東北タイ砂質土壌での硬盤層破壊による土壌保全と作物根域拡大
東北タイの砂質土壌畑作地帯における主要作物のサトウキビの圃場では、大型トラクタによる頻繁な耕起によって一般に硬盤層が形成される。この硬盤層の一部をサブソイル耕で破壊すると、雨期中の透水性が向上するため土壌流亡が軽減され、土壌深部への根系の発達が促される。
背景・ねらい
東北タイの砂質土壌地帯では、サトウキビ生産の拡大に伴って大型農業機械の導入が進み、頻繁な機械耕起により硬盤層が形成され、作物の浅根化のため不規則な降雨の影響の増大や土壌流亡の激化等が問題化している。本研究では、各種の耕起法間で土壌流亡や作物の生育収量等を比較することにより、東北タイに好適な耕起体系の提示を行うことを目的とする。
成果の内容・特徴
- 東北タイの砂質土壌地帯では、サトウキビの株出し栽培回数が1 回程度と少なく、株出し栽培終了年の約6ヶ月の無作付け期間には、残さ処理、雑草防除、土壌水分保持および植え付け準備を目的に4 ~5 回、極端な場合には9 回もの耕起が行われる(表1)。
- 大型トラクタによる耕起が行われる圃場の20-40cm 深の層には、仮比重が1.7 を上回る緻密な硬盤層が存在する(図1)。
- 硬盤層破壊を目的としたサブソイル耕によって透水性が改善される。各耕起処理共通にハロー耕により均平化を行ったにもかかわらず、雨期終了時にはモールドボード耕およびディスクプラウ耕で土壌の表面流去による凹凸が著しく、一方、サブソイル耕では軽微である(表2)。
- サブソイル耕によって小雨年の雨期作トウモロコシは増収する(表3)。サトウキビでは発芽や根系の下層への発達が促進され(図2)、茎収量についてもディスクプラウ耕(慣行)に比べ増収する傾向にある(表4)。
成果の活用面・留意点
東北タイ畑作で進行しているサトウキビの機械化栽培における硬盤層形成の問題の解決方向として参考となる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ〔東北タイ〕
- 研究課題
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東北タイにおける耕畜結合高度化のための畑作付体系の策定
- 研究期間
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2001 年度(1999 ~ 2001 年度)
- 研究担当者
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松尾 和之 ( 生産環境部 )
WONGWIWATCHAI Chairoj ( タイ農業局コンケン畑作物研究センター )
屋代 幹雄 ( 農研機構 東北農業研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Matsuo, K., Chairoj W. and Yashiro M.: Alternative tillage system for soil conservation and enhancement of upland crop growth. 17th World Congress of Soil Science.(発表予定)
- 日本語PDF
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2001_05_A3_ja.pdf836.43 KB
- English PDF
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2001_05_A4_en.pdf119.95 KB