マレーアオスジカミキリ(Xystrocera festiva)の生態と防除

要約

アカシア等マメ科ミモザ亜科樹木害虫、マレーアオスジカミキリの拡散は緩やかで一世代には半年~8カ月を要し、幼虫は樹幹の傷口から侵入しやすいこと等、生態的特性を明らかにした。これらの特性を配慮した造林計画、保育方法によって害虫の密度を下げる簡便な被害軽減法を示唆した。

背景・ねらい

拡大する熱帯林荒廃・劣化林地を再造林する動きは近年急速に高まっている。東南アジアではアカシア、ユーカリ等の外来早生樹が造林の中心的対象樹種で、一斉造林によって従来限定的であった害虫が大発生する可能性は高い。インドネシアではAcacia mangium Albizia falcataria 等マメ科ミモザ亜科樹木の造林は活発で、当亜科の害虫、マレーアオスジカミキリ(Xystrocera festiva)の大発生の兆候がすでに現れている。そのため当害虫の生態的挙動を明らかにし、経済的に廉価で簡便な防除技術を開発することを研究のねらいとした。

成果の内容・特徴

  1. カミキリは農村に植えられたマメ科ミモザ亜科樹木に普通に生息しており近くに造林地ができると侵入するが、侵入後の拡散は緩やかで、未成林草原などで数百メートル隔てられた林分間は容易には移動できない。対応樹種の造林を行う場合には村落等既存の生息地から隔離するよう配慮する(図1)。
  2. 林齢の異なる林分がモザイク状に配置され、被害が慢性的に発生しているアルビジア造林地では植栽2~3年目に侵入し、3~4年の増加期を経て7~10年の収穫伐まで個体群は安定している(図2)。
  3. カミキリは1世代に半年~8カ月を要すため、従来の除間伐のシステムを改め、若齢林分では3カ月毎に被害木を除去すれば増加を抑制できる(図3)。
  4. 地域によって農民が薪目的に若齢林の下枝刈を行い、切り跡がカミキリ個体群の増加期の産卵場所になっている。少なくとも植栽後4年間は下枝刈を禁止することが被害を抑制することにつながる。

成果の活用面・留意点

成果はすでにインドネシア林業省に受け渡した。また、近隣諸国での発生の可能性や実態についても、自然環境の違いなどを配慮しながら検討、解析することが望まれる。

具体的データ

  1. 図1
  2. 図2
  3. 図3
Affiliation

国際農研 林業部

分類

行政

予算区分
経常
研究課題

インドネシアにおける造林地害虫の生態と防除に関する研究

研究期間

1991~1994年度

研究担当者

松本 和馬 ( 林業部 )

IRIANTO Ragil S. B. ( Forest and Nature Conservation Research and Development Centre )

ISMAIL Burhan

ほか
発表論文等

K. Matsumoto (1992) Population density of albizia stem borer, Xystrocera festiva (Coleoptera: Cerambycidae), on various host plants in forestry and non-forestry areas. Proceedings Seminar dan Temulapang Pengembangan HTI Wilayah Sumatera. Palembang. 29-31 Oktober 1992: 79-96.

K. Matsumoto, Ragil S. B. Irianto and Burhan Ismail (1994) Host Plant and distribution of the albizzia borer, Xystrocera festiva THOMSON, in the Benakat Trial Plantation Forest of BTR Palembang. Buletin Pengembangan Teknologi Reboisasi 3.

日本語PDF

1994_13_A3_ja.pdf1.45 MB

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