影響について留意する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 食料利用部
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カセサート大学食品研究所
コンケン大学農学部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ〔収穫後損耗防止〕
- 研究課題
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天然物による貯穀害虫及び微生物の制御
- 研究期間
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2004年度(2000~2004年度)
- 研究担当者
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中原 和彦 ( 食料利用部 )
ALZOREKY Najeeb S. ( サナア大学 )
Trakoontivakorn Gassinee ( カセサート大学 )
Hanboonsong Yupa ( コンケン大学農学部 )
- ほか
- 発表論文等
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Nakahara, K., Alzoreky, N. S., Yoshihashi, T., Nguyen, T. T. H., and Trakoontivakorn, G.(2003): Chemical Composition and Antifungal Activity of Essential Oil from Cymbopogon nardus(Citronella Grass). JARQ, 37 (4), 249 - 252.
中原和彦, Alzoreky. N. S., 吉橋忠、Nguyen, T. T. H., Trakoontivakorn, G. (2002): シトロネラ揮発成分のコクゾウムシ及びカビの生育に対する抑制効果. 日本農芸化学会2003年度大会(藤沢)3E03p22
- 日本語PDF
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2004_14_A3_ja.pdf726.78 KB