インドネシアにおける大豆発酵調味液ケチャップ製造用麹菌の改良

要約

インドネシア醤油様大豆発酵調味液ケチャップの麹製造用に、Aspergillusの有用株から紫外線照射により白色変異株を作成した。同国常在のアフラトキシン生産菌との識別が容易なため、スターター(種菌)として使用できる。

背景・ねらい

  大豆からつくられる伝統食品の一つのケチャップは、インドネシアの醤油様の調味液である。その製造は、まず、煮熟した大豆に糸状菌を生育させ、大豆麹を調製することから始まる。その際多くの工場では、種菌を接種せず、放置した煮豆に自然に生育してくるAspergillus 属等の糸状菌により大豆麹を製造する。しかしながら、インドネシアはまた、肝臓ガンを引き起こす可能性の高いカビ毒アフラトキシンを生産するAspergillus 属糸状菌の常在地でもある。このため、安全性の観点から、ケチャップ麹の製造法を改良することを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. インドネシアの市場で購入、入手したラッカセイ、トウモロコシからは、高頻度でアフラトキシンが検出され、生産菌も分離される。
  2. 採取したインドネシアの大豆麹試料からアフラトキシン生産性菌も分離されたことから、安全性の観点から大豆麹製造法を改良する必要性がある(表1)。
  3. Aspergillus oryzae-flavus 群のケチャップ用の優良菌株を選択し、紫外線照射により白色変異株を作成した。
  4. これらの変異株は、製麹中に表面に出現した白色の胞子により、アフラトキシン生産菌とは外観から容易に識別され(図1)、また、変異株で調製したケチャップ諸味は、水溶性窒素、フォルモール窒素とも親株とほとんど変わらないことから、使用を推奨できる。

成果の活用面・留意点

  インドネシアのようなアフラトキシン生産菌の常在地での白色変異株使用の有用性、必要性が認められ、今後、安全性の高い白色変異株の利用が期待される。

具体的データ

  1.  

    表1 インドネシアの農産物および麹から分離したAspergillus属菌株のアフラトキシン生産性
  2.  

    図1 白色変異株等を用いたケチャップ麹の調製
Affiliation

国際農研 生産利用部

食品総合研究所

インドネシア豆類イモ類作物研究所

分類

研究

予算区分
国際研究〔地域農業〕
研究課題

インドネシアにおける地域農産物の品質評価および有効利用

研究期間

平成12年度(10~12年度)

研究担当者

新国 佐幸 ( 生産利用部 )

後藤 哲久 ( 食品総合研究所 )

GINTING Erliana ( インドネシア豆類イモ類作物研究所 )

ANTARLINA Sri S. ( インドネシア豆類イモ類作物研究所 )

UTOMO Joko S. ( インドネシア豆類イモ類作物研究所 )

ほか
発表論文等

Goto, T., Ginting, E., Antarlina, S. S., Utomo, J. S., Ito, Y., and Nikkuni, S. (1999) Aflatoxin contamination of agricultural commodities and fungi isolated from those in Indonesia. Proceedings of the International Symposium of Mycotoxicology, September 1999, Chiba, Japan, pp. 211-215.

Goto, T., Ginting, E., Antarlina, S. S., Utomo, J. S., and Nikkuni, S. (1999) Aflatoxin contamination of agricultural commodities on market and mycotoxin productivity of fungal isolates from Java, Indonesia. Final Program of the 113th AOAC International Annual Meeting, September 1999, Houston, USA, P. 74.

Nikkuni, S., Ginting, E., Antarlina, S. S., and Utomo, J. S. (2000) Improvement of Kecap koji making process using a white-spored mutant of koji mold. RILET-JIRCAS Workshop on Soybean Research, Malang, Indonesia, September 28.

Nikkuni, S., Ginting, E., Antarlina, S. S., and Utomo, J. S. (2000) Isolation of white-spored mutants from the koji molds for the production of Kecap, an Indonesian soy sauce. Proceedings of the 3rd International Soybean Processing and Utilization Conference, October 2000, Tsukuba, Japan, pp. 345-346.

日本語PDF

2000_10_A3_ja.pdf711.87 KB

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